相次ぐ“殺傷事件”…背景に社会不満 SNSに労働者の“抗議デモ”投稿 中国
今年、各地で“殺傷事件”が相次いだ中国。いま、SNS上に労働者による抗議デモの様子が多く投稿されています。厳しい言論統制が敷かれている中国国内で、何が起きているのでしょうか。
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20日、マカオ返還25周年の式典に出席した中国の習近平国家主席。
中国 習近平国家主席
「強国の建設はすでに壮大に展開されており、非常に輝かしい未来も現れている」
中国の発展を強調しました。しかし、その未来にいま、暗い影が差しています。
11月には、広東省で男が車で次々と人をはね、35人が死亡した事件が起きました。9月には、深センで日本人の児童が男に刺され死亡するなど、中国では殺傷事件が相次いでいます。
こうした事件の背景として指摘されているのが、中国経済の悪化による社会に対する不満の高まりです。取材すると、人々の切実な叫びが聞こえてきました。
渡辺容代記者
「仲介業者のもとに、職探しに来た人が集まっています」
上海に隣接する江蘇省の昆山は、職業あっせん業者が集まる町です。寒空の下、荷物を持って地方からやってきた多くの人が、仕事を探していました。
職を探す人
「(仕事が)つらいのは耐えられるけど、2~3か月たつと給料をすごく下げられるんだ。割に合わないと思って辞めて、また仕事を探すことになる。とにかく景気が悪いよ」
職を探す人
「例年この時期、企業はたくさん人を募集していたけど、今年はあまりない」
“労働環境が悪い”と話す人や、“求人そのものが少ない”と話す人。
仕事で採用されなかったという男性は、仲介業者に不満をぶつけていました。
職を探す人
「クソ!もう話がつきそうだったのに、仕事がなくなったよ! 誰でも怒るでしょう、メシの種がなくなったんだ。(採用担当者を)刺してやろうと思ったよ!」
仲介業者
「選ぶのは向こうだ! 何をしてほしいんだ?」
職を探す人
「…弁償」
仲介業者
「なんで向こうがお前に弁償しないといけないんだ! 働いてもいないだろう!」
仕事が取り合いとなる中、職業のあっせんや契約をめぐり、トラブルが絶えないといいます。
出稼ぎに来て、1泊400円ほどの相部屋で暮らしながら仕事を探す若者(25)。相部屋の男性は工場で日雇いで働いています。
相部屋の男性
「工場の日雇いやってるけど、日当200元(約4000円)だよ」
仕事を探す人(25)
「工場で200元!? それはつらすぎる。誰もやってられないね」
「給料がどんどん安くなっている」と話す若者。
仕事を探す人(25)
「これから仕事探しは、もっと難しくなります。人手が余ってるんです」
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市民の間で高まる“不安”と“不満”。それがいま、中国政府の厳しい言論統制の網からあふれるように表に出てきつつあります。SNS「X」には、「給料返せ! 給料返せ!」と給料の未払いを訴えるデモの様子をとらえた動画が投稿されていました。政権批判につながる恐れのある投稿は、当局の検閲により削除されているとみられる中国で、いま、労働者による抗議デモの投稿が、相次いでいるのです。
こうした投稿を集め抗議の実態を分析している香港のNGO団体を訪ねました。
中国の抗議デモ動画を集めるNGO団体
「SNSは中国の労働者たちにとって、不公平な目にあった時に政府の機関にいくよりも、早く広く注目してもらう手段となっています。政府でも、SNSを完全に規制することは不可能です」
NGOによると、今年上半期で確認できた労働者の抗議デモは719件にのぼるといいます。
SNSに抗議活動が投稿された電気部品メーカーを12月に訪れると、“3か月分の給料が未払い”だという男性から話を聞くことができました。
3か月分の給料が未払い
「もうやってられない。(家族を)養えません。いろんなところから借金をしています。未払いのままなら私はおしまいです」
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“輝かしい未来”を見据える習近平政権に、苦境にあえぐ人々の声は届くのでしょうか。