アメリカとの“口論会談”後に「感謝」投稿のウクライナ兵…本音は?【バンキシャ!】
トランプ大統領とゼレンスキー大統領が激しく口論する事態となった異例の会談。アメリカが軍事支援の一時停止を発表して以降、ウクライナ兵が感謝を伝える動画の投稿が相次いでいます。前線で任務につく兵士の本音に迫りました。(真相報道バンキシャ!)
◇
7日、バンキシャ!が話を聞いたのは、ウクライナのファッションデザイナー。マネキンが着る黒色のシャツには、ウクライナの国旗に国章。このシャツをデザインしたという。
デザイナー
「ウクライナ国旗が小さく縫いつけられたこちらのシャツは、大統領がいつも着ているものです」
2月28日、アメリカ・トランプ大統領が「ウクライナは窮地なんだ」と言うと、ウクライナ・ゼレンスキー大統領は「わかっています」と応じた異例の“口論会談”。
このときゼレンスキー大統領が着ていたのが、国章が入ったシャツだ。会談の場では、記者からこんな質問も。
アメリカの記者
「なぜスーツを着ないのですか?アメリカ最高の執務室にいて、スーツを拒んでいる。スーツは持っていますか?」
ゼレンスキー大統領
「はい、問題ですか?」
シャツを揶揄(やゆ)されるような場面もあったが、デザイナーのもとには予想外の反応が。
デザイナー
「多くの人がシャツを購入してくれて、ウクライナを支援している、大統領を支援していると連絡がきました」
およそ2万5千円のシャツに次々と注文が入り、売り上げは5倍に。デザイナーは「ほとんどがアメリカからの注文でした」「(購入した)アメリカの人は、ウクライナ人との連携を示してくれていると思います」と話す。
あの会談以降の1週間で、トランプ政権はすべての軍事支援を一時停止。5日には機密情報の提供も一時停止していると明らかにした。
◇
ウクライナはいま、どうなっているのか。
これは、ロシアとの国境近くの街スムイで、2月23日に撮影したという映像。ウクライナ軍が編集したものだ。
ウクライナ兵が「発射」と、機関銃を空に向け発射。青のレーザーポインターを頼りに、ロシア軍のドローンを迎撃する。
本来なら、アメリカから供与された対空ミサイルなどを使用するが、機関銃で防衛。会談の前から武器が枯渇していたことがわかる。
さらに、ロイター通信によると、ウクライナ軍が越境攻撃を続けるロシア・クルスク州でも、この1週間で、戦況が急激に悪化。ただでさえ苦しい状況の中、アメリカからの支援停止が追い打ちとなっている。
日本時間7日、ジャーナリストの横田徹さんは、スムイでウクライナ軍に同行取材していた。
ジャーナリスト・横田徹さん
「ここはロシア国境から非常に近いということで、毎晩のようにロシア軍の空爆を受けています」
「ここが、きのう攻撃を受けた郵便局です」
横田さんが到着する前の日、ドローン攻撃を受けた建物が。国境近くは常に危険にさらされている。この日の夜も…。
ジャーナリスト・横田徹さん
「いま夜の9時です。空襲警報が鳴り響いています」
ロシアによる攻撃が止むことはない。
◇
戦闘が長引く中、トランプ大統領が強調したのは増え続けるアメリカの支援額。ロシアによる侵攻以降、ウクライナへのアメリカの支援は、合計でおよそ18兆円。軍事支援だけでも10兆円を超えている。
トランプ大統領
「ウクライナの装備品はすべてアメリカが与えたものだ。もしアメリカの装備品がなかったら、この戦争は2週間で終わっていただろう」
ウクライナ軍の幹部は、この発言をどう見ているのか。
「兵士としては、アメリカからあのような態度をとられてショックでした」「(ゼレンスキー)大統領を独裁者と呼ぶなんてナンセンスです」と不快感をあらわにした一方、こう、本音をもらす…。
「アメリカの支援なしでウクライナは戦い続けられますか?」という問いに、「それは非常に難しいと思います。アメリカからいただいている支援はとても大きいものです」と話した。
◇
さらに会談で、アメリカのバンス副大統領がゼレンスキー大統領に迫ったのが。
バンス副大統領
「一度でも『ありがとう』とお礼を言ったか?」
ゼレンスキー大統領
「何度も言った」
アメリカの支援に対しての感謝。すると、ウクライナ軍のSNSには、ある投稿が相次いだ。
ウクライナ兵
「アメリカ国民のみなさん、武器の支援に感謝しています」
両国の国旗が並んだ紙には、英語で「アメリカの皆さんの支援に感謝します」。
ウクライナ兵
「厳しい時にいただいた支援に感謝を表明します」
「アメリカのみなさま、ウクライナのための支援に感謝します」
一様に伝えていた“アメリカへの感謝”。ゼレンスキー大統領のSNSにも変化が。
バンキシャ!
「会談直後のポストですが、サンキューを4回も言っていますね」
「アメリカに感謝」
「支援に感謝」
「今回の訪問に感謝」
「大統領、議会、国民に感謝」
会談前後のアメリカへの「感謝」を数えてみると、会談前の2月は1か月間で13回。対して会談後は、わずか1週間で16回となった。
こうしたウクライナ側の“変化”について、国際安全保障に詳しい専門家の慶応義塾大学・鶴岡路人准教授は「アメリカからの支援が必要だという現実に基づいて、関係修復のためのメッセージを送ってきたということ」「公正で持続的な平和を求めるという部分は、実はかわっていません」と話し、戦後の安全の保証など、ウクライナが求める条件は会談後も変わっていないと分析する。
そうした中、アメリカとウクライナの代表団は11日に会談するというが、今後どう進むのか。
慶応義塾大学・鶴岡路人准教授
「アメリカ・ウクライナの高官級協議がある程度うまくいけば、ヨーロッパも関与する形で、臨時の戦闘停止みたいなものが正面に出てくる」
「3月10日からの週は、ひとつ大きな山場になる」
(3月9日放送『真相報道バンキシャ!』より)