【解説】アメリカ大統領選挙まで1週間 最終盤の情勢は?
アメリカ大統領選挙まであと1週間です。トランプ氏とハリス氏が争う現在の大統領選の情勢について、日本テレビの山崎大輔ワシントン支局長が解説します。
森圭介キャスター
「29日の3つのテーマは
1.トランプ氏・ハリス氏 勝つのは?
2.ハリス氏の巻き返し戦略は?
3.トランプ氏に新たな不安?
まず1つ目、トランプ氏、ハリス氏、現在情勢はどうなっていますか?」
山崎大輔NNNワシントン支局長
「大接戦が続いていて、選挙直前でここまできっ抗しているのは極めて異例といえます。全米の世論調査の平均では、トランプ氏がハリス氏をわずかに上回っています。大統領選は7つしかない激戦の州の勝敗が勝負を決めるだけに、この7州の情勢が特に重要なんですが、すべての州で今、トランプ氏がリードしている状態です。8月からずっとハリス氏がリードしていましたが、一時の勢いが落ち着きまして、10月に入ってトランプ氏が巻き返した形となっています」
森キャスター
「となると、トランプ氏が優勢と考えていいんでしょうか?」
山崎支局長
「そうともいえないんです。トランプ氏がリードしていると言ってもハリス氏との差はほんのわずかなんです。最も差が開いているジョージア州でも2.3ポイントしか開いていなくて、この状態ですと、互角の状態でラスト1週間に突入したといえます」
森キャスター
「2つ目の疑問になりますが、『ハリス氏の巻き返し戦略は?』ということですが、これはどうやって支持を広げる戦略なんですか?」
山崎支局長
「最終盤に入って、ハリス氏はトランプ氏が返り咲いた場合の危険性を強調する戦略に転換しました。これまで政策を訴えても支持があまり伸ばせていないという焦りからなんですが、『トランプ氏は不安定で錯乱している』『トランプ氏が復権すれば独裁を目指す』などと強調して、トランプ氏を再び大統領にしないために投票に行ってほしいと呼びかけています」
「29日にはホワイトハウスの近くで大規模な演説を予定しています。これは2021年の議事堂襲撃事件の直前にトランプ氏が支持者に演説をした同じ場所で、有権者に事件を思い出させた上で民主主義の危機を訴えるといった戦略になります」
「そして連日、激戦州で集会を開いて、オバマ元大統領や歌手のビヨンセさんら著名人を総動員して支持を訴えています。そんな中で最終盤、ハリス氏が集会に応援弁士として呼んでいない人物がいるんですけど、誰か分かりますか?」
森キャスター
「呼んでいない? アーティストでいうとテイラー・スウィフトさんとかビリー・アイリッシュさんが支持を表明していますけど、そこじゃないということですか?」
山崎支局長
「オバマ元大統領ですとかクリントン元大統領とかは呼んでいるんですけれども、最終盤で1度もハリス氏とツーショットになっていないのがバイデン大統領なんです。なんで最終盤に呼んでいないのかですが、ニューヨークタイムズは、ハリス陣営が『不人気のバイデン氏と一緒に出ても不利益をもたらすだけだ』として距離を置いているとしています。バイデン氏からしてみると、後継指名をしたハリス氏なので怒っているのかと思いきや、この記事の中では、『バイデンよりビヨンセを呼びたいというのは理解している』とバイデン氏も言っていて、理解しているということです」
森キャスター
「では3つ目のテーマですけれども、『トランプ氏に新たな不安とは?』とありますが、これは一体どういうことでしょうか?」
山崎支局長
「これまでのところ、トランプ氏は不法移民問題や物価高を争点に据え着実に支持を伸ばしています。ハリス氏に対しても『知能が低い』ですとか、個人攻撃を強めていて、相変わらずうそや誇張を交えた演説で集会を盛り上げています。27日にはニューヨークで大規模な集会を開きましたが、登壇した支持者からは差別的な発言が相次ぎました」
「ここであるコメディアンが、アメリカの自治領であるプエルトリコについて『ゴミの島』という発言したことで、これに反発したプエルトリコ系のアーティストのジェニファー・ロペスさんやリッキー・マーティンさんらが、SNSでハリス氏への支持を表明しました」
「実はこの動きが、トランプ氏にとって新たな不安要素となってしまったんです。激戦州のペンシルベニア州では、中南米系の有権者の約半数がプエルトリコ系だということなんです。このわずかな票差で勝負が決まる激戦州にとっては、この動きが広がると選挙戦に影響を与える可能性があるので注目されています」