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アフリカ急発展!リープ・フロッグ現象とは

2021年7月14日 22:21

近年、アフリカでは水や電気すら届かない場所でスマホを操り、電子決済をする人々が増えている。開発途上国で最先端の技術が普及する背景には、「リープ・フロッグ」とよばれる現象が。なぜアフリカなのか?その背景にあるものとは?(国際部・嶋太朗)

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鉄筋の建物やガラス張りのビルが立ち並び、当たり前のようにスマホで決済する。欧米ではなく、アフリカ・ナイジェリアの話だ。

実は今、アフリカではナイジェリアを始め多くの国が急速に発展を遂げる「リープ・フロッグ現象」が起きている。

「リープ」は飛ぶ「フロッグ」はカエルの意味で、ある国がまるでカエルが飛ぶように一気に発展を遂げることを「リープ・フロッグ現象」という。

■「リープ・フロッグ型」の発展とは

これまでの典型的な発展のプロセスは、まず、水道や電気など最低限の生活を送るためのいわゆる「衣食住」が整備され、次に鉄道や道路などのインフラが整備される。これにより、ヒトやモノの往来が増え、経済が活性化される。

その上で、情報や通信網などより便利で快適な生活を送るための基盤が整備され、携帯電話なども登場する。

このように順を追って、段階的に発展していく従来の発展プロセスと比べ、「リープ・フロッグ現象」は先進国で使用されている最先端テクノロジーを利用し、段階を飛び越えて一足飛びに発展するのが特徴だ。日本などが数十年かけたプロセスを、数年で達成するイメージだ。

■サバンナでもスマホ!?

一例がスマホの急速な普及だ。固定電話の回線を国の隅々まで整備するよりも、スマホをつなぐ基地局を作る方が低コストで済む。その結果、各地に基地局ができてどこにいてもスマホがつながるようになった。固定電話すらなかった地域に一気にスマホが普及したのだ。

さらに、スマホの普及で発展したのがモバイルマネーシステムだ。ケニアでは住所を証明する公的な書類を持っていない人が多く、人口の約7割が銀行口座を所有していない。しかし、「M-PESA」というモバイルマネーサービスの登場で状況は一変した。

■デジタルがインフラ整備を後押し

スマホに通話料をチャージし、ショートメッセージ機能を使って送金できるほか、決済や預金、ローンを組むことも可能で、銀行のあらゆる機能を集約したサービスだ。

また、このM-PESAはリープ・フロッグ現象で「飛び越されてしまった」部分の発展にも一役買っている。M-PESAの「納税」機能だ。

ケニアの成人の96パーセントがこのシステムを使用し始めたことから税金の徴収率が向上し、結果としてインフラ整備が進んだという事例もある。

■なぜ“アフリカ”なのか?

「リープ・フロッグ現象」がアフリカを中心に起きている要因はいくつかある。

一つはアフリカの多くの国が開発途上だからこそ、既存のインフラや既得権益者が少なく、その分、先端技術が素早く浸透しやすい土壌があることだ。

また、成長著しいケニアやナイジェリア、南アフリカ共和国などはいずれも公用語が「英語」で、一般国民が最先端の情報を入手しやすいという利点もある。

■さらに“発展”のカギは?

今後、さらに発展を遂げるための条件とは何か。

アフリカへの企業進出の支援やコンサルを行うAAIC代表の椿進氏によると、「リープ・フロッグ現象」がうまくいくかどうかは、海外からの投資を受け入れるための制度が整っているか、指導者がその柔軟性を持ち合わせているか、などによって変わってくるという。

つまり、「その国の政治体制や指導者の資質」が今後の発展のカギを握っているといえそうだ。