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【解説】日銀・政策維持の背景は…政治混乱の影響は? マイナス金利解除はいつ?

2023年12月19日 16:57
【解説】日銀・政策維持の背景は…政治混乱の影響は? マイナス金利解除はいつ?
日銀は金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和政策の維持を決めました。マイナス金利解除はいつになるのでしょうか。政治混乱の影響は?日本銀行の植田総裁の記者会見について、経済部の宮島香澄解説委員とお伝えします。

ーー今年最後の金融政策決定会合は、たった今、植田総裁の記者会見が終わりました。どんな内容でしたか?

今回は市場が、近く、金融政策を正常化するんじゃないかと、大きな政策変更に少し期待が膨らんだ中での金融政策決定会合でした。注目されたのですけれども、結果としては、今までの政策を維持しました。

■総裁会見のポイント

植田総裁の会見のポイントですが、まず大規模な金融緩和策は維持しました。植田総裁は慎重な物言いではあったのですが、現状に悲観的な感じもしませんでした。

また、予想物価上昇率は緩やかに上昇。「第二の力」が出てきたといいます。日銀の人たちは第一の力、第二の力と言うのですが、同じ物価上昇でも、第一の力は、円安や海外の物価の上昇による、外からの力での物価上昇のことを言います。

第二の力は、賃金と物価がお互いにいい循環になって、そして物価が上昇していくその力です。今、第一の力がだんだん弱まってきて、第二の力、いい形での物価上昇が少し始まっているという評価でした。

それで結果的に目標、つまり賃金と物価の上昇での目標実現の確度は高まってはいるのですが、その見極めは難しいと、これで「大丈夫だと見通せる状況ではない」と言いました。

次に、アメリカの影響ですが、アメリカがここにきて金利を下げることを考え始めたとみられますが、アメリカが金利を下げると日本銀行の政策変更が、ちょっとやりにくくなるのではないかという見方があります。

それで、アメリカが金利を下げ始める前に、日銀が政策変更をするという考え方はあるのかという記者の質問に対して、「前に動くという考え方はない」と話しました。植田総裁の考えです。

それから、足元の実質賃金低下、これは物価が上がると賃金が上がっても、実質的な賃金が低下するんですが、足元この賃金がマイナスであっても、金融政策を「正常化する、その障害にはならない」と話しました。

全体的に、もちろんまだ見極めができていないということで、慎重な物言いでしたが、来年1月の日銀の支店長会議などからの「リポートは重要」という話でした。

■決定会合と会見受けた市場の反応

ーー市場の反応というのはどうだったのでしょう。

円ドル相場は、政策維持の発表直後には円安に大きく、1円以上動きました。記者会見の最中は、少し円安になる局面はあったんですが、全体の印象として踏み込んだ発言はなかったので、大きく動く要素はありませんでした。

植田総裁は、比較的慎重な物言いをされる方だなと思ってるのですけれども、粘り強く金融緩和を続けるということをそんなに繰り返したわけでもなく、少し状況に楽観的かなと思いました。

改めて、今回金融政策が変わらなかったのは、賃金と物価の好循環、先ほど第二の力と言ったのですけれども、それがうまく回っていく見極めがまだできないということです。ただ、日銀の内部では一時、政策修正に前のめりな感じもあったんです。

誤算だったのは、予想より早くアメリカのFRBがスタンスを変えてきたことです。

パウエル議長は会見で、金利を下げる議論を始めたと明かし、これを受けて円高・ドル安が大きく進みました。今後、アメリカが金融緩和に舵を切った場合、一緒に日本も動くと想定以上に円高になったりする可能性もあります。日本の「出口戦略」のやり方が難しくなってきます。

また、19日は自民党の事務所などに家宅捜索が入り、政治状況が不安定な時に、市場が政策を理解できなかったり混乱するのはよくないという気持ちもあったのではないかと思います。政府からは副大臣が出ることが多いですが、19日は新藤経済再生大臣が決定会合に出席していました。

ーー最近の円相場を振り返りますと日銀幹部の発言で円高になったこともありましたね。

■植田総裁のチャレンジ発言と円高

今月7日、国会で植田総裁は今後の取り組みについて「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言しました。これが、マイナス金利解除への地ならしか?と市場にうけとめられ、短い時間ですが、1ドル141円台まで急な円高になる事態を招きました。

その前の日にも氷見野副総裁が、金融政策の出口をよい結果につなげることが可能だと講演で話し、市場関係者は金融緩和の「出口」に向かいそうだと受け止めたんです。

ーー市場のその受け止めは合っていましたか?

会見でも質問が出て、それは心構えとして「ここからしっかり取り組みます」という意味だったということでした。私も、発言の直後に植田総裁に近い人に聞いたんですが、一般的な意味での発言だったようで、総裁が市場との対話があまりうまくなかったなと、総裁が少し落ち込んでしまったようだと言っていました。それだけ市場が総裁や副総裁の言動に注目しているということだと思います。

植田総裁は、しっかりとデータに基づいて、慎重に判断すると思います。

ーー前回の日銀会合以降で、何か大きな変化というのがあったのでしょうか?

■11月以降の環境変化

前回の日銀の政策決定会合以降で大きいのは、アメリカの国債金利の急激な低下です。アメリカのFRBは、3回続けて金利の引き上げを見送り、打ち止め感がでました。今後は、日米の金利差が縮まり、アメリカ側の要因で円高ドル安になっていく観測が広がっています。

バイデン政権は、来年の大統領選挙にむけてインフレ対策重視から雇用対策重視、ドル安路線に転じたとみられます。

それから、11月16日にゆうちょ銀行が日本国債への投資拡大を発表しました。日銀はずっと国債を大量に買ってきましたが、このあと大量にゆうちょ銀行が買いそうなので、これは日銀が国債の買い入れを大きく減らせるチャンスかもしれないということです。

日銀ががんばって国債を買う必要は薄れています。

■マイナス金利解除はいつか?

ーーそんな中で、マイナス金利解除は近そうでしょうか?

私達に身近な預金金利などが政策を先取りして動き始めましたね。預金に金利がつき始め、ボーナス金利キャンペーンもありますよね。「利上げは困る」とみられていた地方の金融機関までが、12月の日銀のレビューの場で利上げを要望しました。

ですので、1月にも解除がありうるという声があります。

一方で、1月にマイナス金利解除をして、もし、銀行が変動の住宅ローンの金利を引き上げた場合、実際に借りている人の金利があがるのが来年6月ごろになると見られます。政府の経済対策の定額減税と時期がかぶって効果を減らしてしまうのではないかと。政府の政策との整合性は問われます。

ーー1月でないとすると、いつ頃という予測は立っているんですか?

植田総裁が言っているように賃上げの状況をしっかりみてからということですと、春闘の結果が見える4月、早くても3月、この見方はエコノミストの中で強いです。

ーー政治の行方も気になりますね?

19日、裏金問題をめぐって政治が混乱していて、ここで金融政策修正で金融市場まで混乱するのは避けたいうこともあったと思います。この先、この問題や政局がどうなるか。当初は安倍派の問題ならリフレ派の声が小さくなり、日銀が出口にむかいやすいという見方もありました。でも今は、政権や政治全体を揺るがす事態になっています。

来年は、政権の行方も視野にいれながら、長い大規模金融緩和の出口を探る年になりそうです。

以上、宮島解説委員とお伝えしました。