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【解説】広がるロシアへの圧力 専門家「デフォルトほぼ確実」でも“想定内” 焦点は?

2022年3月9日 20:00

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する制裁がさらに強まりました。アメリカのバイデン大統領は、ロシア産の原油などの全面的な禁輸に踏み切りました。プーチン大統領を止めるほどのインパクトがあるのか、詳しくお伝えします。

■アメリカがロシア産の原油など全面禁輸に

アメリカのバイデン政権は8日、ロシア産の原油、天然ガス、石炭などの輸入を全面的に禁止するという追加制裁を発表しました。バイデン大統領は演説で「ロシア経済の大動脈を標的にする」と制裁の意義を説明しました。

この発表を受けて、ウクライナのゼレンスキー大統領が感謝の意思を表す動画をアップしました。

ウクライナ・ゼレンスキー大統領
「きょうはとても重要なニュースがありました。アメリカは侵略者を弱体化させ、侵略の代償を払わせる一歩を踏み出しました」

一方で、厳しい制裁は、制裁する側の国にも大きなダメージがあります。原油禁輸を発表したバイデン大統領は「プーチンの戦争は、すでにアメリカの一般家庭にも打撃を与えている」と述べています。

アメリカでは8日、レギュラーガソリンの平均価格が14年ぶりの過去最高値を更新しました。

全米自動車協会によりますと、8日の全米のレギュラーガソリンの平均価格は1ガロンあたり、4ドル17セントでした。日本円にすると約480円となり、過去最高値を更新しました。これまでの最高値は、2008年7月の4ドル11セントでした。この時はリーマンショックの直前で、世界的な金融危機により高騰していました。

今回はその時と同じくらい急激に上昇しています。ロシアからの原油「全面禁輸」を受けて、高騰は続くとみられます。アメリカのガソリンスタンドでドライバーに話を聞くと、「車は毎日使うものなのに、ばかげた値段だ。勘弁してほしい」といった声や、「ウクライナ侵攻の問題が解決するまで続くのだろう。とても深刻だ」という嘆きの声が聞かれました。

■アメリカとヨーロッパ 制裁で足並みそろわず

アメリカは禁輸という強い措置を打ち出しましたが、ヨーロッパとは必ずしも足並みはそろっていません。

イギリスはロシア産の原油などの輸入を今後、段階的に減らし、今年末までに停止すると発表しました。ドイツは「ロシアの代わりはすぐには見つからない」と、大幅な輸入制限には慎重な立場です。というのも、アメリカがロシアから輸入している原油の割合は約1%なのに対して、ヨーロッパは約30%をロシアに依存しているからです。

今回、アメリカが全面的にエネルギーの禁輸をした段階では、ロシアへのダメージはどれくらいあるのでしょうか。国際経済に詳しい経済評論家の加谷珪一さんによると、「現時点でヨーロッパが禁輸に踏み込んでいない。きょう、あす影響があるかというと、おそらくほとんど影響がない」ということです。

■企業も続々撤退…多くの分野に広がるロシアへの圧力

ロシアへの圧力はエネルギー分野だけでなく、多くの分野に広がっています。まず非常に大きいとされているのが、国際的な決済システム「SWIFT(=国際銀行間通信協会)」からの除外です。これにより、ロシア国内の大手銀行や企業はアメリカ、EU、イギリス、日本などとのお金のやり取りが非常に難しくなります。

こうした動きを受ける形で、欧米や日本の企業も、続々とロシアからの撤退や事業停止を発表しています。

クレジットカードでは、世界的大手のビザ、マスターカード、日本のJCBが事業停止を発表しています。

飲食では、マクドナルドが全店舗の一時閉鎖。スターバックスやコカ・コーラも事業停止を発表しています。

アパレルでは、ルイ・ヴィトンやグッチを手がける企業、シャネルも事業停止を発表しています。

日本の任天堂も、ロシア国内のオンラインストアを停止しています。

■ルーブル暴落もロシアにとってデフォルトは「想定内」

これまでの様々な経済制裁により、ロシアの通貨であるルーブルの価値は急激に暴落しています。侵攻前の先月には、1ルーブルが1.5円ほどでしたが、今月7日には一気に0.8円ほどに急落しました。価値がほぼ半減してしまいました。

こうした通貨の暴落や経済制裁の強化などを受けて、日銀の黒田総裁は8日、国会で、ロシアが国として借金を返せなくなる国債のデフォルト(=債務不履行)についても「絶対にないとも言い切れない」と述べました。

経済評論家の加谷さんは、ロシアがデフォルトに陥るのは「ほぼ確実」とみています。ただ、それでもロシアにとっては想定内の動きだといいます。

なぜなら、ロシアにとっての命綱である天然ガスや原油をどこかに買ってもらえるうちは、ユーロなどの外貨が稼げます。その外貨でモノを買えば、当面はしのぐことができます。つまり、貿易が全面的にストップしない限りロシアは生き残れるということで、経済制裁は現状では大きな打撃にはならないとみられています。

今後ポイントになるのは「ヨーロッパが制裁に加わるか」と、もう1つのキープレーヤーである「中国」がどう動くかです。中国はロシアにとって最大の取引相手です。その中国とヨーロッパが制裁に加われば、万事休すとなります。ロシア経済を完全に崩壊させるくらいのインパクトがあるとみられています。

ロシアへの制裁で大きな打撃を受けるドイツなどヨーロッパ諸国は今のところ、制裁には慎重な態度です。プーチン大統領に軍事侵攻を思いとどまらせる程の強いプレッシャーを与えられるかどうかは、各国がいかに一丸となれるかにかかっているようです。

(3月9日午後4時30分ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)

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