金委員長の友人に?トランプ氏発言の狙いは
北朝鮮に対するアメリカ・トランプ大統領の“ある発言”に注目したい。
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安倍首相やトランプ大統領も乗り込んだASEAN関連の首脳会議。これに先立ちトランプ大統領がツイッターに書き込んだ言葉が臆測を呼んでいる。
「金正恩(委員長)の友人になろうと努力している」
“友人”という言葉は何を意味するのか。そして、北朝鮮への対応に変化はあるのだろうか。
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きっかけとなったのは11日、北朝鮮の外務省報道官がトランプ大統領のことを「気が狂った老いぼれ」と揶揄(やゆ)したこと。
これに反発してトランプ大統領は「私は金正恩(委員長)のことをチビでデブと呼んでいないのに私を老いぼれと侮辱した」とツイートした。この言葉とともに、「金正恩(委員長)の友人になろうと努力している。いつかそうなるかもしれない」と書き込んだ。
この「いつか友人になれるかも…」というのは、ある意味、冗談交じりのニュアンスだが当然その後の記者会見では、この言葉の真意について質問されトランプ大統領は「奇妙なことに見えるだろうが可能性は確かにある。(北朝鮮や)世界にとっても大変いいことになるだろう」と答えている。
――こう聞くと一転して「歩み寄るよ」と言ったようにも思えるが?
これはトランプ大統領の本心ではなく、トランプ大統領がいる場所が影響しているとも言える。今、トランプ大統領はフィリピンでASEANの会議に参加している。
このASEANの10か国は全て国が北朝鮮と国交があり、友好関係にある国も多い。トランプ大統領にとってはフィリピンが今回のアジア歴訪の最終訪問地で締めくくりであるため、北朝鮮の友好国がたくさんあるといえども圧力強化で協力を得ないといけない。そのため、こういう言い回しを使ったともとれる。
――トランプ大統領は協力を得られそうなのだろうか?
東南アジア各国の中では温度差もあるが風向きが変わってきている面もある。実はアジア各国の中でも北朝鮮と距離を置く国も増えている。
例えばインドネシアの初代スカルノ大統領と当時の北朝鮮の金日成主席は互いの国を訪問しあうほど親しい関係で、そのこともあって元大統領夫人のデヴィ夫人が2015年にも北朝鮮の式典に出席するなど、長年にわたって深い親交があった。
ところが、先日インドネシアのジョコ大統領は韓国の文在寅大統領と会談し、北朝鮮問題で韓国を支持する立場を鮮明にした。なぜ態度を一転させたのか、その背景のひとつが北朝鮮に対する国民感情の悪化と言える。
きっかけは今年2月に起きた金正男氏の殺害事件。実行犯として逮捕されたのはインドネシア人の女だったがインドネシア国民は「北朝鮮に利用されただけだ」と、北朝鮮に厳しい目を向けるようになった。
この事件では、舞台となったマレーシアとも外交関係が悪化し、マレーシアは今年3月に北朝鮮の国民に認めてきた“ビザなし渡航”を廃止した。
こうした変化は北朝鮮への圧力を強めたい日本やアメリカにとって追い風とも言える。
【日本も中国と…】
北朝鮮包囲網で安倍首相は各国の首脳と精力的に会談し、連携を確認した。ただ、カギを握る中国の習近平国家主席とどこまで連携を強化できるかが課題で、日本は、中国にとって耳が痛い北朝鮮の問題でいまだ突っ込んだ議論が難しい現状。まずは日中二国間の関係改善という段階ですらある。
安倍首相は危機感が高まっていることを強調しているが、北朝鮮包囲網でアメリカの協力を得ながら日本がアジアでリーダーシップを発揮できるのか、まだまだ時間がかかりそうだ。