日米が過去最大規模の共同訓練
カリフォルニア州で行われた陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の共同訓練。この訓練は過去最大規模のものとなった。その背景には何があるのだろうか。ロサンゼルス支局・加藤高太郎記者が取材した。
共同訓練が行われたのは、カリフォルニア州サンディエゴ近くにある海兵隊基地、キャンプ・ペンドルトン。陸上自衛隊からは過去最多の280人が参加することになっている。日本から参加したのは、主に九州や沖縄の離島の防衛を担う部隊だ。今年で8回目となるこの共同訓練は離島の防衛力強化を目的としたもので「アイアン・フィスト~鉄拳作戦~」と呼ばれている。海兵隊との連携を確認するとともに、そのノウハウを吸収することが最大の目的だ。約1か月かけて、日本では困難な航空機や実弾を使った大規模な訓練をカリフォルニア州の広大な演習場で行う。実戦に近いものにするため、今回、カリフォルニア州沖の離島が訓練の舞台に選ばれた。島の高台に展開した自衛隊が敵の位置を海兵隊に伝える。すると、その情報をもとに海兵隊は沖合の船や上空のヘリから攻撃を加える。
今回の訓練は例年に増して注目を浴びた。それは今、沖縄の尖閣諸島をめぐり、中国との緊張が高まっているからだ。過去最大の規模で訓練に臨んだ陸上自衛隊だが「特定の国や場所を想定した訓練ではない」としている。陸上自衛隊・西部方面普通科連隊長の國井松司一等陸佐は「今の状況がどうというのではなくて、今まで積み上げてきたものをより高いレベルで訓練したい」と説明する。終盤には、敵に奪われた島に上陸し奪還するという想定で、仕上げの訓練が行われた。沖合に浮かぶ船から出ていったのは海兵隊の水陸両用の装甲車だ。隊員らを乗せ、まるでボートのように移動し、そのまま海岸に上陸することができる。陸上自衛隊もまもなく導入を予定する離島の防衛力強化の切り札ともいえる車両だ。
一方の自衛隊員は上空から離島に上陸をはかる。その際に今回選ばれたのは、陸上自衛隊の訓練としては、初となる海兵隊の新型輸送機オスプレイだった。陸上自衛隊員を乗せたオスプレイが編隊を組んで近づき、激しい砂ぼこりをあげて着陸。オスプレイで上陸したのは、小銃や対戦車砲を手にした約50人の自衛隊員。上陸後、直ちに敵の陣地に向けて移動を開始した。去年、海兵隊が沖縄に12機配備し、地元住民からの反発が高まっているオスプレイ。自衛隊は現時点でオスプレイ導入については何も決まっていない、としているが、海兵隊は今回の訓練を「どのようにオスプレイを活用するかを見せる機会」と位置付け、離島防衛における有用性を示した。
その戦力と連携をアピールすることで、中国をけん制するねらいがあったとみられるアメリカ海兵隊と自衛隊。より実戦的な訓練に対し、中国が今後どのような反応を示すのか、注目される。