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【解説】女性は男性の3/4…賃金格差どうなくす?銀行では“一般職=窓口業務の女性”の慣習が見直され――平等目指しプロジェクトチーム発足

2024年4月25日 12:34
【解説】女性は男性の3/4…賃金格差どうなくす?銀行では“一般職=窓口業務の女性”の慣習が見直され――平等目指しプロジェクトチーム発足
女性の給与が男性の3/4にとどまる日本。政府は24日、男女の賃金格差是正を主な議題とする新たなプロジェクトチームを立ち上げました。賃金の平等に向けて、“業界ごとに異なる課題”とは。報道局ジェンダー班の庭野めぐみデスクと、経済部で財界や企業の賃上げなどを取材している城間将太記者が深堀りトークしました。

■男女の賃金格差是正などを目指す新たなプロジェクトがスタート 構成員の顔ぶれを見ると…

報道局ジェンダー班 庭野めぐみデスク
「4月24日、政府は男女の賃金の格差是正を主な議題とする新たなプロジェクトチームを立ち上げました」

「各省庁の局長や課長などが構成員なんですが、こうした政府の会議では珍しく、19人の構成員の中で13人が女性なんです。たまたま今回扱う分野を担当している方々で女性が多かったということなんですけれども、中央省庁の幹部にも女性が増えてきたという証拠です」

経済部 城間将太記者
「私も5~6年前に霞が関の省庁を担当していましたが、会議の構成員や有識者は男性ばかりの印象が強かったです」

庭野デスク
「そもそも男女の賃金の格差とは何かというと、同じ企業に勤めている正社員で同じ仕事をしていても、男性の賃金を100とすると女性の賃金が70~80ぐらいというふうに、女性の方が明らかに賃金が低いという実態が日本にはあるんです」

■「“同じ職業”で“正社員”でも性別によって賃金が違う」――なぜ格差が生じるのか?

庭野デスク
「2023年のノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、クラウディア・ゴールディン教授は、労働市場における男女格差の主な要因を明らかにしたんです。研究では、『賃金の差というのは男女で職業が違うためではなくて、同じ職業について同じ正社員だとしても、性別によって賃金が違うことから差ができている』と説明しています」

城間記者
「経団連も男女の賃金格差が生じていることを問題視していまして、2022年7月の厚生労働省の省令改正によって、従業員301人以上の事業主には賃金格差の公表が義務づけられました。その後、厚生労働省が行った調査だと、あらかじめ決められている給与というのは、女性の給与の方が男性の4分の3ほどでした。こういった男女での賃金格差というのは、なぜ生じてしまうのでしょうか」

庭野デスク
「いろいろ要因がありますが、まず1つ目は『同一労働同一賃金』が実現していないからなんです。そういうと、まず思い浮かぶのが非正規の人と正社員の人では同じ仕事をしていても賃金が違うという実態です。女性の場合は非正規労働が結構多いんですよね。なので結果として賃金が低いということが挙げられます」

「パートで働く女性などは夫の扶養の範囲内だと年金などの保険料を納めないで済むため、収入を抑える場合もあります。それから、若い女性などで本当は正社員になりたいんだけれども、非正規でやむを得ず働いているという方もいて、そういう場合は『女性の貧困』につながる心配もあるんです」

城間記者
「女性の就業率が出産期に下がる『M字カーブ』は解消されつつあるんですが、20代後半をピークに正規雇用率が低下する『L字カーブ』の問題が指摘されています。出産や育児で一旦キャリアを中断すると、なかなか正規雇用として復帰できないという女性の現状もあります」

庭野デスク
「もちろん、そういう非正規の人に女性が多いことは問題です。ただ、ノーベル経済学賞をとったゴールディング教授の分析では、正社員として働き続けている女性と男性を比べた場合でも、実は給与が違うという実態が明らかになってるんです」

「なぜかというと、長時間労働とか夜急に呼び出されるといったことに応じる場合の労働者の給与は、それができない労働者より高い傾向にあるんですね。つまり、男女であれば、男性の方がそういう長時間労働や呼び出しに応じるので給与が高くて、夫がいない分、妻の方が家庭を回すために給与の低い職業や職場に転職していく傾向があるんです」

城間記者
「最近は企業の男性の広報の方から『育休を取る』という話をよく聞くようになりました。男性の育休取得がもっと進むと男女の偏った役割分担が減るのかなと思います」

庭野デスク
「2つ目の要因としては、管理職の女性が少ないということがあります。日本は大学や専門学校などに進む女性が非常に多いことから、学歴の差はないんですね。しかし、なぜか女性がなかなか出世できない。“終身雇用”とか“年功序列”が日本の企業ではまだまだ根強いわけですから、女性が一旦育児のためにキャリアを外れると、管理職など給与が高いポジションに戻ることができにくいという現実があります」

■“一般職=窓口業務で女性”“総合職=全国転勤ありで男性”――業界の慣習は今…?

庭野デスク
「さらに細かく見ると、業界ごとに背景が異なることもわかってきました」

城間記者
「三菱UFJ、三井住友、みずほのメガバンク3社が公表している情報を見ると、同一役職では同一賃金なんですが、管理職の女性比率が20%前後とかなり低く、同じ役職でも微妙に賃金が高い全国転勤がある役職には、男性が多いんです」

「古くから金融業界では総合職と一般職が如実に分かれていまして、“一般職=窓口業務で女性”“総合職=全国転勤ありで男性”という慣習がありました。しかし近年は、一般職と総合職という区分けをやめたり、女性の総合職採用を強化したりする動きも進んでいるんです。この世代の女性たちがあと数年で管理職層になるので、大きく改善していくんじゃないかと思います」

庭野デスク
「日本総合研究所調査部の上席主任研究員藤波匠氏によると、宿泊や飲食サービス業では、女性の非正規労働者が非常に多いということです。女性であっても例えば店長のような正規の職員になった場合には、男性とあまり賃金が変わらないそうなんです」

「業種によって対応策が違うので、各業界を担当する省庁の担当者が今回の新しいプロジェクトチームに参加しています。その業界の慣習が今の時代に合うのかなども含めて、どうやって変えていったらいいのかを5月以降にまとめて、その後企業や業界にきちっと働きかけていくということです」

「ただ、今後女性が登用されると、もしかすると城間さんが出世できなくて、同期の女性がどんどん出世してしまうかもしれません。それは男性から見るとどうですか?」

城間記者
「私はジェンダーによって給与の差が生じることなく、能力や働きぶりで正当に評価されるようになってほしいと思います」

庭野デスク
「日本は少子高齢化で、今後も労働力不足がますます深刻になるわけですよね。実力ややる気があって、教育も受けている女性たちの力は、国全体の経済を回して産業を維持していくためにも必要ですし、それが個人の幸せにもつながると感じます」