中国発AI・ディープシーク “低コスト高性能”で世界に衝撃も…「天安門事件」は回答せず
中国企業が開発した生成AIが、世界に衝撃を与えています。開発コストの低さと性能の高さが注目されていますが、例えば天安門事件について質問すると、「話題を変えましょう」と回答を断るということです。
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29日午後、街で聞きました。
──生成AI、使っていますか?
生成AIを利用(30代)
「メールの文章を訂正したり、作成した言葉を、日本語が正しいかどうか直すのに使ってます」
生成AIを利用(20代)
「転職活動で志望動機を書くと思うんですけど、そのときに助けてもらってました」
生成AIが“身近”になる中、いま世界に“衝撃”を与えているのが中国製AI「DeepSeek(ディープシーク)」。
アプリランキングでは、チャットGPTをおさえてディープシークが1位になっていました。(29日午後)
“低コスト”で“高性能”な生成AIとされ、日本だけでなく中国やアメリカでも、ダウンロードランキング首位に。
どんな回答をするのか、『news zero』について聞いてみると…。
ディープシークの回答
「従来の堅いニュース番組とは異なるスタイルで、若い世代にとってニュースを身近なものにする役割を果たしています」
15秒ほどかかりましたが、自然な日本語で回答しました。
一方、民主化を求め集まった学生らを中国政府が武力弾圧し多くの死傷者が出た「天安門事件」について聞くと、「この質問には回答できないので話題を変えてください」と表示され、中国で“タブー視”される質問には回答を拒否しました。
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この「ディープシーク」、どんな特徴があるのか? 専門家は…。
AIに詳しい 東京大学大学院 松尾豊教授
「オープンAI(のチャットGPT)とほぼ同等の非常に高い機能を持ってるということで、かなり驚くべきことだと思います。特に推論の性能が高くて、数学の問題とか、プログラミングとかそういったものは非常に高いレベルにあります」
特に注目されている理由が“開発コストの低さ“です。開発費用は約560万ドル(約8億7000万円)と、アメリカの「オープンAI」の約10分の1にもかかわらず、「チャットGPT」に匹敵する性能があるとされています。(米メディアによる)
また、研究者はわずか約140人。1000人を超える「オープンAI」と比べても、はるかに少ない人数で開発したといいます。
こうした中、「ディープシーク」がアメリカのAI産業の優位性を揺るがしかねないとの見方が広がり、ニューヨーク株式市場では27日、AI関連銘柄が大きく売られました。
中でも、アメリカのAI向け半導体をけん引する「エヌビディア」の時価総額は、一時日本円で約92兆円減少。アメリカ史上最大の下落となったということです。(経済専門チャンネルCNBCによる)
ただ、「ディープシーク」の台頭にも、トランプ大統領は“強気の姿勢”で…。
トランプ大統領
「中国企業『DeepSeek』による生成AIの発表は、競争に勝つためにさらに集中すべきだというアメリカのAI業界への警鐘として受け止めるべきだ。私たちは常にアイデアを持っており、常に先頭に立っている」
こうした中、“疑惑”も浮上。
ブルームバーグ通信は、「ディープシーク」の関係者がアメリカ「オープンAI」から、データを不正に入手した可能性があると報じました。「オープンAI」と提携する「マイクロソフト」が、調査に着手したということです。
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専門家は、ディープシークに限らず、生成AIを利用する際には、入力する文言に注意してほしいと指摘します。
AIに詳しい 東京大学大学院 松尾豊教授
「データがあちら側のサーバーにいきますので、例えば機密情報を出さない、プライバシーの情報を出さない。そういったことは注意が必要」
(1月29日放送『news zero』より)