部隊創設へ「斬首作戦」その現実味は?
今月3日、6度目となる核実験を行った北朝鮮。こうした中、韓国の国防相は4日、金正恩委員長らを狙う「斬首作戦」の部隊を年内に創設すると述べた。
■斬首作戦とは
「斬首作戦」という文字だけを見ると、かなり強い表現だが、どんな作戦なのか。斬首作戦は、北朝鮮のトップである金正恩委員長ら指導部を暗殺、または捕らえることで指揮系統をマヒさせるもの。いわば、金正恩体制を崩壊させるものだ。
4日の韓国の国会で宋永武国防相は「今年12月1日付で部隊を創設し、訓練期間を考慮して来年末には作戦能力が整う」という見通しを示した。
韓国の聯合ニュースなどによると、陸・海・空合同の「特殊任務旅団」、いわば特殊部隊を創設するということで、その規模は1000人から2000人だという。
■斬首作戦、いつから検討?
韓国メディアによると、実は、今年春に行われた米韓合同軍事演習で、すでに斬首作戦の訓練が行われていた。
この時、アメリカ軍からは、6年前に国際テロ組織「アルカイダ」のウサマ・ビンラディン容疑者を殺害した部隊が参加したという。この部隊は「ニンジャ・フォース」とも呼ばれていて、潜伏先の豪邸を襲撃し、ビンラディン容疑者を射殺した精鋭部隊だ。
■斬首作戦は、米韓合同で?
軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏は「情報収集能力はアメリカ軍が高いが、メーンは言葉が通じる韓国軍になる」と指摘している。
斬首作戦の要となるのが、地下施設を徹底的に攻撃することだと言われている。北朝鮮の軍事施設の多くは地下に配備されていて、金委員長らは、有事には地下の要塞(ようさい)に身を潜めると言われている。
黒井氏は、爆撃機から投下する「バンカーバスター」という地下深くまで攻撃できる爆弾で徹底的に攻撃すると分析している。しかし、これだけでは効果が限定的で、現場での捜索も必要なため、地上に特殊部隊を投入することも不可欠だという。
聯合ニュースによると、金委員長は斬首作戦を恐れていて、「活動するとしても未明にする。地方を訪問する時に専用の車に乗らず、幹部の車に乗っている」ということが、韓国の国会で報告されている。
■斬首作戦、現実味は?
北朝鮮情勢に詳しい早稲田大学大学院・李鍾元教授は「客観的に見た感じでは、今はまだ斬首作戦を実行する状況ではない」と話している。
一方で、「敵の指導部を制圧する訓練は多くの国でやっていること。北朝鮮で不穏な動きがあれば、発動する可能性は常にある」とも話していた。
■究極の手法 その前に
北朝鮮の脅威が高まり、朝鮮半島をかつてない緊張感が覆う中、あらゆる軍事的選択肢を検討することは、必要なことかもしれない。
しかし、一国のトップを暗殺するというのは、究極の手法、最後の選択肢だ。こうした事態になる前に、国際社会が外交で知恵を出し合うべきであり、正念場は続く。