今後も発射示唆…北朝鮮とどう向き合うか?
「今後も太平洋を目標にして発射実験を多く行う」…日本上空を通過するミサイルの発射を今後も繰り返す可能性もある北朝鮮。日本はどう向き合っていけばいいのだろうか。
■ミサイル発射の理由は―
北朝鮮はミサイルを発射した理由について、米韓合同軍事演習への対抗措置であること、さらに、ミサイルの実戦的な運営能力を決定的にするためだったとしている。つまり、今年5月にロフテッド軌道で飛ばしていた火星12型の性能を確かなものとするために、今回はより実戦に近い形で発射させた、それも「不意的な起動と打撃」、つまり敵に気付かれないよう短時間で態勢を立ち上げ発射したということになる。
さらに「グアム島をけん制するための前奏曲になる」ともしている。これは、今後も太平洋を目標にして発射訓練を繰り返すということで、今後も日本の上空にミサイルを飛ばす可能性を示唆している。
■「米が動かないから、日本を揺さぶる」
どうしてこのタイミングだったのか。実は29日は、日本が韓国を植民地化した「日韓併合」から107年の日だった。30日の労働新聞では、日韓併合の日にあわせて発射することで、金正恩委員長が「残悪な日本の輩(やから)がびっくり仰天するような大胆な作戦を広げ」「積もりに積もった恨みを晴らしてくれた」と書いている。かなり強い表現だが、北朝鮮が日韓併合を持ち出すのは異例で、単なる後付けとの見方もある。
北朝鮮に詳しい李教授は、こうした表現について「アメリカが対話に動かないため、日本を揺さぶっている」と分析している。「日米を同時に揺さぶるため、あえて感情的な表現を使ったのではないか」という。
■北への制裁、現状では効果なく
国連では、日本時間の30日朝、安全保障理事会の緊急会合で北朝鮮を非難する議長声明が採択されたが、日本とアメリカが求めているのは北朝鮮に対する「経済制裁の強化」だ。制裁として、最大の効果があるとみられている「石油」を輸出禁止品目に加えられるかどうかが焦点となっている。
北朝鮮への経済制裁は8月初めに強化されていたが、“さらに”ということになる。今月5日に採択された制裁決議では、北朝鮮の主な収入源である石炭や鉄などの輸出を全面的に禁止するというかなり厳しい内容だったが、結果的には、今回のようにミサイルは発射され続けている。制裁に抜け道があったり、効果がないというのが現状だ。
■露・中は、制裁に慎重な姿勢
アメリカと日本はミサイル開発の生命線ともいえる「石油の輸出禁止」を求めているが、北朝鮮の石油の9割は中国から輸入されているなど、中国と北朝鮮の経済的なつながりが非常に強い。
その中国は30日、王毅外相が「一方的な制裁には反対する」と述べていて、合同軍事演習を行っているアメリカと韓国にも自制を求めている。一方、ロシアも「制裁措置のみで解決するのは不可能だ」と主張していて、制裁を強化できるかどうかは不透明な状況だ。
■問われる外交力
安全保障で大事なことは外交で、いかに北朝鮮を暴発させないかにかかっている。軍事衝突に陥った場合、大きな被害をこうむるのは日本や韓国になる。北朝鮮が暴発しない形で、どうアメリカや周辺国とともに抑止をはかっていくのか、日本の外交力が問われる。