韓流ブーム中国でも!ドラマが拍車をかけ…
中国と韓国は政治だけではなく、経済や文化の面でも交流を深めている。こうした中、今中国では「韓流」ブームが巻き起こっている。坂口賢二記者が取材した。
今月3日、就任して初めて韓国を訪れた中国の習近平国家主席。
朴槿恵大統領「新しい北東アジアをつくるために力を合わせれば、韓国と中国の夢は、北東アジアの夢に拡大できると思います」
習近平国家主席「この1年間に、私たちは数回にわたって会談を行いました。まるで親戚を訪れたようです」
関係が冷え込む日本を尻目に、中韓の両首脳は親密ぶりをアピールした。背景には、両国が経済、文化での結びつきをますます強めていることがある。今年、上半期の中国への投資額は日本が前年比半減の一方、韓国は5割増。韓国が初めて日本を上回った。中国の輸入相手先でも韓国は去年、日本を抜きトップに躍りでた。韓国から中国への輸出は対日輸出額の4倍以上だ。韓国にとって中国はすでに最大の商売相手なのだ。
こうした中、韓国を訪れる中国人も増加の一途をたどっている。去年、初めて日本人の数を抜き今年に入り、その差は広がりつつある。かつて日本人でにぎわったソウル中心部の免税店。いま、買い物客の半数以上は中国人観光客だという。中国人観光客からは、「5万元(約80万円)使いました」「韓国が大好き。ここに住みたいぐらいよ」という声が聞かれた。
中国での韓流ブームに拍車をかけたのが、韓国の人気ドラマ「星から来たあなた」だ。中国でのインターネット動画サイトの再生回数は、実に25億回以上。ドラマにはこんなセリフがある。
「初雪が降る日には、チキンにビールなのに…」
中国では、このシーンをきっかけに「チキンとビール」が大流行した。この料理店では、ドラマが中国で放映されて以降、来店客が3倍に増えたという。そして、ソウルで開かれている「星から来たあなた」のイベント会場を訪れてみると、1日1000人の来客数のうち、9割が中国人だという。400万人の読者をもつブログ作者・易振興さんは「韓国ドラマの俳優は演技に入り込み、キャラクターを生かしています。中国では、まだこうしたドラマが不足しています」と説明する。この日、ソウルの会場を訪れていたのは100万人以上のフォロワーを持つ中国の有力ブロガー。「韓流」を発信してもらうべく、韓国政府が有力ブロガーや中国メディアの記者を招いているのだ。
日本での韓流ブームが下火になる中、韓国の芸能プロダクションは、中国市場に熱いまなざしを向けている。CJE&Mのソ・ヒョンドン常務は「中国全体の市場規模から見ると、もっと開発する余地があります。単なるコンテンツの輸出ではなく、現地進出、現地制作を目指しています」と語る。
中国人の韓流ブームは、ドラマにとどまらない。中国人のカップルに人気を集めているスポットが、韓国の写真スタジオだ。ここを訪れていた女性は「韓国のお化粧の技術は、とてもステキであこがれていたの」と話す。中国では韓国での写真撮影がブーム。このスタジオには、1か月に60組ほどの中国人カップルが訪れるという。ウエディング写真コーディネーターの金宗洙代表は「中国に向けていい宣伝をして、知ってもらうことに腐心、努力している」と話す。
竹島や歴史認識問題で、日本との関係は冷え込んだままの韓国。その一方で、巨大なマーケットをつかもうと中国との結びつきは当面、さらに強まることになりそうだ。