【解説】トランプ氏、2度目の“暗殺未遂”か 大統領選挙への影響は?
アメリカのトランプ前大統領が15日、ゴルフをしていた際、シークレットサービスが銃を構えていた男を発見し、発砲しました。トランプ氏は無事で、FBI(=連邦捜査局)は暗殺未遂事件の可能性もあるとみて捜査しています。
日本テレビ国際部デスクの近野宏明解説委員が解説します。
近野宏明解説委員
「15日にトランプ前大統領がゴルフをしていた際、先回りしていたシークレットサービスが、ゴルフ場のフェンスの外側から自動小銃を構えていた男を発見しました。複数の捜査官が少なくとも4発発砲、男は現場から逃走しましたが、その後、拘束されました。アメリカメディアはこの男をライアン・ラウス容疑者(58)だと報じていますが、まだ公式の発表はありません」
「動機についてもまだ詳しいことはわかっていませんが、アメリカメディアによると、『ライアン・ラウス』名義のSNSをみると、過去にトランプ氏を批判する投稿をしたり、『ウクライナで戦って死にたい』という希望を表明したり、そういう投稿もあったということです」
近野解説委員
「現場は、フロリダ州のウェストパームビーチにあるトランプ氏自身が所有するゴルフ場です。まわりには建物がいっぱいあり、市街地の一画にあります。トランプ氏の邸宅からの距離が6キロほどで、トランプ氏にとってはいわば庭のような場所です。ここでは各国の首脳とプレーするなど、過去には外交の舞台にもなってきた場所です」
斎藤佑樹キャスター
「世界のVIPが集まる場所ですけれども、ゴルフ場でプレーしている人に対して銃で狙えるものですか?」
近野解説委員
「実際に狙える可能性があります。2018年にラウンド中のトランプ氏と安倍元首相の姿をNNNのカメラがとらえました。当時、2人は現職の大統領と首相ということで、映像はまったく同じゴルフ場で敷地の外側の公道から撮影していました。茂みや木立はありますが、プレーの様子が外からうかがえるほど容易に近づくことができ、まわりが平たんで見通しがいいので映像を撮ることができました。裏を返せば、警備上危険な場所であるともいえます」
近野解説委員
「位置関係を改めてみていきます。アメリカメディアによるとトランプ氏は当時、敷地の端の方にある5番ホールと6番ホールの間のあたりにいたということです。ゴルフ場のコースのレイアウトはウェブサイトでも公開されていますし、経験者であれば、スタートから何ホール目にどれくらいの時間でたどり着くかだいたい見当がつきます。空間的にも時間的にも『行動が予想しやすい場所』ともいえます」
近野解説委員
「トランプ氏と容疑者の距離は、約360メートルから460メートル離れていた。容疑者がいた場所からは自動小銃『AK-47』とリュック2つ、小型カメラが押収されています。押収された『AK-47』は非常に有名で、“人類史上最も人を殺した武器”ともいわれるほど、古くから広く出回っています。明海大学の小谷哲男教授によると、この銃は耐久性・携帯性が極めて高く、射程が約350メートルということですから、トランプ氏を狙ったとすればギリギリの距離。ひとつ間違えば、またトランプ氏が命の危険にさらされた可能性もあるというわけです」
鈴江奈々キャスター
「今回はシークレットサービスが対応したので事なきを得ましたけれども、大統領選挙への影響は出てくるのでしょうか?」
近野解説委員
「動機がまだよくわからず、公式の発表もまだないということもあって、まだ正直わかりませんが、今回の事件を受けてバイデン大統領は早速、『トランプ前大統領の安全を確保するため、シークレットサービスに必要な措置を確実にするよう指示した』と述べました。ハリス副大統領も『彼が無事で良かった。アメリカで暴力は容認できない』と、2人とも即座にコメントを出しています。これは事件が民主党政権への批判につながらないように予防線も張った形です」
「明海大学の小谷教授も『現段階では大きな影響はないだろう』としていますが、これまで事件の背景について詳しい発表がありませんので、容疑者の供述次第で影響があるかもしれないと分析しています」
「今のアメリカ社会の分断は非常に深いです。投票日に向けてこれがますます深まることも予想されますので、この先またこういう今回のような事態が起きないことを願うばかりです」