官僚のなり手激減、危機的な公務人材どうする?【きっかけ解説】
ニュースのその先を考える記者解説。27日のテーマは「官僚のなり手激減、危機的な公務人材どうする?」です。経済部宮島解説委員の解説です。【きっかけ解説】
国などの公務を担う「公務員」を志望する若者が減っています。そんな中、「公務の危機は国民の危機」とする公務員改革の提言が出されました。
ーー日本で「エリート」と言われてきたキャリア官僚になりたい人が減っているんですか?
やりがいや、働き方、給与などの問題がありそうです。
国家公務員の採用試験の申し込みは10年前からおよそ3割減っています。
またキャリア官僚をみると入って10年未満での退職がさらに増えていて10年前の3倍になっています。人材が確保できないと国の屋台骨が崩れてしまうという危機感があります。
ーー退職も増えているのはどうしてですか?
夜の霞が関、官庁や国会周辺で深夜まで働く官僚は少なくないんです。「ブラック霞が関」とも言われます。
これまでキャリア官僚は「自分が日本を支えている」くらいの気持ちで厳しい労働をしてきたと思いますが、今、若い官僚はやりがいを感じにくくなったという声があります。また、年功序列で下積みもある仕事の仕方や人事制度が、今の若者の「すぐに成長したい」という感覚と合わず、学生には「割に合わない仕事」と思われている、とも聞きました。
ーー国会など相手に合わせる仕事も多いですね。
はい、災害対応や外国とのやりとりなどで長時間労働になったり政治との関係では理不尽なことや不合理な要求もあるということです。大変な仕事のわりに給与が低いとも言われていて、今、大改革しなければというのが今回の提言です。
ーーどう変えようとしているのでしょうか?
今週、人事院の川本総裁に出された提言のポイントはこちらです。
まず環境、ですが今、大手の民間企業では、若手に成長を実感させる育て方が進んでいます。官僚はそれに比べて「見ながら学べ」という組織風土で、育成の意識も薄いというんです。管理職がしっかりマネジメントをし、評価の納得感を高め、働き方の自由度も上げる必要があるとしています。
また、人事や給与です。官僚は若いうちは同期横並びが基本で、給与も、民間に行った大学の友人などと比べて見劣りすると言われます。今、公務員の給与を決めるのに従業員50人以上の民間企業の給与と比べているんですが、この基準を従業員100人以上に引き上げ、政策立案などを担うキャリア官僚についてはさらに高い基準1000人以上にするよう打ち出しています。
ーーつまり、給与を引き上げる、ということですね?
はい、民間との人材の取り合いで以前と比べると採り負けているんです。
また実力本位で抜擢をし、民間などから多様な人材を取り込む組織文化が重要だとしています。
ーー最近は官僚組織への批判もよく目にしますね。
批判に対してはしっかり襟をただす必要があります。提言は新たに公務員の行動規範を作り、「国民第一」で「中立公正」な立場で働くことを求めています。
ーー宮島さんが一番伝えたいことはなんですか?
公務員と一緒に日本の未来を考えようということです。そもそも公務は、国民全体の中で、弱い人を助ける、インフラを整える、外国と向きあう、災害に対応する、など誰かがやらなければいけない仕事ばかりです。そして必要な政策は、人口減少や国際情勢の変化などでより複雑で難しくなっています。政治家や官僚任せにするのではなく、私たちも一緒に考えることが大切だと思います。
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