「第3の軍事革命」AI兵器 軍事利用加速で“戦争のカタチ”変わる?
急速に開発が進むAI(=人工知能)の軍事利用が加速しています。戦争のカタチを変えつつある、AI兵器の実態に迫ります。
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ロシアによる侵攻から、2年半以上が経過したウクライナの戦場。実はいま、AIの技術を用いた新たな兵器の“実験場”と化しているのです。
ウクライナ軍が前線に投入している四足歩行で進むロボット犬は、兵士の代わりに敵の塹壕(ざんごう)の偵察や地雷探知を担うほか、危険地帯への弾薬や医薬品の運搬も可能だといいます。
実際の戦場で収集したデータをAIに学習させることで、飛躍的に能力が向上。欠かすことのできない存在になっています。
ウクライナ軍の越境攻撃が続くロシア西部クルスク州では、武装したウクライナ軍の無人車両が、地雷をかわして敵地に侵入し、ロシア側の塹壕(ざんごう)を襲撃し、防衛線を突破することに成功したといいます。
戦闘の長期化で兵士の犠牲が増え続ける中、味方の人的被害や精神的負担を減らすため、心を持たず、疲れや痛みを感じない「AI兵器」が次々と戦場に送られているのです。
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加速するAIの軍事利用。私たちはその最前線、アメリカ西部ユタ州へ向かいました。
フォーテム社幹部
「フォーテム・テクノロジーズへようこそ」
フォーテム社は、ウクライナにAIを使った防衛システムを提供する企業です。
フォーテム社幹部
「これがアメリカ政府や世界のパートナーに供給している最新の『ドローンハンター』です」
フォーテム社が開発したのは、AIを使って敵の無人機を捕獲する「ドローンハンター」。
フォーテム社幹部
「ウクライナ侵攻は、真のドローン戦争の始まりです。脅威を先取りし、その脅威に対抗する技術を生み出しているのです」
すでにウクライナの戦場で活用されていて、ロシアの無人機を捕獲することに成功しているといいます。
橋本雅之記者(米・ユタ州)
「実際にウクライナの戦場では、どのようにドローンハンターがロシアの無人機を捕獲しているのか、デモンストレーションを行います」
最新のAIシステムが、敵の無人機を検知。自動でドローンハンターが飛び立ちます。
橋本雅之記者
「敵の無人機をドローンハンターがロックオンしました。近づいていっています」
敵への距離を詰めていくドローンハンター。そして…
NNNユタ 橋本雅之記者
「いま、ネットが発射されて敵の無人機を捕獲しました」
捕獲に成功すると、ゆっくりと着陸態勢に。ドローンハンターによる捕獲は、 銃などで撃ち落とすのに比べて破片などが飛び散らず、地上への影響が少ないといいます。
フォーテム社担当者
「発射タイミング、ターゲットに並ぶ高度や速度など、すべてAIが判断します。これはウクライナの人々が身を守ることを助ける技術です」
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火薬、核兵器に次ぐ「第3の軍事革命」とされるAI兵器。国際的な規制がない中、いま、大国間の開発競争が激化しています。アメリカで開かれた世界最大級の軍事見本市には、最新のAI兵器が集まりました。
米軍幹部
「動く標的も狙えますか?」
「AI銃」開発企業幹部
「もちろん」
米軍幹部
「人に向けて使ったことは?」
「AI銃」開発企業幹部
「そのために設計されています」
各国の軍関係者が関心を寄せていたのは、最新のAIシステムを搭載した“AI銃”です。
AIが敵を検知し、動きや風を計算して「確実に当たる弾道」を算出。自動で追尾し続けるため、人間は引き金を引いたまま、表示された的を狙うだけ、というものです。
「AI銃」開発企業幹部
「ターゲットがロックオンされたら、引き金を引き続けるのです」
米軍幹部
「すると?」
「AI銃」開発企業幹部
「命中確率が100パーセントになれば銃弾を発射します」
アメリカ国防総省が公開したのは、オレンジ色の戦闘機の映像です。操縦しているのは、人ではなくAI。高度な技術を必要とする戦闘機のパイロットを、AIが担っています。
去年9月には、人間が操縦する戦闘機とAIが操縦する戦闘機による世界初の接近空中戦、ドッグファイトの訓練を成功させました。
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AIの軍事利用によって、変わりつつある戦争のカタチ。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃では、標的の選定にAIが利用され、民間人の犠牲者増加に繋がっている、との指摘もあります。
さらに、近い将来、AIが敵を選定し、人間の判断を介さずに殺傷力の高い攻撃を行うLAWS(=「自律型致死兵器システム」)が実用化されるとの懸念が高まっています。
国連のグテーレス事務総長は、2026年までに“究極のAI兵器”とされるLAWSを法的に禁じる枠組みを創設するよう加盟国に求めています。9月にニューヨークで開かれた「未来サミット」では、AIのリスクを分析する専門家パネルを、国連に設置することが決定。新たな脅威への対応が急がれています。