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最後のシャトル 重要な積み荷とは?

2011年7月20日 16:39
最後のシャトル 重要な積み荷とは?

 重さが2000トン、タンクまで入れると高さは約56メートルにもなる巨大なスペースシャトル。大きな機体の一方でスペースシャトルのトイレは狭くて穴が小さい。そのため訓練用の便器には穴にカメラがついていて、カメラが映し出している自分のお尻が便器の穴と合っているか確認できるようになっている。宇宙飛行士の若田光一さんも「しっかり座るのに気を付ける必要があったことが思い出。慣れると結構、簡単です」と話す。

 宇宙ではコップ一杯の水は40万円のコストがかかっている。そこで飲料水をつくる「水源」として注目されたのが「トイレ」だ。スペースシャトルがドッキングしていた国際宇宙ステーションでは尿や汗を再利用した「水」が作られている。しかし、この装置は大きく小型の宇宙船に乗せることが難しいのが現状だ。

 NASA研究員のモニカ・ソラーさんは「これがシャトルに積まれる浸透膜のキットです。シャトルで行われる最後の科学実験の一つになります」と説明する。今回のシャトルの任務である実験とは、まず汚水に見立てた青い色素が入った水をパックに注ぎ込む。このパックは2重構造になっており外側に汚れた水が入る。次に黄色い液体。これは砂糖水で、汚れた水からきれいな水を引き出す役目だ。内側と外側に入れられた液体に糖分の濃度の差ができる。そのため自然に濃度差をなくそうと、汚れた水からきれいな水だけが特殊な膜を通過し、汚れは膜で「濾過(ろか)」される仕組みだ。モニカさんは「この実験の重要な点は、実験結果のサンプルを地球に持ち帰り、微重力のもとで、どれだけの速さで、水が膜を通過したかを調べること」という。

 浄水キットはアウトドア用品などでも開発が進んでいるが、宇宙で使用するためには燃えたりしないよう一層厳しい基準で作られている。月や火星の有人探査を目指すNASAにとって浄水キットの小型化は最重要課題の1つだ。

 濾過パックの外側に入れた汚水の半分ほどが、浸透膜を通して内側に通過すると、青い色は全くなくなった。この濾過された液体をなめてみると、ほのかに甘く薄いスポーツドリンクのような味がする。これであれば十分飲むことが出来る。モニカさんは「今のところ仮説では、微重力環境下だと水分は膜を地上よりも早く通過すると考えている」と話す。濃度の違いは塩などでも出すことは可能だが、飲料水にするためには糖分が適しているとのこと。アンモニアを取り除くフィルターを通せば、尿を飲料水にすることも可能だという。さらに10回程度、繰り返し使用することができる。若田光一さんは「火星とか小惑星に行くときは、もっと水の完全再利用できる装置が必要。将来の有人宇宙活動をより効率的にする技術として画期的だと思う」と語る。

 最後のシャトルが運ぶ小さな浄水キットは、今後の宇宙開発で重要な「水」問題の解決策になるかもしれない。