石破首相が初の所信表明演説 “カラー封印”なぜ? 野党は反発「納得と共感」は
石破首相が初の所信表明演説を行いました。どのような評価だったのか、日本テレビ政治部官邸キャップの平本典昭記者が次の3つの疑問から解説します。
(1)石破演説に現場の反応は?
(2)なぜ?「石破カラー」封印
(3)野党は反発「納得と共感」
歴代首相の所信表明を聞いてきましたが、衆議院の議場は「熱狂がなく静寂に包まれていた」という印象でした。演説終了後、与野党の議員に取材をしたところ、口をそろえて言っていたのが「拍手が少なかったね」という言葉でした。
所信表明演説は、首相が取り組みたいことを訴えるものです。拍手の数を数えてみました。拍手というのは、演説への賛同の意思表示です。その回数は5回程度で、これまでより少ない印象です。自民党の席からは、次の選挙を戦うリーダーを迎えた「高揚感」はなかったと思います。
それに比べて野党側のヤジは盛況でした。総裁選で主張したことを一部、方針転換していることに対して「ルールを守れ」「ウソつき」などという大きなヤジが飛んでいました。
ある自民党幹部は「拍手しづらいけどヤジりやすい演説だったな」と揶揄していました。
「石破カラー」は封印された演説だったと言えると思います。「石破カラー」とは、例えば総裁選で訴えていたのは、アジア地域の新たな安全保障の枠組み「アジア版NATO」や、日本にいるアメリカ軍の地位を定めた「日米地位協定の改定」や、「選択的夫婦別姓」といったものがあります。こうしたエッジのきいた政策は演説に入りませんでした。
こうしたことをもって「石破カラーは封印された」と言われています。
ただ、石破首相がこだわった部分もあったようです。その1つが「最低賃金1500円」の実現です。今の政府目標を前倒しして2020年代に実現するとしています。
実は、この政策は地方の中小企業は負担が重く反対する声が根強いです。政府関係者は「選挙にマイナスだから自民党内からは反発があったが、石破首相がこだわって入れた」と明かしています。この他、地方創生、防災省のテーマなどはこだわった部分と言えます。
「石破カラー」を封印した理由は、党内の反発を恐れたというのが強いと思います。その理由について、石破首相自身は周辺に「自民党の理解を得られていることからまずは話す」と説明しています。
ただ、こういった姿勢にも党内からは「総裁選で勝ったのだから、自分がやりたい政策を思い切り打ち出すべきだ」「反対があっても正論を言うのが石破さんだったのに、良さがなくなってしまった」という声が出ています。
ある野党の幹部は、「納得と共感内閣」という石破首相の言葉について「所信表明を聞いた後は、『失望と不信感』しかない」と話しています。
立憲民主党 野田代表「近代まれに見るスカスカの所信表明じゃないですか。総裁選挙のときには極めて具体的に熱っぽく語っていたことが、全然入ってないんですよ」
日本維新の会 馬場代表「以前おっしゃっていたことは、全てお蔵入りしてしまっています。国民側の考え方にもとづいた発言が全て封印されてしまった」
野党側はこの所信表明に対する代表質問、そして党首討論で攻勢を強めていきます。
ある立憲幹部は、「裏金議員の公認問題でも攻めどころは満載だ」と述べています。
石破首相は超短期決戦の選挙にむけて、有権者に「国会の議論で判断材料をしっかり示す」と言ってきました。その説明が「共感」できるか「不信感」に繋がるのか、石破首相は自身の思いを封印せずに説明してほしいです。