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日本人遺族が慰霊で北朝鮮訪問 記者報告

2013年6月29日 18:56
日本人遺族が慰霊で北朝鮮訪問 記者報告

 終戦前後に現在の北朝鮮で死亡した日本人の遺族が、今月15日から慰霊のため北朝鮮を訪れた。ミサイル発射の動きなど挑発姿勢を強めた後、初めてとなる訪問団に対し、北朝鮮側はどのような姿勢を見せたのか。山崎大輔記者が報告する。

 去年始まった慰霊のための北朝鮮訪問は今回が5回目。遺族11人は、当初は4月に北朝鮮入りする予定だったが、北朝鮮がミサイル発射に向けた動きを見せるなど緊張が高まり、2度にわたって延期されていた。

 父親を亡くした福島隆さん「私たちは長い間、この時間を待っていました。飛行機を降りた時は感無量でした」

 厚生労働省によると、北朝鮮では日本人3万人以上が死亡し、現在も2万1600人の遺骨が残されている。しかし、北朝鮮とは国交がないため、戦後68年たった現在も遺骨の収容はできないままだ。

 「父と一緒にお酒が飲みたかったのですが、当時はまだ11歳でお酒を飲めませんでした。今日は私もいただきます。親子でお酒を飲みます」-両親を亡くした今村了さんは、父親が好きだったという日本酒を持参し、手を合わせた。また、福島さんは「父と同じように我々の先祖がここに何万人と埋まっていると思うと、本当に68年、なんでここまで手を打たなかったのか」と話した。

 北朝鮮の当局者は「日朝関係が悪化する中、人道的に受け入れた」と強調。遺骨問題の解決を繰り返し訴えた。今後も遺族の訪問を受け入れる姿勢を示しており、日本との関係改善の糸口にしたい狙いがうかがえる。しかし、日本政府としては拉致問題が置き去りになる懸念から、遺骨問題の交渉だけを先行させることには慎重だ。

 遺族の高齢化が進む中、まずは去年11月以降、行われていない日朝の政府間協議を再開させることが問題解決への第一歩となる。