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【独自取材】「人身売買化している」難病指定患者を紹介で100万円?悪質な老人ホーム“紹介ビジネス”が横行!その実態とは―?

2025年3月13日 8:00
【独自取材】「人身売買化している」難病指定患者を紹介で100万円?悪質な老人ホーム“紹介ビジネス”が横行!その実態とは―?
悪質な老人ホーム紹介ビジネス

 今、老人ホームを巡り、悪質な“紹介ビジネス”が横行しているといいます。“老人ホームの紹介ビジネス”とは一体どんなものなのか?さらにある施設では訪問看護で約28億円の不正請求も…。高齢者福祉に詳しい東洋大学・高野龍昭教授の解説です。

■「難病指定だと100万円」「●●万円以下の紹介手数料の施設とは契約しない」悪質な老人ホーム紹介ビジネスの実態とは―?

 団塊の世代の方が全員75歳以上になり、約5人に1人が後期高齢者となった今、現役世代2人が1人の高齢者を支えている社会になっています。

 そんな中、老人ホームに入居するにあたり、高額な料金が飛び交う“紹介ビジネス”が増えているといいます。

 介護業界に配られている老人ホームのチラシ(取材に基づいて作成)を見てみると、『●●老人ホーム、オープニングキャンペーン。難病指定の人を紹介したら100万円』と書かれていて、別のチラシにも『難病指定だと100万円』などと、高額紹介料を提示しています。

 これは老人ホーム側が紹介業者に対して配っているチラシだということですが、“難病など重度の介護が必要な入居者”を紹介してくれれば、『紹介料100万円』を支払うというものです。

 これに対し東洋大学・高野龍昭教授は「要介護度の重い人や難病の人に、より高額な紹介料を設定。人身売買化している。倫理的問題」だと指摘しています。

 老人ホームに入居する際、直接、老人ホームに問い合わせる以外にも方法があり、『ケアマネジャー』や『病院に相談』、そして『紹介業者に相談』するというものがあります。この紹介業者とは、入居希望者と空室のある介護施設をマッチングする業者で、施設が増えるとこの紹介業者の需要も増えていきます。

(高野教授)
「相談する人がすごく数が増えてきているので、ケアマネージャーや病院でも十分な対応ができず、ましてや行政も対応ができないという中で、紹介業者が出てきました。自分に合った老人ホームがどの種別の老人ホームなのかということも今、分かりにくくなっていて、そういう意味で紹介業者は、とても社会的に重要な役割です」

 そして紹介業者がどのように仲介していくのかというと、希望者はまず紹介業者に相談をして、マッチする老人ホームを紹介してもらいます。すると老人ホームから紹介業者にお金が支払われることになっています。場合によってはそれが100万円を超えるものもありますが、平均は21.5万円だといいます。

 ではなぜ重度の要介護者の入居が求められているのでしょうか。利用者に難病があるかどうかで紹介料が変わる理由が、診療報酬(事業者が受けられる報酬)です。原則は訪問看護、週3回までで、週3回の場合は1人当たり月9万円の報酬を事業者が受けられるといいます。ただ、“難病など特定の疾病がある利用者”の場合は、訪問看護、週4回以上が可能です。高野教授の試算によると、仮に1日4回の場合は、1人当たり月100万円、またそれ以上となってきます。

(高野教授)
「難病であっても、1日4回訪問看護が必要な人ばかりかというと、決してそんなことはないんです。これは医療保険の話ですが、医療保険も必要に応じて利用するというのが基本ですが、いわば過剰に医療を提供する、過剰に看護師さんを訪問させることで、収入を上げやすい仕組みが難病患者には逆に整ってしまっているので、そこにつけ込んだ脱法的な行為で、診療報酬をより多く稼ぐ。その金額がひと月当たり100万円超えるケースも今は普通です」

 老人ホームなどの医療・介護サービスを提供している場合の施設の収入は、月の利用料に加えて介護報酬・診療報酬などで、難病などの利用者の方が多いほど、介護報酬や診療報酬などがどんどん積み重なってくるということになります。

Q.厚労省のホームページによると、1か月に利用できる介護報酬の限度額が決まっていて、要介護5の方は36万2170円ですが、いわゆる“難病患者”は、この中には入らないということですか?

(高野教授)
「難病の人は、この範囲だと十分にケアが提供できないということで、制度上、医療保険を使う。医療保険になると、いわば“上限なし”になってしまうので、医療保険を使わなくても十分な人もいるけれども、そうじゃない人にも『うちの高齢者向け住まいに入ったら1日4~5回訪問看護を使いましょう』として、法律の抜け道を使って、収益を上げているところがある」

Q.医療保険を使うということは、原資は国民の税金ですよね?
(高野教授)
「皆さんが払っている保険料と税金です。普通の医療費は掛かったら掛かっただけ自己負担も上がるじゃないですか。ところが難病の人というのは、医療費がより多くかからないように、所得に応じてひと月当たりの限度額って決まっている。例えば月1万5000円とか。だからそれ以上使っても、自己負担に跳ね返らないから、そこに事業者もある意味、つけ込んで、いっぱい訪問看護を受けられる」

 前提として、紹介ビジネス自体は悪いことではないですが、中には悪質な業者もいるということです。紹介を受けた入居者や関係者からはこんな声も―。

(入居者)
「自宅から近い施設を見学したいと伝えたら、『その施設は紹介できません』と、家から遠い施設ばかり提案された」

(入居者)
「紹介会社から『満室』と言われた施設に直接問い合わせると、『空室』だった」

(施設関係者)
「『うちは●●万円以下の紹介手数料の施設とは契約しない』と言われた」

(病院関係者)
「希望条件や身体状況が違う入居者を相談するが、いつも同じ施設を提案してくる業者がいた」

■訪問看護で約28億円の不正請求…その手口とは?「介護保険や医療保険で稼いでやろうと…結局は保険料や税金に跳ね返ってくる」

 そんな中で、約28億円の不正請求した老人ホームがありました。パーキンソン病専門の有料老人ホームなどを運営する『サンウェルズ』。本社は金沢市にあり、北海道から熊本まで14都道府県で老人ホームPDハウスを展開していますが、2025年2月7日に、訪問看護による約28億円の不正請求を発表しました。

 その手口は、『数十秒から数分の訪問』や、『遠隔での状態確認』だけだったにも関わらず、『30分訪問』と記録をしていました。そして人数も、『看護師1人の訪問』だったところ、『複数人の訪問』と記録をしていたといいます。

 この会社の経営戦略で、ノルマのようなものがあり、入居者1人当たりの診療報酬の合格ラインは『1か月81万円』だったといいます。

(高野教授)
「基本的に医療とか介護の世界って、制度は事業者側・専門職側の性善説で成り立っているんです。だからこういうことが起こると、すぐに“行政がもっとしっかりチェックしないと”というになるんですが、行政がチェックするとなると、行政コストや公務員の人手がすごくかかるため、中々手が及ばないんです」

 そして国会でも問題視されていて、維新の梅村聡議員は「もっと介護保険や医療保険を使って稼いでやろうと…結局は保険料や税金に跳ね返ってくる」と話しています。

 また、高野教授も「高額な紹介料の原資が国民の保険料や税金を脱法的に得たものであれば悪質」だとしています。

 高野教授による今後の対策ですが「まずは適正な業務のガイドライン(紹介料の設定を含む)の設定と公開。老人ホーム紹介業者に対し、“営業の届け出・許認可の義務付け”」とし、さらに「『すぐに紹介できる』は警戒を!焦らず2~3社に相談して比較」とのことです。

(高野教授)
「入居の際は焦っていると思いますが、2~3社に話を聞くことです。ただこういう規制を仮に行政が先にやるとなると、良い業者も悪い業者も一緒にした規制をせざるを得なくなって、良い業者が逆に上手く仕事ができなくなってしまう」

 紹介業者の実績がちゃんと見える透明性の確保が大事だといいます。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年3月5日放送)

最終更新日:2025年3月13日 8:00
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