「あなたの無事が、いちばん大事。」防災グッズを選べるギフトカタログ事業で新しい防災普及の可能性に挑む株式会社KOKUA代表にインタビュー
今回のゲストは株式会社KOKUA代表取締役・泉 勇作さん。防災サービスの企画・開発・販売で新しい防災の普及に取り組む活動に“1分間で社会を知る動画”を掲げる「RICE MEDIA」のトムさんが迫りました。
送った相手を思いやるギフト
泉さん「KOKUAは現在5期目になるスタートアップ企業で、社名の由来はハワイ語です。意味としては『協力する』みたいなニュアンスがあります。
自分たちの会社だけでは無くていろいろな方と協力して解決していきたいという思いを込めてKOKUAという社名にしました。
自然は災害というイメージと同時に、自然との共生みたいなイメージがあるかと思います。
そんな中でハワイは自然が豊かなイメージがあり、また語感も気に入ったのでKOKUAという社名にしました」
トムさん「KOKUAでは防災のカタログギフトをおこなっていると思うのですが、詳しく教えて貰えますか?」
泉さん「私たちはさまざまな災害現場にお手伝いにいくなどしているのですが、防災地域で感じることとして『防災グッズの購入ハードルが高い』と感じていました。
そこで防災グッズとの接点をまずどこで作っていくかということに注目しました。また家庭の中で消費を考えるとどうしても防災にお金を使うという事が難しくなると思いました。
私がその人に合わせた防災グッズを用意してプレゼントするみたいな取り組みをしていました。
プレゼントみたいなものは、被ったりしたらどうしようみたいな悩みもあると思います。
防災グッズは貰って困るモノではないし、あなたのことが大切だと思っていると表すことが出来るなと思いました。
そういった考えをデザインして、ギフトまで落とし込めたらと思いました」
日本人の防災意識
泉さん「防災グッズの充足率はさまざまなところが調査を出しています。
災害はこれから起きると思いますか?という質問に対して90%ほどの方は『実際に災害は起きているので、これからも災害が起きると思う』と回答されます。
ただ『災害に備えていますか?何か置いていますか?』という質問に対しては、40%ほどの人しか備えておらず半分以上の人が何もできていないというのが防災グッズの充足の現状かと思います。
こういった備えに至らない理由は大きく2つあるのですが、1つめは予算が課題だと判明しています。
災害はいつ起こるか分からないので、そういったものにお金をかけることがやはり難しいということです。
もう1つの理由が『そもそも何をしていいかわからない』ということです。
この2つが大きな障壁となって防災が広まっていきにくいという風に捉えています。
そこで私たちは、0・1の接点という言葉をよく使っていまして、やはり問いが生まれることが大切だと考えています。
災害報道だったりだとか、台風が近づいているという災害を見聞きしたときに『怖いな』だけで終わってしまうのが普通だと思います。
そこで最初の接点として、そういう時にライトみたいな防災グッズがあったときに『これで十分なのか?』と問いを持って貰えることが大切だと考えています。
そのきっかけのためにも、まずは1つでも構わないから防災について考えたことがあって、選んだことがあって、それが家にあるという状況を作ることが大事だと考えています」
泉さん「カタログ自体はカードタイプになっています。1ページ目には『あなたの無事がいちばん大事。』というコンセプトが書かれています。
例えば消火器などが掲載されています。赤い消火器をお部屋の中に置いておきたくないという方もいると思うのでモノトーンの消火器を用意しています。
私の推しとしては先日掲載が決まった携帯用トイレです。携帯用トイレなどは災害などがあったときに奥にしまっていて、取り出せなくなってしまうみたいなことがあるんです。
でもこちらの携帯トイレは、そのまま部屋に飾ることが出来て日常に馴染む、部屋においておけるという事が大切だと思うんです。
お客様によく選ばれるものとしては、使い方がわかりやすいラジオみたいなものや、最近ではアウトドアのタイミングで使えるものになっているかなと思います」
トムさん「もっとアクセスしやすい価格帯のギフトもあったりするのでしょうか?」
泉さん「ライフギフトフードでは、備蓄食みたいなものに注目した商品カタログになっています。
普段から食べてもおいしいし、災害時にもおいしいという長期保存食みたいなものを掲載しています。
例えば、3年間保存できる缶のハンバーグや、ドライフルーツみたいなものも載せています。避難所では食が唯一の楽しみになることもあるためです。
そういうシーンで普段から食べられる、おいしいものをストックできることは大切だと思いこういったラインナップを揃えています。
それぞれのギフトシーンにあわせたブランディングをするようにしています。
出産祝いや結婚式のグレードの高い引き出物として、13000円に設定しています。フードの方は3900円とカジュアルなシーンで使えるような価格設定にしています」
トムさん「個性的な防災グッズはどこから見つけてくるのでしょうか?」
泉さん「ユーザー目線で考えたときに、ギフトとして嬉しくないと使うことは絶対ないと思っています。
またユーザーにとって最高のギフト体験をしていただくことで、防災がライフギフトを通して広まるという風に考えています。
掲載商品に関しても防災の機能性はもちろんなんですけど、日常に馴染むとか、ギフトとしてもらった時に嬉しい体験ができるとか、そういったデザイン性と機能性を有していることを選定の基準としています。
こういったものをどうやって探してたのかというと『 ひたすら調べる・紹介してもらう・人に聞くみたい』なことを泥くさく、1個1個、商社さん、メーカーさん、デスクトップリサーチ含めておこなっています。
ほとんどの場合は国産なのですが、海外の商品とかもあるので、そういったものを探していったり聞いていったりして、 厳選されたものが集まったのが今ライフギフトになっています」
泉さん「もう1つの事業として防災グッズに特化した『パーソナル防災サービスPASOBO』を運営しています。
普通のecサイトとの違いは、診断項目を記入して貰うことで災害時のリスクを1人1人洗い出して『その人に必要な防災セットを松竹梅で提案』してくれます。
ライフギフトは、0から1を広げていこうと考えて始めたサービスだったのですが、それをきっかけに『このグッズはどこで買えますか?』『どういう備えが必要ですか?』みたいな質問をいただくようになりました。
こういったギモンに真摯に向き合うと非常に多くの情報を教えて頂く必要があるし、自分で調べて頂く場合も膨大な量の情報を勘案しなきゃいけないと私たちも実感しました。
0から1で増やした防災との接点を、1から10に増やすということにどういうリスクがあるのかを把握した上で取り組んで貰えたらいいのではないかとこういったサイトを始めました」
どうして防災に特化した事業を始めた?
泉さん「兵庫県の神戸市生まれの32歳になるのですが、私は幼少期で記憶がはっきり無いのですが、阪神・淡路大震災で家族が被災したことで生活が大きく変わりました。
毎年1月17日の発災した日には地震の話題が家族の中で出ることが多く、元々地震を中心に災害との接点が多かったです。
大学の入学の1ヶ月前に東日本大震災が起こり、中学高校はやっていなかったのですが、自分のルーツを改めて思い出しました。
何か出来ることが無いかと災害地域へのボランティアなどの取り組みを18歳から始めたんです。
防災グッズがあれば全てが変わるわけではないのですが、『防災グッズがある・備えをしている』というだけで変わることもあるというのを見聞きすることが多く、そういった機会を事業の力を通して実現したいと思いました。
社会人として就職した会社は、防災と関係ない広告の会社でした。
働きながらも有休を取り災害救援を続けていたのですが、自分のやってきたことを活かして少しでも貢献出来ることがあるならと思い、事業を立ち上げることを考えました。
ちなみに私たちの会社は3人で立ち上げたのですが、全員災害ボランティアを通じて知り合いました(笑)」
トムさん「KOKUAとして目指したいゴールについても教えて頂けますか?」
泉さん「まずは災害のリスクを知って頂くことが一番だと思っています。
災害時に自分にどんなリスクがあるかを知らない方は多いと思うんです。行政でも自分たちの避難計画を作りましょうと呼びかけています。
1人1人のリスクを全員が知っている状態を目指したいとまずは思っています。
もう1つは、身近に具体的な災害の影響が無いと、こういった行政の呼びかけや仕事だけでは距離が空いてしまう物だと思います。
実際に影響が無くても、例えば夜家族が遅く帰ってきたときに『遅いと危ないから迎えにいくよ』という流れがあると思います。
これは事件などに巻き込まれるかも知れない、夜道は危ないかもしれないという想像があるから、こういった『万が一を想定した危ないから』につながるんだと思っています。
こういった考えや備えを災害に対しても、行って頂ける人を増やしたいです」