【これでいいのか除排雪】②やるほど損する契約に具体性に欠ける基準も…救急搬送など人命にも関わる“教訓”をどう生かす?
特集は県都・青森市の除排雪を検証します。
きょうは議員や専門家の意見も交え「体制やマニュアルの改善」などについて考えます。
★青森市民
「業者によって違うみたいなんだよ そっちの町会の方はこっちは2回(除排雪が)入ったのに対し向こうは4回入ったんだよ」
不満の声があがる除雪のバラツキ。
背景の1つが契約の仕組みです。
黄色幹線 白が生活 そこにスーパー青森市の除排雪の契約は幹線道路と生活道路が別になっています。
ただ、ほぼすべての業者が両方を委託されています。
年末年始のように1メートルを超える雪が降ると幹線道路の除雪に追われ、生活道路は後回しになってしまいます。
幹線道路は作業時間に応じてお金が支払われます。
一方で生活道路は定額の「シーズン契約」です。
5メートルを上回ったら増額、下回ったら減額です。
つまり作業の回数や時間、質は金額に関係ありません。
業者は…。
★スタンドアップ 中川和彦 社長
「工区(生活道路)だけ切り取って言えば金額が決まっている訳ですから、出る回数少ない方が出費少ない方が粗利は残りますけど」
★西田組 柳谷知範さん
「工区(生活道路)も単価契約 出来高払いであれば一番業者としてはうれしい」
「(今シーズンの作業は)回数でいえば3倍も4倍も違いますので」
出動すればするほど経営が苦しくなるシーズン契約を疑問視する議員もいます。
★自民クラブ 中田靖人市議
「今冬みたいに降って業者の皆さん前半戦で予算を使い果たしているけれど、それでもシーズン契約である以上出ないと行けない」
「仮に業者が撤退して青森市の除排雪事業がまひしてしまったとき、いちばんの被害者はわれわれ青森市民」
「シーズン契約という画一的な単一のルールではなく、もう少し柔軟性のある 固定費については行政が保証していく最低保証するプラス出動に応じて支払っていくという形にした方が良い」
一方、本来優先される幹線道路も年始めは除排雪が追いつきませんでした。
★青森市民
「消防車とか救急車とか、もし何かあった時(本来4車線が)2車線になってしまっているのでたいへんだ」
病院や学校の近くなど命に関わる幹線道路は、優先的な除排雪が求められます。
専門家は次のように指摘します。
★青森公立大学経営経済学部 野坂真 准教授
「現実問題として除排雪が追いつかないような路線が多かった」
「命を守るという点では優先順位が本来高くなる 防災や救命救急の観点でそうだと思う」
「費用対効果も考えなくてはいけないが、ロードヒーティングを入れている道路もある 本当に人命に直結するようなエリアは道路の設備を高度化していくことも必要」
一方、除排雪のバラツキの原因は基準の曖昧さにもあります。
★青森市民
「入っているんだけれど(道路の雪を)下から取ってもらいたい 車が壊れてしまうものね」
市の除排雪計画では生活道路の場合道幅に合わせて「普通車がすれ違える」、「緊急車両が通行できる」とする基準を定めていますが、具体性に欠けています。
★菅原厚キャスター
「業者にとって除排雪完了の基準やマニュアルはあるのでしょうか?」
★青森市 雪対策室 成田清室長
「その時々の降り方で変えているので」
「降雪や積雪の状況によって作業の内容は変わってくるので必ず毎回このようにという明確な基準はない」
業者向けのマニュアルにも具体的な作業の水準は定められていません。
市のパトロールの強化も含め、市民が満足できるようマニュアルの改善が求められます。
出動の仕組みの見直しを求める議員もいます。
★市民クラブ 竹山美虎市議
「今回はものすごい雪が降るというのが予想されたにも関わらず指令が少し遅れたよねと初動が それがあとあとまで尾を引いた」
「10センチ降ったら業者の判断で出る 市からも指令が出るやり方も以前はあったので、そういうことも1つの考え方にある」
専門家は不足しているダンプカーの応援などほかの地域と連携した体制づくりの重要性も指摘しています。
★青森公立大学経営経済学部 野坂真准教授
「除排雪を隣県を含めて各所に支援を求めてうまく受け入れいく体制を事前に作っておくことが大事」
「検証していくことがまずは大事」
契約や出動体制マニュアルの見直しを求める声に対し西市長は…
★西秀記市長
「この教訓をしっかりと次に活かしていきたいと思いますので、まずは今回の冬をしっかりと振り返って課題がどこにあったのか、そしてその課題に対しての対応策はどういうことができるのかということを全部洗い出しをして、できることを次々とやっていきたい」
西市長は来年度上期で対策をまとめるとしていますが、今回の取材で様々な提言がありました。
契約の見直しやマニュアルの改善、さらに視聴者の方からも速やかに除雪ボランティアの受け付けもしてほしいといった意見も頂きました。
こうした声をしっかりと計画に反映し、年末年始のような事態を繰り返さないようにして欲しいと思います。