拷問や処刑も…刑務所での残虐行為の実態は アサド独裁政権崩壊
アサド政権が崩壊したシリア。これまで50年におよぶ独裁下で、政権に異を唱えた多くの人々が捕らわれの身となりました。残虐な拷問や処刑までも行われていたとされる刑務所の内部が明らかになってきました。
◇
反政府勢力によるダマスカス制圧で崩壊したアサド政権。長い独裁が終わり、政権に異論を唱え、秘密警察などによって捕らえられていた人々も、各地の刑務所から解放されました。
中でも、残虐な人権弾圧が行われているとして人々から恐れられていたのが、首都ダマスカス近郊にある「サイドナヤ刑務所」です。
人権団体は、ここで毎週数十人が処刑され、2011年から5年間で最大1万3000人のシリア人が殺されたと推定しています。また、日常的に行われていたとされる残虐な拷問で亡くなった人も多いとされています。
家族を捜す女性
「みんなどこに行ったの? きょうだいのことを思うと胸が張り裂けそう」
息子を刑務所で亡くした女性
「シリアではどの家族でも、逮捕された人が必ず身内にいるのです」
捕らえられた家族を捜すために、多くの人々が集まっていました。
◇
「女性たち早く出て! 怖がらないでいいから」
9日、反政府勢力がサイドナヤ刑務所を解放した時に撮影されたとみられる映像には、寝具のようなものが敷き詰められている床が映っていました。多くの人が狭い空間に押し込まれていたのでしょうか。
「みなさん、怖がらないで」
別の部屋には、多くの女性の姿が。解放されることを知ったからか、笑みを浮かべていました。
「もうどこへ行っても自由だよ」
騒然とする中、次々と解放されていく女性たち。
「あずけた荷物は…」
「荷物はあとでいいから!」
「早く出て!早く!」
そして、刑務所の個室の中を捉えた映像には、幼い子どもの姿もありました。廊下に出て立ちつくす子ども。刑務所に幼い子どもまでも収容されていたのです。
◇
刑務所から解放された人
「この時が来るなんて。皆、処刑されると思っていました。たくさんの人が毎日処刑されました。1人や2人じゃない。100人・200人・300人の名前が呼ばれるのです」
さらに、この刑務所の地下には「レッドセクション」と呼ばれる隠された独房や地下室があるとされ、いまだ多くの人々が閉じ込められているとの情報も出ています。9日には市民らが穴を掘り、地下室を捜す様子がみられました。
息子を捜す人
「どこに隠したんだ? 将校や兵士は逃げたが、捕虜はどこだ?」
イギリス・BBCは、監視モニターに多くの拘束者が映っているものの、地下へと続く電子ドアが開けられず、まだ解放されていないとの情報もあると伝えています。
ベールに包まれていたアサド政権下の人権弾圧。政権崩壊で、その実態も白日の下にさらされようとしています。