【解説】「金利」「円安」の今後は…日銀“長期国債買い入れ減額”方針決定
日本銀行は14日、金融政策決定会合で長期国債を買い入れる「額」を減らしていく方針を決めました。今回決まった“日銀の方針”で、今後、どのような影響があるのでしょうか。日本テレビ経済部・日銀担当キャップの渡邊翔記者が、次の3つの疑問点について、詳しく解説します。
●住宅ローン金利への影響は?
●円安への影響は?
●植田総裁は何を語った?
森圭介キャスター
「今回の決定は、住宅ローンにどう影響してくるのでしょうか?」
経済部・日銀担当キャップ 渡邊翔記者
「少し難しいので順を追って説明します。日銀は約11年もの間、大量の国債を買い続けてきました。これは世の中に出回るお金の量を増やすことで経済を活性化させる狙いがあったのですが、同時に住宅ローンの固定型金利を決める基準となる『長期金利』を低く抑える効果もありました。そのため、これまで低金利で住宅ローンを借りることができました」
渡邊記者
「今回、日銀は国債を買い入れる額を今後、減らしていく方針を決めました。具体的な計画は7月の会合で決めるとしていますが、買い入れを減らしていくと、長期金利が少しだけですが上がりやすくなります。長期金利が上がり、連動する住宅ローンの固定型金利も引き上げられていけば、新たにローンを組む人には負担増となる可能性もあるということです」
森キャスター
「2つ目は円安への影響です。円相場を確認すると、現在(14日午後5時ごろ)、1ドル=157円68銭前後で動いています。これはどう見たらいいでしょうか?」
渡邊記者
「日銀の決定前と比べると、約0.5円ほど、やや円安に振れています」。
森キャスター
「買い入れを減らせば円高になるという話でしたが、円安になっているのは、なぜなのでしょうか?」
渡邊記者
「日銀が国債の買い入れを減らして金利が上がりやすくなれば、理論的には円高の方向に向かいやすくなります。なので一部では、日銀の決定前に『円安に歯止めがかかるのでは?』との見方もありました。ただ実際には、やや円安が進んでしまいました。市場関係者に取材すると『日銀が市場の予測ほどは踏み込まなかったので、事実上、結論の先送りだと捉えられた』との声があります」
「一方で、『今回は大方針を示す。次回に具体的な計画を示すと、段階を踏んでいった方が、長い目で見ると、円安のけん制には良いかもしれない』との見方も出ていて、現段階ではまだ何とも評価できないところかなと思います」
森キャスター
「そして3つ目のポイントです。植田総裁は会見で、円安についてどう語ったのでしょうか?」
渡邊記者
「日銀はそもそも『物価の番人』とも呼ばれます。円安が進んだだけでは動けないのですが、植田総裁は会見で『円安は物価の上振れ要因である』と述べたほか、次回7月の会合で国債買い入れの計画を示す予定ですが、これと同時に、金利を上げることも『経済物価情勢次第では当然あり得る』と述べました。これはどちらも理論的には、円高要因になるので、かなり強く為替市場をけん制した印象です」
「ただ一方、決定後に円安が進んだことへの受け止めについて、植田総裁は複数回聞かれましたが、明確な返答を避けました。前回4月の会見では、植田総裁の発言が円安容認と受け止められて、その後、円安が急速に進んだ経緯がありましたので、今回、円安については相当慎重に言葉を選んでいた印象です。まだしばらくは、日銀は為替の動きに悩まされる展開が続きそうです」