ロシア軍による“市長の拉致”相次ぐ “生物兵器”めぐる新たな動きも
11日、ウクライナ南東部メリトポリで撮影された映像に、市長とみられる男性がロシア軍に拉致される瞬間が映っていました。一方、専門家は、ロシアがこう着状態を打破するための次の手として「化学兵器、生物兵器」を使うかもしれないとしています。
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ロシア軍に、これまでにない新たな動きが出てきています。
11日、南東部メリトポリで撮影された映像には、市長とみられる男性がロシア軍に拉致される瞬間が映っていました。周囲には、銃をかまえた兵士の姿もありました。
ロシア軍による“市長の拉致”についてウクライナのゼレンスキー大統領は――
ウクライナ・ゼレンスキー大統領
「こういう行動は、侵略者が弱ってきている兆候だ。ロシアは“テロの新段階”に進んだ」
抗議のデモを行った市民は約2000人に上りました。地元メディアによると、メリトポリでは、市長を拉致したロシア軍によって、すでに新しい市長が任命されたということです。
さらに、ウクライナ・クレバ外相は13日、南部ドニプロルドネ市の市長もロシア軍に拉致されたと発表しました。
ロシアの新たな動きは他にも――
ウクライナ・クレバ外相
「ロシアは今、必死になってヘルソンで、偽の『人民共和国』のための偽の『住民投票』をやろうとしています」
クレバ外相によると、南部の都市ヘルソンでロシアが住民投票を準備しているというのです。ヘルソンは、ロシア軍が最初に制圧を発表した主要都市です。ロイター通信によると、14日時点でも、市民による抗議デモが続けられています。
ロシアによる“政治的侵略”ともいえる行為について、専門家は――
防衛研究所 高橋杉雄室長
「戦闘のフェーズから、占領した市街を支配していく占領行政のフェーズに変わってきたんだと思います。元々のウクライナ政府の市長では都合が悪いので、交代させるために拉致した。住民投票という形で、ロシア側が実は住民に歓迎されているのだと、情報操作に近いものを行うのが大きな意図だと思います」
住民投票は、ロシアが2014年にクリミアを併合した際にも行われています。
防衛研究所 高橋杉雄室長
「焦りはあると思う。歓迎されると思って行った占領作戦が、反戦デモ、 反ロシアデモが全く止まらない。強権的に主張を変えていく、世論形成をはかっていく」
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“生物兵器”をめぐる新たな動きもあります。11日、ロシアからの要請で開かれた国連安全保障理事会の緊急会合で、ロシアの国連大使が主張したのは「ウクライナの生物兵器活動」についてです。
ロシア・ネベンジャ国連大使
「ウクライナ国内に少なくとも30の生物実験室があり、ペストや炭疽(たんそ)菌などの病原性を強化することを目的とした、危険な研究が行われている」
これに対し各国からは非難が相次ぎました。
防衛研究所 高橋杉雄室長
「仮にロシアが生物兵器なり、化学兵器なりを使う時に、使わなければならないと考えた時に、ウクライナが先に準備をしていたんだと、プロパガンダ(宣伝文句)を行うための下準備」
「ロシア側として計画通りでなかったことが、キエフの包囲ができなかったこと。こう着状態を打破するための、次の手をおそらくロシアは考えていて、その次の手として考えられるのが、化学兵器・生物兵器」
(3月14日放送『news zero』より)