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物理的に存在しないデジタルアートが高額取引 国内外で話題の「NFT」とは?

2022年2月16日 22:58
物理的に存在しないデジタルアートが高額取引 国内外で話題の「NFT」とは?

物理的に存在しないデジタルアートが高額取引 国内外で話題の"NFT"とは

「75億円」これは物理的には存在しないデジタル作品につけられた過去最高の値段だ。これを可能にしたのはNFTという新しい認証技術。いま世界中を騒がせているNFTだが、そもそも一体何なのか、利用する際の注意点など、実例を挙げながら解説する。

■世界中を騒がせている「NFT」 最高額は75億円

去年の売り出し当初は、まだほとんど無名だったアメリカのアーティストのデジタル作品が、「NFT」史上最高額のおよそ75億円で購入された。作品は物理的には存在していないが、「NFT」という新しい認証技術を用いることで、デジタルデータに価値を付けることが可能になった。

NFTは、いま世界でも急速に広がっている。

先月、アメリカのシアトルでNFT作品のみを展示する世界初の美術館がオープンしたほか、韓国の人気音楽グループBTSや日本のテクノポップユニットPerfumeなどの著名人も、NFTに参入。去年、日本の流行語大賞にもノミネートされた。

NFTの世界の取引額は、2021年は前年のおよそ250倍となる2兆5300億円に膨らみ、今後も市場の拡大が期待されている。

■そもそも「NFT」とは

NFTとは「NonFungibleToken(非代替性トークン)」の略で、「デジタルデータを世界で1つだけ、唯一無二だと証明するもの」という意味だ。

例えば、有名なゴッホの「ひまわり」という作品は、模写や複製も多く存在するが、ゴッホが描いたオリジナルの「ひまわり」は世界に1つしか存在しない。コレクターたちが高値で売買するのはオリジナルの「ひまわり」だけで、コピー作品に何億円も支払う人はいないだろう。

同様に、物理的に存在しているものだけでなく、デジタルの世界でも世界に一つしかないオリジナルであることを証明する技術が「NFT」だ。

■コピーが容易なデジタルデータをどう見分ける?

実体がある作品は、鑑定士などが「本物だ」と証明することで、その価値が保証されてきた。

一方、NFTの場合は、デジタル作品の出品者や所有者、取引情報など、作品に関するすべてのデータが公開されていて、それを相互に監視することで、偽物を見分け本物の価値を担保する仕組みだ。この仕組みを「ブロックチェーン」と呼ぶ。

作品のデータには固有のIDが付加されていて、そのIDを持つ作品は世界に1つだけなので、鑑定士の証明がなくても、コピー品と区別することができるとされている。

■NFTは様々な分野に広がっている

NFTはアート作品だけでなく、スポーツやゲーム、メタバース(仮想空間)などの世界にも続々と参入している。

例えば、これまで紙で売買されてきたスポーツ選手のトレーディングカードも、NFTの世界では、名場面を動画で所有することが可能になった。実際、アメリカNBAが売り出した人気選手のシュートシーンの動画は、1000万円以上の高値で取引された。

ファッション界でも高級ブランドのバーバリーが、特定のゲーム内で使用可能なアバターを数量限定で販売した。このアバターは30秒で完売したという。

■NFTが秘める可能性

NFTでは著名人の作品だけでなく、全くの無名の作品に高値が付くケースも多い。

去年、8歳の日本の少年(作者名ZombieZooKeeper)が夏休みの自由研究をきっかけに描いたデジタルアートの中には、1点180万円相当で取引されたものもあるという。一連の作品はアニメ化も決まっている。

少年の母親でアーティストの草野絵美さんは「今でも信じられない。少数でもファンがいれば、NFTを活用することで、大きなギャラリーに属したり作品が物理的に存在していなくてもアーティストが食べていける時代になると思う」と話す。

■NFT利用時の注意点とは

誰もが出品できる一方、NFTでは他人の作品を自分の作品のように見せかけて販売するなどの事例も少なくない。

NFTに詳しい増田雅史弁護士は「偽の作品などを誤って買ってしまった後に返金請求するのは、非常に難しいのが現状。購入する前に、作品や出品者が本物なのか、十分に確認することが重要だ」と指摘する。

今後の拡大が期待されるNFTだが、リスクも十分に理解した上で利用していくことが求められている。

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