支援金はどこへ…ウクライナ悩ます深い闇
政府軍と親ロシア派の武装勢力との間で戦闘が続くウクライナ東部では、大人だけではなく、子どもたちも深刻な影響を受けている。また、国際社会からの支援も不正に使われていると指摘もある。渡辺祐史記者が取材した。
今年2月に停戦で合意したあとも戦闘が続くウクライナ東部では、戦火を避け避難する人が増え続けている。政府側が支配するドネツク州北部の町では、キャンプ場の宿泊施設で80人以上が避難生活を送っている。
避難生活者「この部屋では、一家族と別の家族の女性がともに暮らしています。ひとつの部屋に同居せざるを得ないのです」
ひとつの部屋に複数の家族が生活する状態。洗濯機など生活に必要な電化製品なども不足し、冷蔵庫は使い古しのものが2つあるだけだ。
避難生活者「冷蔵庫はせめてもう1台欲しいわ。夏が近いのに、食料を保存できないの」
避難者の中には子どもも多く、戦闘を身近で経験したことによる精神的な後遺症や教育に関する問題も出ている。激しい戦闘が続く町から避難しているダリナちゃん(4)は、絵を描くのが大好きだが、戦闘を経験した直後は今とは違った絵を描いていたという。
ダリナちゃんの母親「怒っているような唇や舌など、わけの分からない人の絵や、すべてを黒く塗るような絵を描いていました」
子どもをめぐる環境は厳しく、戦闘があった地域に放置された不発弾や地雷で約70人の子どもが死亡したほか、戦闘が激しい地域では防空壕に潜んで生活する子どももいる。ユニセフ(国連児童基金)は、衛生環境の改善などに取り組んでいるが、資金が十分ではなく、国際社会の関心も薄れていると危惧している。
ユニセフ・キエフ事務所長「資金も限られている中で、ウクライナ支援の優先度を維持するのは容易ではありません」
18.4億ドル(約2300億円)という巨額の援助を表明している日本をはじめ、ウクライナを財政的に支えようという国は多くある。しかし、汚職を調査する地元のNGOは国際社会からの支援も不正に使われていると指摘する。
汚職調査をするNGO事務局長「多くの犯罪組織が暗躍していて、高級官僚と密接な関係を築いています」「今も一部で同じやり方が続いていて、あらゆる分野で不正が行われています」
ある学校では、日本の援助で建物の断熱工事が行われたが、資金が不適切に使われたのではないかという疑いが取りざたされている。地元のNGOは、この学校の壁の改修事業など過去に日本が行った支援に関しても調査。工期が1年以上遅れたり、質の低い材料が使われたりしており、誰かが金を着服した疑いがあると主張している。しかし、それを裏付けて告発しようにもウクライナでは、情報公開が十分ではなく、現在の制度では調査にも限界があるという。
調査したNGO職員「事業の技術的な文書が見つかりません。長時間調べても、どの事業にどれだけの資金が投じられたのか分かりません」
戦闘の出口が見えず、助けを必要とする人たちが増え続けるウクライナ。和平の実現だけでなく、その先、国としての安定を手に入れるために、解決すべき課題が山積みとなっている。