後継者不足…倒産する企業が過去最多に迫る 「事業承継」の難しさを取材
後継者がいなくて倒産するケースが、全国で相次いでいます。後継者探しに奮闘する中華料理店と、片や、家業の畳店を継ぐことを決めた若者を取材すると「事業を引き継いでいく難しさ」が見えてきました。
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「飲み物こぼすと めちゃくちゃ焦る 畳で居眠り 顔に痕つく 手裏剣投げられ 畳で防ぐ 畳でゴロゴロ和の心 えい!」
祭り会場を盛り上げるラップ。観客も歌に合わせて、手を振り、手拍子します。このラップのテーマは…
「タータタッタ!『タタミ』!! タータタッタ!『タタミ』!! わっしょい! わっしょい! お祭り騒ぎ」
「畳(たたみ)」です。歌うのは徳田直弘さん(33)。地元の福岡県朝倉市で、畳店で働きながら“畳屋ラッパー”として活動しています。実家は創業119年の老舗畳店「徳田畳襖店」。ですが、徳田さんは一時は家業を継がず、高校卒業後は半導体関連メーカーに就職し、その後、ミュージシャンの道へ。
“畳屋ラッパー”徳田直弘さん(33)
「畳業界が衰退していっているので、この業界は仕事をしていく上で、商売ができないんじゃないかなと。それもあって継ぎたくなかった」
「畳業界でも、い草業界でも、やっぱり後継者がいないので、閉じちゃう方が多いです」
そんな中、家業を継ぐ決意をした徳田さん。きっかけは…
家業の畳店を継ぐ徳田直弘さん(33)
「畳の歌を作ってみて、それをライブで披露したときに、いままでは経験したことないぐらいの歓声と、お客様の笑顔とか見て。家業畳屋だし、畳業界・世の中のためになるような人になろうと思って、家業に入っていった」
家業を継いだものの、地元を離れる同世代も多く、商売を続ける上で、客数の減少や従業員不足などの課題もあるといいます。
そこで徳田さんは、ラップ以外にも畳を使ったアート作品で個展も開催するなど、家業の「畳」を積極的にアピール。新たな試みで、畳の良さを広げようとしています。そんな姿を隣で見続ける現社長の父・幸生さんは。
畳店の社長 父・徳田幸生さん
「やっぱり(事業が)活性化しているところがありますね。その分、仕事が増えてきてありがたいと思っています」
いま全国的に問題となっているのが「後継者不足」です。帝国データバンクによると、「後継者難」による倒産は、今年1~10月までの時点で455件と、過去最多に迫る勢いです。(去年同時期は過去最多の463件)
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群馬県前橋市で中華料理店「チャイニーズダイニング天壇」を営む、長谷川弘之さん(73)。看板メニューの「海鮮おこげ」など、150種類以上のラインナップが売りで、25年以上“地域の味”として地元に愛されてきました。
常連客
「10年以上(通っている)」
「もっとだよね?」
常連客
「中華を食べるときに、この店がいいねって。地域にとって慣れ親しんだ味の中華のお店」
長谷川さんは、約2年前から後継者探しを始めたといいます。
店の後継者を探す 長谷川弘之さん(73)
「身内の人とか、いろいろ相談したけど『後継ぎ、俺がやってみる』という人は誰もいなかった」
そこで現在、取り組んでいるというのが、企業や店が実名を公表して後継者を探す「オープンネーム」と呼ばれる方法です。
長谷川さんが参加したのは、日本政策金融公庫が主催する、事業承継の「マッチング行事」です。
店の後継者を探す 長谷川弘之さん(73)
「(求めるのは)地域密着に対しての情熱があるかどうか」
日本政策金融公庫によると、企業が行う後継者探しは、従業員や取引先への影響を防ぐため、一般的には経営者が水面下で行うケースが多いといいますが、逆に、企業名を公表した場合、多くの情報が提供でき、円滑に事業承継を進められる利点があるといいます。
イベントをきっかけに、長谷川さんのもとには関心のある人から問い合わせも。
店の後継者を探す 長谷川弘之さん(73)
「お客様や常連さんがいますから、中華をこのままやっていってもらえれば、ありがたいかなと」
(11月19日放送『news zero』より)