“米ウクライナ停戦案”ロシアを不意打ち…プーチン大統領はジレンマも

■狂った狙い…不意打ちだった“米ウ停戦案”
アメリカとウクライナは今月11日の共同声明で、和平プロセスを始める決意を示した。ウクライナは、アメリカが提案したロシアとの暫定的な30日間の停戦案を受け入れる用意があると表明。アメリカとウクライナが歩調を合わせたことは、プーチン大統領にとっては面白くない状況だ。
ロシアの独立系メディアは12日、米ウの停戦案は、ロシアにとっては驚きだったと伝えた。大統領府に近い関係者は「こうした提案は、事前の議論があるだろうと期待していた」と話したという。両国の共同声明はロシアにとっては不意打ちであり、対応に苦慮することになりそうだ。ウクライナを外し、アメリカとの二国間交渉で決着をつけるというロシア側の狙いが狂ったとみられる。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は12日、停戦案について問われると「先走りたくない」と述べ、直接的な評価を避けた。その上で、今後のアメリカとの協議で説明を受ける必要があると述べるに留めた。
■今後のロシアの出方は? 停戦に応じる動機なく…
今後の焦点は、米ウの停戦案に対するロシア側の出方に移る。アメリカのブルームバーグ通信は12日、プーチン大統領が自国の要求を押し通すために、合意の先延ばしを図るとの見方を報じた。またロシアの独立系メディアも「停戦に賛成する姿勢を見せながら、ウクライナにとっては不可能な条件を突きつけるだろう」との声を伝えている。
ロシア軍は西部クルスク州でウクライナ軍の掃討作戦を進めていて、完全な奪還も目前の状況だ。ウクライナ東部や南部でも攻勢を強めていて、戦況は圧倒的に有利――プーチン大統領としては、譲歩してまで停戦に応じる動機はなく、強気な立場で交渉に臨むとみられる。
またプーチン大統領はもともと、今回の米ウ停戦案のような“短期の停戦”には否定的な立場を繰り返し述べている。去年6月には停戦交渉入りの条件として、ロシアが一方的に併合を宣言した4州からのウクライナ軍の撤退や、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構への加盟計画を放棄することなどを求めた。こうした姿勢は変わっておらず、今後の停戦交渉でも最大限の見返りを求めるはずだ。
プーチン大統領は今後、トランプ氏から停戦案受け入れをめぐり、プレッシャーを受ける立場となる。しかもアメリカとウクライナは足並みをそろえてロシアに停戦を求めた。
こうした中、ロイター通信は12日、ロシアがアメリカに対し、停戦のための要求リストを提示したと報道。詳細は不明だが、プーチン大統領としては、相応の見返りが得られない場合はトランプ氏の停戦要求を受け入れることは難しい。ただし交渉が難航したり時間がかかったりすればトランプ氏の不満の矛先が自分に向きかねず、その条件次第では、ジレンマに陥る可能性もある。
プーチン大統領がこれまでの姿勢を変えて、短期の停戦に応じるのか。アメリカとの直接協議で、トランプ氏を抱き込み、自国のペースに引き戻すのか。先行きは見通せない状況だ。