“バブル崩壊”か? 不動産大手で相次ぐ経営危機 マンションは建設途中で工事中断 中国
中国経済をけん引してきた不動産業界に暗雲が立ちこめています。各地でマンションなどの建設が相次いで中断しています。さらに、去年、不動産業界で売上額トップだった会社が債務不履行に陥る可能性を指摘されるなど、不動産大手が経営危機を迎えています。
◇
今、中国で見られるのが、「1部屋買うともう1部屋おまけします! おまけは温泉リゾート!」といった、なんとも「気前のいい」マンションの宣伝です。
中国メディアの報道
「(河南省の不動産業者では)ニンニクで住宅購入の資金が支払えます」
不動産市場では、ニンニクなどの農作物を住宅の購入資金にあてられるなどの“うたい文句”もみられます。
しかし、中国・江蘇省にある不動産の最大手・碧桂園が建設するマンションは、年末にも引き渡される予定にもかかわらず、工期が遅れているのか、外壁なども施されていない状況でした。建設が中断したものもあり、給料が数か月間、支払われていないと訴える労働者もいました。
去年、不動産業界で売上額トップを誇った碧桂園ですが、8月30日に発表した上半期の決算では、赤字額が日本円で約9800億円となったことが明らかになっています。今週に支払期限をむかえるドル建て債の利息を支払えなければ債務不履行の可能性があり、経営が危ぶまれています。
経営危機は碧桂園だけではなく、8月には不動産大手の恒大集団がアメリカの裁判所に破産法の適用を申請しました。その負債額は6月末の時点で48兆円にのぼっています。
その恒大集団のリゾート開発地では、資金難から建設途中でそのまま放置されていました。遊園地や商業施設のほか、高層マンションも併設し開発が進められていましたが、一部の建設はすでに別の業者に引き継がれたといいます。
◇
多くのマンションが建てられ、バブルにわいていた不動産業界に何が起きているのでしょうか。
資金難に陥る要因のひとつが、政府の不動産業者への規制です。住宅の高騰を問題視した習近平政権は2020年ごろ、資金調達の制限などの規制を強化。債務不履行に陥る企業が相次ぎました。
さらに中国では、地方政府が企業に「土地の使用権」を販売し、開発を後押ししてきました。しかし、借り入れに頼った企業の見通しの甘い開発から、これまでも途中で建設がとまるケースがあり、問題となっていました。
◇
そのひとつ、中国西部・陝西省のマンション。2011年に引き渡される予定だったという物件ですが、購入者が頭金を支払ったあと、開発業者の資金繰りが悪化。購入した人によると、建設が中断した部屋に20世帯ほどが住み続けているといいます。
SNSには、マンションの前で「マンション返せ!」「汗水流して稼いだ金を返せ!!」と抗議する人々の姿も投稿されています。
このマンションの住人に約束を取り付け、取材に向かうと、マンションの門が閉まっていました。入り口には門の出入りを管理する男性がいました。
――購入者が住んでいるのでは?
門の出入り管理する男性
「住んでない」
しかし、裏に回ってみると洗濯物が干してあり、人が住んでいる様子が見られました。取材を続けていると――
記者
「3人ぐらいですかね。ちょっと壁に隠れましたが。ずっと、こちらの様子をうかがっているみたいです」
監視しているのか、地元当局の関係者とみられる複数の人物が現れました。
結局、取材を依頼した住人には会えませんでした。電話をすると、当局からの指示があったのでしょうか、「取材には答えられない」と態度を一変させました。
当局が抗議などを封じ込める動きがSNSに投稿されていて、不動産への不安を払拭したい狙いがあるとみられています。
中国の不動産業界は“バブル崩壊”の様相をみせていて、世界に与える影響も懸念されます。