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米大統領選で後継のハリス氏、“56年前の悪夢”よぎる? トランプ陣営、「民主主義と正反対」なぜ批判?【#みんなのギモン】

2024年7月24日 10:11
米大統領選で後継のハリス氏、“56年前の悪夢”よぎる? トランプ陣営、「民主主義と正反対」なぜ批判?【#みんなのギモン】
3か月半後に迫るアメリカ大統領選。民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)がバイデン大統領の“後継”となりましたが、矢継ぎ早に活動するのにはワケがありました。正式候補になるには課題があり、過去の「悪夢」を繰り返したくないとの思いがにじみます。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「“後継”ハリス氏によぎる悪夢?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●待ち受ける2つの課題
●56年前のトラウマ

■ハリス氏「106日間訴え勝利する」

近野宏明・日本テレビ解説委員
「アメリカのバイデン大統領が大統領選からの撤退を表明し、その後継指名を大統領から受けたハリス副大統領ですが、異例の事態が起きていて、悪夢もよぎっています」

「選挙活動を本格化させたハリス氏は22日、バイデン大統領から引き継いだ選挙本部を訪れ、スピーチしました。『選挙までの106日間、アメリカ国民に訴え勝利するつもりだ。我々は勝利する』と語りました」

■トランプ氏への対決姿勢を鮮明に

近野解説委員
「さらに、トランプ氏への対決姿勢を早速鮮明にしています。『トランプはアメリカを逆戻りさせようとしている』などと厳しく批判していて、ハリス氏とトランプ氏が争う新たな構図ができ始めています」

鈴江奈々アナウンサー
「ハリス氏はバイデン大統領を支える副大統領という立場だったので、ここから一気に、短い選挙戦を戦うことになりますよね」

近野解説委員
「大統領選まで残り3か月半と迫っていますので、急きょ大統領から『あなたがいい』と後継指名を受けたハリス氏が、早くやらなきゃいけないことが山積みです」

■本来は党内の予備選で候補を絞り込み

近野解説委員
「そもそもハリス氏は大統領から後継指名は受けましたが、民主党大会(8月19日)で正式に指名されないと、党の正式な候補にはなれません。そこで透明性ある選出手続きを踏むこと、最善の候補で民主党の中が一致団結すること、という2つの課題があります」

「本来であれば、党大会に先立ち、大統領候補になるための各州で行われる党内の予備選挙で候補者を絞り込んでいくプロセスがあります。勝ち残った1人が、党大会での投票で正式に指名されるわけです」

■「公正で透明性ある選び方」アピール

近野解説委員
「しかし今回は事実上、民主党は予定調和ではありますが現職のバイデン氏だけが予備選を勝ち上がってきました。ハリス氏は、もちろんこの戦いを勝ち上がってきたわけではありません」

「これについてトランプ陣営からは『バイデン氏を選んだ1400万票の民意を無効にした民主党は、“民主主義”とは正反対』と批判が早速出ています」

斎藤佑樹キャスター
「確かにハリス氏は予備選を経ずに来たので、バイデンさんが選んだというだけですから…」

近野解説委員
「その後ろ盾だけがある状態です。そういうわけでということなのか、アメリカメディアによると、民主党は党大会の前の8月7日、オンライン投票で大統領候補を選出すると明らかにしました」

「投票という手続きを党大会の前に挟むことで、公正で透明性のある選び方をしたんだとアピールできます。また、この日程だとハリス氏以外の立候補は非常に難しい。ハリス氏への一本化を確実に進めたい狙いも透けて見えます」

■支持固め着々、献金は史上最高額

近野解説委員
「さらに、アメリカの主要メディアは、ハリス氏が指名獲得に必要な代議員の過半数の支持を固めたと報じています。民主党の新たな候補となるのは確実な情勢とみられています」

「選挙を続けるために大事な献金もどんどん集まっていて、陣営はバイデン氏が撤退してからの24時間で8100万ドル、日本円で約127億円を集めたと明らかにしました。陣営によると、1日で集まった額としては史上最高額だそうです」

森圭介アナウンサー
「金額だけを見てみれば、ハリス氏への期待が高まっているのが分かります。バイデン氏の撤退からそんなに時間がない中で、一気にハリス氏に固まっていくのが感じられます」

■有力な議員が暗殺…トラウマの中身

近野解説委員
「迷走する恐れもありましたが、かなり矢継ぎ早に手を打っている状況ですね。ではなぜ、そんなに矢継ぎ早に進めているか。それは、56年前のトラウマがあるからです。最も避けなければいけない深刻なトラウマが民主党にあり、1968年の大統領選がそれにあたります」

「この時も、民主党は現職のジョンソン大統領が選挙戦の途中で撤退しました。バイデン氏の途中撤退は、この時以来56年ぶりの異常事態です。ただ当時は党大会まで5か月近く残っていたので、民主党は党内の予備選挙を続けていきました」

「しかしそのさなかに、ケネディ大統領の弟で有力とされたロバート・ケネディ上院議員が選挙中に暗殺されたこともあり、党大会に至るまで党内で一致できる候補が絞り込まれませんでした」

「最終的には、当時副大統領だったハンフリー氏を指名したものの、これに反発する声がこの時点でも根強く、党大会は会場の中も外も暴動のような大荒れになりました。警官隊まで投入される騒ぎになってしまいました」

■敗北…共和党に政権を奪われる結果に

近野解説委員
「結果として、民主党は11月の本選挙も敗れてしまい、共和党のニクソン氏に政権を奪われてしまったという悪夢があります」

鈴江アナウンサー
「1つ1つの歴史の出来事は頭の片隅にあったんですが、こういう流れが56年前にあったんですね」

河出奈都美アナウンサー
「確かにフラッシュバックしてくるくらい、似たような流れをたどっていますよね」

■1968年大統領選との共通点は?

近野解説委員
「今回と共通点が結構あります。まずは現職の大統領の不出馬。その理由はいろいろありますが、1つはアメリカが関わる戦争への対応でした。1968年はベトナム戦争が泥沼化して反戦運動が高まり、とても現職が再選を目指すとは言えない状況に追い込まれました」

「今回も高齢批判などはもちろんありますが、外交に関しては、バイデン政権はイスラエルへの強い支援をいつまで続けるのか。ガザの人々をいつまであの非人道的な状況に置き続けるのか。若者やアラブ系住民から非常に強い批判が出ています」

「そんな中、予備選とはあまり関係ないプロセスを経て副大統領が後継に指名され、今回も指名されそうです。さらに党大会の開催都市は当時も今回もシカゴで、因縁の街です」

「(イスラエルへの支援などでバイデン政権に批判的な)若者や住民たちがデモをしにシカゴに押し寄せようという計画も今あるようです」

■透明性ある手続きと、党内の一致団結

森アナウンサー
「もちろん今の有権者にも1968年の大統領選を経験されている方はいるでしょうから、フラッシュバックするという方はいるでしょうね」

近野解説委員
「だからこそその悪夢を繰り返さないように、透明性のある手続きを踏みながら、党内の一致団結を早くする。それが不可欠なんです」

鈴江アナウンサー
「党大会の開催都市は決まった場所ではないじゃないですよね。偶然シカゴで一致しているというのも、嫌な感じがあると思います。民主党としては政権交代させたくない、(1968年と)同じようなことは起こさせたくないという思いが強いですよね」

近野解説委員
「その思いが強いからこそ、民主党はバイデン大統領の撤退の表明から目まぐるしく動いています。前代未聞のこの状況と時間的な制約がそれを加速させているわけで、当面は刻一刻、目が離せません」

(2024年7月23日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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