【解説】日銀、次の一手は 植田総裁会見を読み解く
22日に行われた日本銀行の植田総裁の記者会見について、経済部の宮島香澄解説委員とお伝えします。
ーー植田総裁のもとでの金融政策決定会合も4回目。7月に政策を修正したあとの今回ですが、どんな内容でしたか?
■次の一手には慎重な発言
今回は金融政策は多分変えないだろうと、ほぼみんなが思っていました。その中で、植田総裁が何を言うかが注目されていました。金融緩和は変えないけれど、少し引き締める方向で発言するのではないかという予測もありました。今終わったばかりの会見では、かなり慎重だなという印象を持ちました。今の段階で次の一手を読ませないという印象です。
■植田総裁会見のポイント
ーーきょうのポイントはどうでしょうか。
まず、金融政策は大規模な金融緩和策を完全に維持しました。この後どうするかに質問が集中したんですが、政策変更の時期は見通せないと。どんな政策対応をするか、その内容や時期に関して、今言えないと言っていました。決め打ちがそもそもできないんだと。それで、前回から考え方に変化はありますかという質問もあったんですけれども、それは変化はないと話しました。
海外との関係ですけれども、アメリカや中国、ヨーロッパの経済状況ついて、アメリカは底堅いという指標が出てきています。総裁も意外と強いという印象を持っているようで、「ソフトランディングの期待が高まっている」「金利は高いまま維持しそうだ」と。ただ、中国やヨーロッパは少し弱めだということで、トータルで今回は世界経済情勢は、あまり強い影響を及ぼしていないと話しました。
ーーこの後どうするか、マイナス金利をどうするかに注目が集まったんですけれども、全体の目標を達成するまでは、マイナス金利で行くと、言いました。
一部の新聞の報道で市場が動いたことがあったんですが、市場が違う受け止めになったと思っているのか、自分の意図と違う、ですね、ちょっとしゃべりすぎだなと思ってるのかもしれないなと思いました。そのくらいに今回の会見は慎重な感じでした。
総裁が発言をすることで、この先の政策に何か予断を与えてはいけないと、予測をさせないようおっしゃってるかなと思いました。
■注目された「マイナス金利解除」
ーーこのマイナス金利についての発言が注目されていましたよね、今回。
こちら読売新聞の今月9日付のインタビューで、マイナス金利を年内にも解除する可能性に触れたんです。植田総裁はインタビューの中で賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策の解除を含め、いろいろなオプションがあると言ったんです。年内にも判断できる材料がそろうかもしれないという発言もあったので、市場がですね、もしかしたら年内にも動く可能性があるんじゃないかと円相場が反応しました。でも今日の会見を聞きますと、そうでもなかったのかなと思います。7月の総裁会見の時も、目標達成の自信・確度が上がった場合には、政策の修正にいけるかなと、実際にデータを見て、自信ができたら変える可能性はあると言っていましたので、読売新聞のインタビューでも同じスタンスを言ったかと思います。
マイナス金利の解除が近いかと市場が動いたことに関して、今日の記者会見は中立的な発言が目立ったと思います。
■マイナス金利解除が注目される背景
ーーこのタイミングでマイナス金利解除がテーマになる背景は何でしょうか。
まず、マイナス金利は異例の政策なんです。本来であれば、やるべき政策ではないと。植田総裁もできることなら解除したい、早くやめたいという気持ちがあると思います。
そんな中、最近どうして話題になったかです。一つは想定外に円安ドル高が進んでいることです。為替、今1ドル=148円台で、日銀の予想を超えていると思います。前回金融政策を修正したがなかなか変わらなかった。それは、投資家が今やっている取引が、短期金利に注目したものなんです。この前の政策修正では止まらず、輸入物価も下がらないし、国民生活に影響があります。
2つめは、アメリカ経済が予想を上回る強さであること。植田総裁もきょうそう話しました。植田総裁は、7月頃まではアメリカの経済に関してちょっと厳しく見ていたという印象がありますが、このところ、アメリカが将来利下げをする観測も後退しました。アメリカ経済が強いと、日本の景気に良い部分もありますが、円安が進みやすくなります。輸入物価の上昇という国民にとってありがたくない状況が目立っている。
それからもう一つ、マクロ的な需給ギャップがプラスになってきた。内閣府が発表した今年4月から6月がプラス0.4%となりました。プラスになるのなら、マイナス金利は続ける意味が薄れてるのではないかという見方が強まってきた。
こうした中で、この前の発言があったので、いよいよマイナス金利の解除に近づくのかなと想定も出たのですが、植田さんは、データ、景気や物価の状況をしっかりみて政策を決めていくということです。
■マイナス金利が解除されると
ーー早ければ年内に解除という見方も一部ありますけれども、解除されたらどうなるんでしょうか。
私たちの生活にも影響があります。
まず住宅ローンです。長期の固定の住宅ローンはこの前の政策修正の後、金融機関に関しては金利を上げてきています。ただ、ほとんどの方は住宅ローンを変動金利で借りています。マイナス金利が解除すると、短期の金利も上がってくるので、住宅ローンを変動金利で借りている人たちに影響します。
それから企業は、新型コロナのゼロゼロ融資の利払いや返済が始まっています。たとえわずかに金利が上がっただけでも、それで企業が厳しくなるという可能性があります。
一方で銀行の収益は改善しそうです。預金金利はおそらくそんなに引き上げず、貸出金利が上がりますので、銀行の収益が上がる、これは金融機関にとって良いことになると思います。
マイナス金利を解除するといろんな人が影響を受ける可能性があるので、年内か?来年か?という話をしていますが、今日の会見で植田総裁は言質は与えませんでした。
為替は、植田さんの会見が始まる時には1ドル=148円10銭くらいでしたが、会見の途中に148円40銭ぐらいまで行って、その後少し円高に振れています。
為替の状態は政府も非常に気にしていますので、今後も日銀の政策に影響を与えると思います。
ーー次の会合は10月になりますが、そこに向けてはどうなりそうでしょうか
10月は展望リポートがありますので、いわゆる出口戦略をどのように考えているかが出る可能性があります。秋はやはり政治も動きがあるかもしれませんので、それもみながら、大規模な金融緩和策をこれからどうしていくのか、10月の会合に注目したいと思います。
ここまで、宮島解説委員とお伝えしました。
ーー植田総裁のもとでの金融政策決定会合も4回目。7月に政策を修正したあとの今回ですが、どんな内容でしたか?
■次の一手には慎重な発言
今回は金融政策は多分変えないだろうと、ほぼみんなが思っていました。その中で、植田総裁が何を言うかが注目されていました。金融緩和は変えないけれど、少し引き締める方向で発言するのではないかという予測もありました。今終わったばかりの会見では、かなり慎重だなという印象を持ちました。今の段階で次の一手を読ませないという印象です。
■植田総裁会見のポイント
ーーきょうのポイントはどうでしょうか。
まず、金融政策は大規模な金融緩和策を完全に維持しました。この後どうするかに質問が集中したんですが、政策変更の時期は見通せないと。どんな政策対応をするか、その内容や時期に関して、今言えないと言っていました。決め打ちがそもそもできないんだと。それで、前回から考え方に変化はありますかという質問もあったんですけれども、それは変化はないと話しました。
海外との関係ですけれども、アメリカや中国、ヨーロッパの経済状況ついて、アメリカは底堅いという指標が出てきています。総裁も意外と強いという印象を持っているようで、「ソフトランディングの期待が高まっている」「金利は高いまま維持しそうだ」と。ただ、中国やヨーロッパは少し弱めだということで、トータルで今回は世界経済情勢は、あまり強い影響を及ぼしていないと話しました。
ーーこの後どうするか、マイナス金利をどうするかに注目が集まったんですけれども、全体の目標を達成するまでは、マイナス金利で行くと、言いました。
一部の新聞の報道で市場が動いたことがあったんですが、市場が違う受け止めになったと思っているのか、自分の意図と違う、ですね、ちょっとしゃべりすぎだなと思ってるのかもしれないなと思いました。そのくらいに今回の会見は慎重な感じでした。
総裁が発言をすることで、この先の政策に何か予断を与えてはいけないと、予測をさせないようおっしゃってるかなと思いました。
■注目された「マイナス金利解除」
ーーこのマイナス金利についての発言が注目されていましたよね、今回。
こちら読売新聞の今月9日付のインタビューで、マイナス金利を年内にも解除する可能性に触れたんです。植田総裁はインタビューの中で賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策の解除を含め、いろいろなオプションがあると言ったんです。年内にも判断できる材料がそろうかもしれないという発言もあったので、市場がですね、もしかしたら年内にも動く可能性があるんじゃないかと円相場が反応しました。でも今日の会見を聞きますと、そうでもなかったのかなと思います。7月の総裁会見の時も、目標達成の自信・確度が上がった場合には、政策の修正にいけるかなと、実際にデータを見て、自信ができたら変える可能性はあると言っていましたので、読売新聞のインタビューでも同じスタンスを言ったかと思います。
マイナス金利の解除が近いかと市場が動いたことに関して、今日の記者会見は中立的な発言が目立ったと思います。
■マイナス金利解除が注目される背景
ーーこのタイミングでマイナス金利解除がテーマになる背景は何でしょうか。
まず、マイナス金利は異例の政策なんです。本来であれば、やるべき政策ではないと。植田総裁もできることなら解除したい、早くやめたいという気持ちがあると思います。
そんな中、最近どうして話題になったかです。一つは想定外に円安ドル高が進んでいることです。為替、今1ドル=148円台で、日銀の予想を超えていると思います。前回金融政策を修正したがなかなか変わらなかった。それは、投資家が今やっている取引が、短期金利に注目したものなんです。この前の政策修正では止まらず、輸入物価も下がらないし、国民生活に影響があります。
2つめは、アメリカ経済が予想を上回る強さであること。植田総裁もきょうそう話しました。植田総裁は、7月頃まではアメリカの経済に関してちょっと厳しく見ていたという印象がありますが、このところ、アメリカが将来利下げをする観測も後退しました。アメリカ経済が強いと、日本の景気に良い部分もありますが、円安が進みやすくなります。輸入物価の上昇という国民にとってありがたくない状況が目立っている。
それからもう一つ、マクロ的な需給ギャップがプラスになってきた。内閣府が発表した今年4月から6月がプラス0.4%となりました。プラスになるのなら、マイナス金利は続ける意味が薄れてるのではないかという見方が強まってきた。
こうした中で、この前の発言があったので、いよいよマイナス金利の解除に近づくのかなと想定も出たのですが、植田さんは、データ、景気や物価の状況をしっかりみて政策を決めていくということです。
■マイナス金利が解除されると
ーー早ければ年内に解除という見方も一部ありますけれども、解除されたらどうなるんでしょうか。
私たちの生活にも影響があります。
まず住宅ローンです。長期の固定の住宅ローンはこの前の政策修正の後、金融機関に関しては金利を上げてきています。ただ、ほとんどの方は住宅ローンを変動金利で借りています。マイナス金利が解除すると、短期の金利も上がってくるので、住宅ローンを変動金利で借りている人たちに影響します。
それから企業は、新型コロナのゼロゼロ融資の利払いや返済が始まっています。たとえわずかに金利が上がっただけでも、それで企業が厳しくなるという可能性があります。
一方で銀行の収益は改善しそうです。預金金利はおそらくそんなに引き上げず、貸出金利が上がりますので、銀行の収益が上がる、これは金融機関にとって良いことになると思います。
マイナス金利を解除するといろんな人が影響を受ける可能性があるので、年内か?来年か?という話をしていますが、今日の会見で植田総裁は言質は与えませんでした。
為替は、植田さんの会見が始まる時には1ドル=148円10銭くらいでしたが、会見の途中に148円40銭ぐらいまで行って、その後少し円高に振れています。
為替の状態は政府も非常に気にしていますので、今後も日銀の政策に影響を与えると思います。
ーー次の会合は10月になりますが、そこに向けてはどうなりそうでしょうか
10月は展望リポートがありますので、いわゆる出口戦略をどのように考えているかが出る可能性があります。秋はやはり政治も動きがあるかもしれませんので、それもみながら、大規模な金融緩和策をこれからどうしていくのか、10月の会合に注目したいと思います。
ここまで、宮島解説委員とお伝えしました。