“日本製トランシーバー”か レバノンでまた爆発 メーカー「偽物の可能性」
ポケットベルの一斉爆発で多くの死傷者が出たレバノンで、今度はトランシーバーが相次ぎ爆発しました。爆発したトランシーバーは日本製とみられていますが、19日に取材に応じたメーカーは偽物の可能性があるとしています。
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レバノン南部でまたも起きた爆発。実はこの時、前の日に起きたポケベルの爆発で死亡した人々の葬儀が行われている最中でした。
17日には、イランを後ろ盾とするシーア派組織「ヒズボラ」の戦闘員が持つ数千台のポケベルが一斉に爆発し、12人が死亡、3000人近くがケガをしました。
レバノン当局によると、18日にはこれまでに20人が死亡、450人以上がケガをしています。
この日、爆発したのは…
「バッテリーが爆発しました」
真っ黒なトランシーバーです。中のバッテリーが突然、爆発したといいます。別の爆発現場に残されていたのも、バラバラになったトランシーバー。
トランシーバーには「アイコム」の文字が。日本の無線機メーカーです。
私たちは大阪にあるその会社へ。幹部が取材に応じました。
──製造段階で爆発物が仕掛けられたことは?
アイコム 榎本芳記取締役
「絶対ないです。そのようなものを組み込む速度でベルトコンベヤーは流れていませんので不可能だと思います」
製造段階で爆発物が仕掛けられた可能性を否定。その上でこの商品は過去に偽物が出回ったことがあると明かします。
アイコム 榎本芳記取締役
「偽物が出回っているということで、偽物か判別するホログラムシートを添付するようにして真贋(しんがん)を明らかにするようにしています」
今回爆発したトランシーバーを確認すると、いずれもホログラムシートは貼られていないようにみえます。
──今回(爆発したトランシーバー)は?
アイコム 榎本芳記取締役
「貼ってないんですよ、写真からは。だから偽物だと思う」
ただ、ホログラムを貼り始める前に流通したものの可能性もあるため、まずは偽物か本物か調べるとしています。
2日連続で狙われた「ヒズボラ」戦闘員らが使用する通信機器。ロイター通信によると、ヒズボラはポケベルとほぼ同じ時期にトランシーバーも購入していたといいます。
関与が指摘されるのは“世界最強”とも言われるイスラエルの情報機関モサド。どのように、敵対勢力の内部の動きをつかむことができたのか。専門家は…
日本大学危機管理学部 小谷賢教授
「モサド自体は職員の数を公表してない、一説によると大体6000~7000人。普段は大使館の要員として派遣されている人もいれば、民間企業、ジャーナリストとか、多国籍企業の社員とかですね。NGOのメンバーという可能性もありますけど、いろんな身分に偽装して海外で活動していると考えられます。世界中にいる協力者の数を合わせると万単位になる。モサドとヒズボラという点で、モサドの方が段違いに上手」
こうした中で起きた一斉爆発。爆弾はどこで仕掛けられたのか。
日本大学危機管理学部 小谷賢教授
「モサドは情報収集によって、どの会社・メーカー・機器がヒズボラに納入されるか情報をつかんでいるわけですね。その情報をつかんだ時点でモサドの今回の作戦が動き出したのだと。今回、日本製のトランシーバーに仕込まれていたということで、おそらくは流通段階で爆薬が仕込まれた可能性が高くなった。おそらくレバノンの仲介業者、もしくは問屋のようなところに卸された時点で、おそらくモサドの息のかかった業者がそれを取り扱ったために中に爆薬を仕込むことができたと考えております」
一方のヒズボラは18日、イスラエル北部に攻撃。さらなる戦闘の激化が懸念されます。