温泉付き戸建て“1円”格安物件登場のワケ
人気温泉地の100坪の土地に立つ一戸建てが、わずか1円で売り出され、話題となっている。今、このような格安物件が次々と登場しているという。いったい何が起きているのだろうか。
◆売り出し中、どんな物件?
玄関をあけるとすぐ視界に飛び込んでくるのは、赤いカーペットがまぶしいダイニングキッチン。そこには大人3人がゆったりと座れるソファが置かれ、そのすぐ横には8畳ほどの落ち着いた空間の和室。さらに、階段を下りると、もうひとつ6畳ほどの和室が。押し入れも十分な広さで、収納もバッチリだ。
そして、この物件の一番の目玉が、温泉が出る大きな浴室まで完備されていること。
海が一望できるオーシャンビューのこの物件。実は今、インターネットで話題となっている。
──不動産会社の間違いだと思ったらガチだった
──安すぎて逆に怪しすぎる
それもそのはず、そのお値段、なんと「0.01万円」。つまり、100円なのだ。
◆100円と思いきや…本当は“1円”!?
そんな、にわかには信じがたい物件があるのは、温泉が魅力の別荘地、静岡県東伊豆町。築44年と少し古さは感じるものの、100坪の土地と延べ床面積約74平方メートル・2DKの一戸建て。セカンドハウスとしても十分なこの家が、なぜ、たったの“100円”なのか。この建物を販売する不動産会社に聞いてみると、さらなる驚きの事実が──
株式会社リライト 田中裕治代表取締役「(Q:100円でよろしいでしょうか?)実は違うんです。1円なんです」
もはや衝撃ともいえる1円。1円で売り出しているという。念のため、もう1度聞き直しても──
株式会社リライト 田中裕治代表取締役「本当に1円です」
間違いなく1円。
事情を聞いてみると、先ほどの不動産サイトで掲載できる最低価格が0.01万円までということで、本当の売値は1円だというのだ。
◆“1円”で売り出したワケ…反応は?
しかし、なぜ、このような破格ともいえる安値で売り出しているのか。この物件の所有者に話を聞きに行った。
小泉亮さん(49)「近くに海もありますし、山の中に囲まれているんで、子どもの頃は思い出深くて」
もともとは父親が別荘として購入したという、この家。周囲は自然に囲まれており、幼い頃は虫取りなどをして楽しんだ記憶が今も残っているという。そんな大事な思い出が詰まったこの家を10年ほど前に相続したが──
小泉亮さん(49)「今、自分の家を持っているのに、もう一つの家を持って維持管理をするのは、やっぱりどうしてもできない。手放したくないのは、それは本音は本音です」
年間20万円近くかかる管理費や税金が負担に。1円で販売したものの、実際に買い手は見つかっていないという。そこには意外な事情が──
株式会社リライト 田中裕治代表取締役「別荘地にあるので、水道・温泉の利用権もろもろ含めると、ざっくり言うと200万円くらいかかってくる」
税金や手数料、さらには温泉使用料など、およそ200万円もの初期費用がかかることが、家が売れない理由の一つになり、空き家の状態が続いている。
◆“空き家問題”解消の切り札は
そんな中、不動産情報サイトを運営する会社では──
LIFULL・地方創生推進部 星久美子さん「国土交通省の全国版空き家バンクモデル事業があって、そちらを通じて一緒に発信させていただいて、(サイトアクセス)数がのびたという状況です」
この会社では、特設サイトを設け空き家の情報を掲載することに。古民家ブームなどを背景にサイトへのアクセスも増えているということで、“空き家問題”解消の切り札として期待されている。