郷古廉さん(31)
「音楽はありとあらゆる言語や宗教や何もかもの壁を超えるものだと思っている」

郷古廉さん、31歳。いま最も注目される若手バイオリニストの1人だ。

1993年多賀城市で生まれた郷古さん。
姉のピアノの発表会でたまたま耳にしたバイオリンの音色に憧れ、5歳から本格的にその道を歩み始めた。

その後、数々の国際コンクールで優勝。
宮城県多賀城市は郷古さんが15歳までを過ごした故郷だ。

「無意識の部分が１番その人の核」

柳瀬 キャスター）多賀城の思い出は？
郷古廉さん）たくさんありますよ。砂押川を走ったりとか、幼少期の経験とか見てきたものや環境は無意識だと思うんですけど。ただ実際無意識の部分が1番その人の核なんじゃないかと僕は思っていて

2024年12月、多賀城市に郷古さんの姿があった。
多賀城創建1300年を記念した屋外コンサートへの出演。
故郷からの要請に応え、この日のために書き下ろされた曲を奏でた。

「とても光栄で嬉しかった」

柳瀬 キャスター）寒い中ではありましたけど
郷古廉さん）寒かったですね
柳瀬 キャスター）時間を忘れるひと時だった
郷古廉さん）なんか僕もある意味時間を忘れていましたね。非常に過酷な状況ではありましたけど、15歳まで多賀城にいてその後今まで海外にも長くいたし、そんなに深く故郷と関わるということはなかったので率直にとても光栄で嬉しかったですね。

この時、郷古さんが手にしていたバイオリンこそがストラディバリウス。
オークションでは何十億円の値が付くという選ばれし者にしか託されない名器だ。

柳瀬 キャスター）ストラディバリウスの魅力は？

郷古廉さん）いい質問ですね。楽器が持っている音楽器そのものが持っている音というかパワーというかそれはやはり独自のものがあるといつも思います。最近オークションで落とされたのは何十億という世界。

選ばれし者にしか託されない「ストラディバリウス」を奏でる

柳瀬 キャスター）普段の取り扱いはどうされてるんですか？
郷古廉さん）普通。普通に。
柳瀬 キャスター）普通に持ってるんですか。
郷古廉さん）もちろん。値段のことなんて考えてたら、何もできないので、もう道具だと割り切って

その郷古さんにとって2024年は節目の年となった。
N響、NHK交響楽団の第1コンサートマスター就任。
日本最高峰と言われる団を率い、まとめる第1コンマスへの30歳での就任は、その才能が認められたまさに「抜擢」だ。

柳瀬 キャスター）日本最高峰のオーケストラの 第1コンマスを受けるにあたって迷いや怖れはなかった？
郷古廉さん）それはなかったです。非常にシンプルに僕は考えていて自分はできるだけのことをやる。万が一それがうまくいかないとか、それがオーケストラに合わないとなった時には、それは仕方のないことだと思っている。緊張はしている毎回。すごく緊張はしているけどジェネラル(広い意味)での不安はない。

Ｑ緊張への対処は？

柳瀬 キャスター）緊張への対処は？
郷古廉さん）味わうことですかね。あまり避けようとしない。ああ今緊張しているなあと。緊張しているのは緊張しているとして受け入れて、ああ緊張しているなと客観的に自分を見て緊張を味わうことですかね

今年3月、「まろ」の愛称で親しまれN響の顔として20年以上にわたって第1コンマスを務めてきた篠崎史紀さんが退団する。
それに代わって新たな「顔」となる郷古さんが掲げるコンサートマスター像とは…。

柳瀬 キャスター）第1コンサートマスターの役割は
郷古廉さん）コンサートマスターとしては積極的にいろんなパートとアイコンタクトを取りながらこっちに行こうというのを、その場その場で判断しながらやっているんです。必ずしもいつもいつも指揮者を意識して弾いているというわけではなくオーケストラそのものがこっち行こうとなることもたくさんあるのでそういう時にやはりコンサートマスターはすごく重要な役割を担っていると思う

柳瀬 キャスター）コンマスとして意識していることは？
郷古廉さん）何よりも大事なことが聞くことですね。自分が何を言うかももちろん大事なんだけどちゃんと耳が開かれているかということ。それがなくなってくるとすごくエゴイスティックになると思うしそれによって音楽も固くなっていくと思うからちゃんと聞くこと

郷古さんが迎える2025年は…？

郷古廉さん（31）
「お茶のCMみたいだな…“新たなる深みへ”。新たに音楽の深みこの限りのない深みに、もっと自分を追い込んでいけたらいいと思うし、人間的にももっと成長したいそれがきっと音楽にも還元されていくと思うし、その大きな素晴らしいスタートになる年になればいいと思います」