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国交正常化50年 2015年日韓関係展望

2015年1月3日 22:28

 日本と韓国は2015年、国交正常化50周年という大きな節目を迎える。しかし、両国の関係は皮肉にも「過去最悪」と言われるほど冷え込んでいる。その最大の要因は韓国の朴槿恵大統領の姿勢だ。

 ここ20年以上、毎年行われていた日韓首脳会談は安倍首相と朴大統領の就任以降、一度も開かれていない。日本側が「前提条件をつけずに首脳会談を行うべき」という立場なのに対し、朴大統領は「日本が首脳会談の前に慰安婦問題で前向きな対応を示すべきだ」という姿勢を崩していないためだ。安倍首相がいわゆる従軍慰安婦の問題で旧日本軍の関与などを認めた「河野談話」を去年、検証したことに朴政権は不信感を募らせている。

 集団的自衛権の行使容認も日本の「右傾化」と映る。2015年、首脳会談は実現するのか。韓国内でも2014年後半から「日本との関係を改善すべきだ」という声は上がり始めている。同じく関係が冷え込んでいた中国との間で首脳会談が行われたことに「このままでは韓国が取り残される」という焦りものぞく。

 ただ、現状を打開できる糸口は見いだせない。韓国の外交関係者は「国交正常化50年の年に首脳同士が会わないことは避けたい」としながらも、「韓国外務省内では、まだ3年以上ある朴大統領の任期中の首脳会談実現には悲観的な見方が大勢だ」とも話した。

 理由は、やはり慰安婦問題。去年12月29日、外務省の斎木事務次官が訪韓し、趙太庸外務第1次官と関係改善をテーマに意見交換したが、慰安婦問題をめぐっては双方の原則的な立場を述べあうにとどまり、溝は埋まらなかった。前出の韓国の外交関係者は「慰安婦問題ではこちらも歩み寄る考えはあるが、まずは日本側がカードを出さなければ動けない。いまの日本からは、関係を改善しようという積極的な意思が感じられない」と述べ、ボールは日本側にあるという認識を示している。

 「動けない」という言葉からは、朴大統領を取り巻く国内政治の状況もうかがえる。韓国の調査機関「ギャラップ」が去年12月19日に発表した調査では朴大統領の支持率は37%と、同社の調査としては初めて4割を切った。大統領の元側近が国政運営に介入した疑惑をめぐり、大統領の閉鎖的な姿勢が批判されていることなどが影響したとみられている。韓国では2015年は大きな選挙もなく、朴大統領は比較的余裕をもって課題に取り組むことができるはずだが、国民の支持が低迷する中で慰安婦など敏感な問題で日本に妥協的な姿勢を示すのは難しいという指摘もある。

 関係の冷え込みが続き、日本国民の感情にも変化が表れている。内閣府が昨年末に発表した外交に関する世論調査で、「韓国に親しみを感じない」と答えた人の割合は66.4%と、1978年の調査開始以降、最も高い結果となった。文化交流などを通じて少しずつ距離を縮めてきた日韓の国民だが、政治での関係改善がこれ以上、遅れれば日韓関係全体の後退につながり、長く影を落とすことになりかねない。