テレワークどこまで 運転士もリモワ時代?
■「テレワーク促進だけでは感染は収まらない」経団連
「会社へは 来るなと上司 行けと妻」。「リモートで 不要不急になる職場」。恒例のサラリーマン川柳(第一生命・27日に発表)でも、ことしの優秀100句のうち40句ほどがテレワーク、リモートワークにまつわるものとなるほど、テレワークが広がっています。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、政府が経済界に強く求めているのが「テレワーク」です。
経団連が調査したところ、緊急事態宣言の対象となる11都府県で、会社に出勤せずにテレワークしている人は87万人にのぼりました。回答をよせた550社の従業員の65%にあたる人数です。
政府の求める7割削減には届きませんでしたが、経団連の古賀信行審議員会議長は29日、西村経済再生担当大臣との会談後、記者団に対し、「会社員のリモートワークだけを促進したら感染が収まるかというと多分そんなことはない」と述べ、テレワークが目的化することには疑問を呈しました。
“大事なのは、テレワークでできることはテレワークで行い、テレワークで無理な仕事は、これまでに蓄積された知見を生かして感染対策をとりながら行うことだ”との考えです。
「4月の、何が起きているかわからずに、怖いからとにかく巣ごもりしていたという状況と比べて、『今は危機感がないからテレワークが徹底できない』と解釈するのは短絡的だ」と述べました。
■「骨盤サポート」「フラフープ」テレワークの課題
新型コロナウイルスの感染拡大から1年たち、「テレワーク」とのつきあい方も見えてきました。同時に課題も出てきています。
ソフトウエア関連会社の「smartHR」では、従業員に在宅勤務の環境を調えるための手当を支給。何に使ったかを調べたところ、「テレワーク」で業務にあたる人々の頑張りや課題が見えてきました。
『会社と同じモニター』を購入したという人が複数。理由は「会社と同じ環境にしたかった」「ノートパソコンだと画面が狭く作業効率が落ちる」とのこと。
『花瓶と花瓶を置く棚』。こちらは、「webで商談をする時に映えるように」「商談で生活感を出したくない」という工夫のためです。
また、『骨盤サポートチェア』は「腰があまり強くないので、長時間の着席に備えて」。『オフィス椅子』は「こたつで仕事をしていたらエコノミー症候群?になりそうだった。化粧台で仕事をしていたら長時間持たなかった」とのこと。
さらには『バランスボール』や『フラフープ』『エアロバイク』など、運動器具を購入している人も複数見られました。自宅で仕事をすると通勤のために歩くこともなく運動不足になるため、健康維持も課題となります。
そのためこの会社では、休憩時間に加えて1日1時間までは有給で「健康のための時間」にあてることができる制度を導入したということです。「出勤が 運動だったと 気付く腹」「週一の 通勤だけで 息切れる」(第一生命・サラリーマン川柳より)
経団連が19日に公表したことしの春闘の指針『経営労働政策特別委員会報告』でも、テレワーク導入に伴う健康問題が課題としてあげられています。
調査によると、28%の企業が「テレワークの実施で明らかになった課題」として、「メンタルも含む従業員の健康管理」を挙げたと紹介しました。
経団連は、運動不足に伴う体調の不調や孤独感によるメンタル面での不調など、健康に関する新たな課題が生じていると指摘しました。その上で、企業に対してオンラインでの健康相談や公的サービス(産業保険総合支援センターなど)の活用を提案しています。
また、先端的な企業の取り組みとして、生体情報が計測できるウエアラブル端末や食事管理アプリの活用、オンライン交流会の開催などを紹介しています。
■テレワーク、どこまで進化する?
テレワークの導入は、メリットとデメリット、両方ありますが、アフターコロナでも程度の差はあれども多くの企業で残っていく見通しです。
一方で、テレワークできない業務の人も多く存在し、そういった人々の不公平感を、技術の活用や制度の変更で、できる限り減らしていくことも求められていきます。
とうていテレワークでは無理だろうと思われがちな『電車の運転士』でもテレワークをしている人たちがいます。JR東日本では、運転士にオフィスワークを兼務させる取り組みを進めています。こうした兼務は、従業員の意欲を高め能力の発揮につながるとしています。
テレワークの取り組みは「出勤しないで仕事をする」だけでなく、多様な働き方を広げていきそうです。