「伊勢丹」に「モスバーガー」日本企業“中国撤退”の背景は? 「現地化」と「品質管理」で勝負するコンビニも
中国では先月、上海で27年営業を続けた伊勢丹が閉店しました。さらにモスバーガーも中国から撤退したことが分かりました。中国で閉店に追い込まれる日本の小売店。背景には一体何があるのでしょうか?
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中国・北京。いま、急成長を遂げているスーパーがありました。
柳沢高志記者(NNN北京)
「売り場の天井にはレーン、袋が次々と流れていきます」
中国IT大手・アリババ傘下のスーパー。豊富な生鮮品を取り揃え、3キロ圏内の距離であれば、牛乳1本でも30分以内に配達するのを売りにしています。
店内には、複数の袋を抱えて、売り場を駆け回る店員たちの姿が。次々に入るネット注文を受け、商品をバーコードで確認し、袋に詰めていきます。
袋は店内のレーンで流され、その後、外で待ち受ける配達担当へと渡ります。
記者も北京市内の自宅で注文してみると…約30分後。
記者
「あ、届きました」
配達に来たのは、何とロボット。ネット通販の普及を受け、配達ロボットを設置するマンションも増えています。
中国で急速に普及したネット通販。その勢いに押され、上海では6月30日、27年にわたって営業を続けてきた「伊勢丹」が閉店。さらに、モスバーガーも先月末で、中国から撤退しました。
客が足を運ぶ従来型の小売店が苦境に立たされる中、先週、コンビニ大手のローソンが、山東省の観光地にオープンしたのはコンテナ型の店舗。集客の為、現地の若者に人気の屋台風にしたのです。
中国の外資系コンビニでは、最多の6300店舗を構えるローソン。他の外国企業が苦戦を強いられる中、年1000店以上のペースで出店し、約2年後には1万店舗にまで増やす戦略です。
その柱は、徹底的に現地に合わせること─。
この日、北京の事務所で開かれていたのは、新商品の開発会議。提案するのは、中国人社員です。
中国人社員
「商品の提案をします。日本の主食であるトンカツと天ぷらの組み合わせです」
提案した新たな弁当は、トンカツと、エビの天ぷらを丼にした、ボリューム満点の1品です。
北京ローソン 阪下総責任者
「こんな弁当、日本人は絶対に作らないので。だからある意味、とんがっていて面白いのだけど」
北京ローソン 岩崎商品本部長
「日本人は発想しない」
毎週行われる開発会議では、中国人スタッフが、30点近い新しいアイデアを提案しています。
北京ローソン 阪下総責任者
「その町に住んでいる人たちの生活習慣と経済レベルを含めた中で、この値段設定だったらいいだろう、その代わりこの味付けだったら売れないよねと、その組み合わせのミックス部分が、日本人にはなかなか判断付きにくい」
部長級の幹部もほぼ全員、中国人を登用するなど、徹底した現地化を図っています。
一方で、日本のスタイルを守る点も。
工場従業員
「並んで!」
1時間に1回必ず行われるチェック。1列に並び、粘着ローラーで作業着についた埃などを取り除きます。
中国企業では行わない日本基準の衛生管理。消費者の信頼を獲得する戦略です。
北京ローソン 岩崎商品本部長
「日本ローソンのクオリティーを、中国ローソンで実行して定着させる」
急変する中国市場。生き残るのはどんなスタイルなのでしょうか?