高騰の背景に“消えたコメ21万トン” 農水省が調査へ 備蓄米の販売は…
コメの価格の高騰が止まりません。12月の販売価格は2023年の同じ月と比べて約1.6倍となりました。なぜ高騰が続くのか。農林水産省は、行方のわからないコメが21万トンあるとして、調査に乗り出しました。
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ほっかほっかのご飯に、たっぷりの具材をのせ完成したのは、彩り豊かなおにぎり。明太子と高菜がのったものや卵黄のせなど、40種類ほどを販売するおにぎり専門店では、もちもち食感の山形県産のコメを使っていますが…。
おにぎり戸越屋 木本英二管理部長
「(店頭価格を)値上げをしたばっかり。約1.1倍から1.2倍上げています」
店頭価格を上げたものの、コメなどの原材料の仕入れ値が上がり続けているため、利益はギリギリな状態だといいます。
31日、神奈川・横浜市のスーパーセルシオ和田町店には、コメの値段を見比べるお客さんの姿がありました。
買い物客(80代)
「(2キロ税抜き)1490円。1469円。ちょっと高いね」
この店では、去年の秋は5キロ2000円ほどでしたが、この日は3400円ほどで販売。“令和の米騒動”といわれた去年よりも高い店頭価格となっているのです。
給料日近くだという男性(40代)は、5キロは高すぎて買えないため、「給料日までなので、きついかなって」と、2キロを買って節約。
高すぎるコメの代わりに、主食を変える人も…。
買い物客(50代)
「パンにしたり、うどんにしたり、代用できるところはしています」
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31日、農水省が発表したスーパーなどへのコメの販売価格も、2023年と比べると1.6倍に値上がりしています。新米の流通とともに、高騰が落ち着くとみられていた価格。なぜ、今も高止まりしているのでしょうか?
私たちが訪ねたのは、茨城県のコメ農家。
コメ農家
「主食米を増やしました。足りてないということで」
これまでは生産量の半分近くを飼料用米が占めていましたが、今年は、主食用の米作りに切り替えて、生産を増やすことを決めました。
ほかのコメ農家も、去年までの生産量は大きく変わっていないと話しますが、みなさん、なぜコメの値段が上がり続けるのか「わからない」と口をそろえます。
コメ農家
「誰が(コメを)持っているんだろう…」
コメ農家
「ない…。ない…」
コメ農家
「業者間でやりとりしている間に消えているとしか思えない。農家はもう売った段階で、それ以降の流通は全然みえないので」
実は今、生産したコメが市場に出回らず“行方不明”に。農水省は、生産量は増えているとみていますが、市場に出回っている量をみると約21万トン、茶わん32億杯分ほどのコメが“消えた”というのです。農水省も、これを問題視。
江藤拓農水相
「コメは十分に供給されているのに市場に出てこないということは、どこかに滞っていると考えざるを得ない」
消えたコメは一体どこに…。
市場関係者によると、一部の卸売業者や生産者などが、価格高騰をうけて、より高く売れるタイミングまで、コメを余分にストック。そのため、市場に出回る量が減り、引き続き高値になっているとみられています。
そこで31日に農水省は、政府が保存している備蓄米をJAなどに販売できる制度を整えると発表しました。
流通量が増えることで、コメの市場価格が落ち着く可能性が…。そうなれば高く売れなくなるため、余分にストックしていたコメを手放すのではないか、という狙いがあるといいます。
スーパーは、この“備蓄米の販売”について…。
スーパーセルシオ和田町店 鶴田英明店長
「市場に流れるコメの総量が増えるので、値段を抑えられるかもしれないし。(流通量増えるように)政府の人に頑張ってほしい」
買い物客
「(備蓄米)あるなら出してほしい」
買い物客
「(コメの価格が)下がるなら、そちらの方がうれしいです」
農水省は、この行方のわからないコメについて、集荷業者や卸売業者などの在庫状況を調査するとしています。