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石破氏提唱の“アジア版NATO”に海外から冷たい目 日米関係への悪影響、懸念も

2024年10月5日 0:50
石破氏提唱の“アジア版NATO”に海外から冷たい目 日米関係への悪影響、懸念も

■“アジア版NATO”

石破氏が提唱する“アジア版NATO”が波紋を広げている。先月25日、石破氏はアメリカのシンクタンク・ハドソン研究所に「日本の外交政策の将来」と題する論文を寄稿。この中で石破氏は、アジアにはNATOのような集団的自衛体制がないため「戦争が勃発しやすい状態にある」とし、「この状況で中国を西側同盟国が抑止するためには、アジア版NATOの創設が不可欠」だと主張した。

冷戦下の1949年、旧ソ連から西側諸国を守るために設立されたNATO(北大西洋条約機構)。現在はアメリカやイギリス、ドイツやトルコなど32か国が加盟し、いずれかの国が武力攻撃を受けた場合、NATO全加盟国への攻撃と見なし、共同で反撃を行う「集団的自衛権」を規定している。

この“アジア版”の創設を石破氏は提唱しているのだ。寄稿文の中で石破氏は、北朝鮮や中国の核開発により、インド太平洋地域でアメリカの"拡大抑止"は「機能しなくなっている」とし、それを補うのがアジア版NATOだと主張。また対等な日米同盟を目指し、在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の改定についても提案。アメリカの核のシェア(共有)や、核の持ち込みも検討せねばならないとした。

■アメリカ、インドも…

“アジア版NATO”について、海外の反応は冷ややかだ。アメリカ国務省のクリテンブリンク国務次官補は「時期尚早」と述べ否定。ワシントン・ポストは「ワシントンでは懐疑的な見方が多い」と報じた。インドのジャイシャンカル外相も1日、「我々はそのような戦略的な枠組みは考えていない」と支持しない考えを表明。「我々には異なる歴史があり、異なるアプローチの方法がある」と述べた。

■専門家は

アメリカのシンクタンク・CNASのリチャード・フォンテインCEOは“アジア版NATO”について、「インド太平洋の将来の安全保障について、広範に考えることは歓迎すべきことであり、非常に長い目で見れば可能性はあるかもしれない」としつつも、「短期的には不可能」と断言する。「この地域で、アメリカは日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイと同盟を結んでいるが、いずれの国も互いに同盟を結んでいない。日本と韓国の間には、おそらく永遠に消え去らないであろう歴史的な緊張関係があるし、インドは他のどの国とも同盟しておらず、同盟を望んでもいない」と解説する。

明海大学の小谷哲男教授は、石破氏の論文を「暴論だ」と一蹴。「アメリカの核の傘は機能しないと言っており、その発言こそが抑止の信頼性を低下させる」と指摘。「今後、拡大抑止の認識についてアメリカ側とのすり合わせを強化する必要がある」と警鐘を鳴らす。

また東京大学の佐橋亮准教授は、「石破氏がこれまで広げたアイディアを、今後どうやって回収・撤収するのか問われる」と述べた。

防衛関係者からは「理想を振りかざす書生論でしかない」「戦略や道筋が見えず、日米や日中関係に悪影響を与えるだけ」との声もあがる一方、外交関係者からは「あくまで思想の表明で、現実の外交はこれからだろう」との声も聞かれる。

ロイター通信には「自民党内でトラブルメーカーとして知られる」と紹介された石破氏。首相となり向き合う“現実の外交”に、どう対処するのだろうか。
(国際部デスク・原聡子)

最終更新日:2024年10月5日 10:45