40 年続くラーメン店「再出発」、産後の妻に「サプライズ」……巨大ホームセンターで見えた“新生活” 何買った?『every.特集』
新生活が始まった春、皆さんは一体何を買っているのか? 千葉の巨大ホームセンターを訪れたお客さんに聞きました。ウオールシェルフ、電動ドライバー、レンジラック、コンセントのカバー…。買い物から見えてきたのは、十人十色の思いや人生でした。
千葉・印西市にある「ジョイフル本田 千葉ニュータウン店」を訪ねました。敷地面積は東京ドーム約3.6個分。日用品をはじめ、インテリアや木材、ガーデニングや画材など30万点以上のアイテムを扱っています。「ここに来れば何でもそろう」と、県内外から人が集まる巨大ホームセンターです。早速、聞き込みを開始。資材のコーナーで、商品を熱心に選んでいる男性がいました。
――今日は何を買われたんですか?
男性
「これはウオールシェルフ。壁面に棚を付けるようなDIYをやりたいなと」
家の脱衣所のデッドスペースに、棚を作りたいという男性。柱や固定するためのビスなどを購入しました。DIYは、今回初挑戦なんだとか。
――やろうと思った理由とかあるんですか?
男性
「ちょうど子どもが生まれるので、物が置ける場所あったらいいなと思って。先月生まれたばっかりで」
2月に子どもが生まれて3人家族になり、新たな生活に向け準備をしていました。ただ、それだけではないようです。
「(棚を作ることは)妻には言ってないんですよ。あさって里帰りから帰ってくるから、帰ってきたらできている感じでやりたいなって思っていて」
以前、「棚がほしい!」と言われていたそうです。出産で頑張った妻へ、サプライズを計画しました。妻が実家に帰省中の今、内緒で作るんだとか。後日送ってくれた写真には、何もなかったスペースにぴったりの棚が完成していました。
そしていよいよ、実家から戻ってきた妻にお披露目です。
「え~! え~! どうしたの! どうしたの!」。棚を目の前に驚く、妻の姿がありました。
その時の様子を伺ってみました。
妻の樹里さん
「とにかくびっくりしました! この家を建てた時もあそこに可動棚がほしいねって言ってたんですけど、出産終わって帰ってきたら見事にでき上がっていたので。やったなついに!って」
夫の慎一さん
「想像以上にいいリアクションをしてくれてた気がしますね。バレずにやりきったなっていう」
サプライズは大成功です。家族 3 人で新たな生活、楽しんでくださいね!
ジョイフル本田でレジを待っていた男性が買っていたのは、電動ドライバーです。車が大好きという19歳の男性。その使い道を聞きました。
男性
「今から車を納車するので、そのタイヤを替えるんで。人生で初めて自分のお金で買った車です」
今年2月、貯金をはたいて人生初の車を購入。電動ドライバーは、この後納車されるという車のタイヤ交換で使うんだそう。
「中学生くらいからずっとほしい車で」と男性。購入したのは、トヨタの2003年式のマークⅡ。去年の春に高校を卒業し、建設機械の部品工場に就職しました。1年かけてコツコツ50万円を貯金し、念願だったこの車を買ったといいます。
男性は、両親と弟の蓮さん、妹の5人で暮らす髙橋涼さんです。車好きの父・康治さんが幼い頃からドライブに連れて行ってくれたそうです。
涼さんが6歳の頃、父・康治さんが乗っていたのがマークⅡでした。以来お気に入りで、中学生の頃には「自分で買うならこの車!」と決めていたんだそう。
「貯金して、やっと買えたので楽しみです」と、涼さんは待ちきれない様子。隣にいた康治さんも「ついに来たなという感じです。自分も楽しみにしていたので」。
――車でどこか行きたい場所はありますか?
涼さん
「自分山形(在住)なんですけど、山形の山、景色見えるところに行きたいなって」
髙橋さん一家のお住まいは山形県でした。1年かけて探し続けたマークⅡを見つけたのは、自宅から約250キロ離れた埼玉県だったのです。納車のため前日の夜に山形を出発し、約7時間かけ、親子3人で運転しながら関東へ向かいました。
待ちに待った車との対面。その様子を、埼玉・八潮市の中古車販売店で取材しました。約13年ぶりに、目の前に念願の車がありました。涼さんは思わず「イエ~イ」と言い、父・康治さんとともにスマホのカメラを向けました。車の周りをぐるっと、嚙みしめるように眺めます。
ドアを開けて車内を覗いた涼さんは「お~! いいな~」と感激した様子。父・康治さんも「懐かしい」「たまんないな」と、車を眺めて喜んでいました。
――いかがですか?
涼さん
「めちゃめちゃうれしいです! これが欲しくて、1 年間頑張ったので。丸っこい形がずっと好きだったので。いっぱいいろんな所、遠くに行きたいです。自分の宝ですね。一生乗りたいです」
康治さん
「すごく楽しみにしていたのでうれしいです。たまに貸してもらって、乗せてもらいたいな」
父と息子にとって思い出が詰まった車。いよいよその運転席に身を沈め、エンジンを始動させます。
涼さん
「お~! いいなぁ。めちゃめちゃいいです。ワクワクします」
愛車とともにこれから7時間かけ、自宅のある山形へ出発しました。翌日送ってくれた動画には、早速購入した電動ドライバーでタイヤ交換をする涼さんの姿がありました。憧れの車との生活がスタートした涼さん。今度は父を乗せてドライブに行きたいんだそう。いっぱい思い出を作ってくださいね!
ジョイフル本田では、ちょっと意外な理由で買い物をしていたご夫婦もいました。カゴには、レンジラックやオーブントースターが入っています。
――すごくいっぱい買われてますけど、これはなぜですか?
夫
「ないから…。娘に持って行かれたり…」
妻
「追いはぎに遭ったみたいだよね」
持って行かれたとは、どういうことでしょうか?
夫が「(娘が)新社会人で新たに1人暮らしをして、そちらの方に。使い慣れている物を含めて持って行ってもらって、で、代わりにどうしようかって。うちはどうしようかと…」と言うと、妻も「あげちゃったはいいけど…」と笑います。
3人の子どもがいるというご夫婦。就職のため、最近1人暮らしを始めたという長女の鈴華さんに、家にあった棚などを渡してしまったそうです。そこで「家で使える棚がない!」と買いに来たんだそう。
節約家で努力家だという鈴華さん。大学にも奨学金制度を利用して進学。成績優秀で、授業料も全額免除になったといいます。「(長女は)どんどん上へ上へって進んでいく子だから…」と、母は成長を頼もしく見つめます。
親元を離れ、自分の力で生きていこうとする娘を応援する両親の姿がありました。
資材館のエリアで出会った家族。夫が手にしていたのは、電気のコンセントのカバーでした。妻は「お店のリフォームをちょっと考えていて。今、自分たちでちょっと色も塗ったり…」と言います。
千葉県内で40年続くラーメン店を営んでいるというご夫婦です。現在リフォームの真っ最中だそうで、新しいカバーを購入しようと来店しました。
「銀のもかわいいんだけど…」と悩む妻に、娘さんが「え~、普通のでいいんじゃない?」と言います。娘さんと一緒に選ぶこと 15 分。シンプルな白のカバーに決定しました。
カバーを使う予定のラーメン店について伺いました。
妻
「(体の)調子が悪くて、1 年ぐらい休んじゃってたんで…」
店主を務める夫が1年ほど前に体調を崩し、現在休業中。身体も回復し、近々再オープンするといいます。
後日、千葉・松戸市にあるお店へ向かいました。
ラーメン店を営む高栖さん。2 代目の一博(かずひろ)さん(48)と妻の志保さん(46)、長女の佳子さん(10)、二女の奈子さん(8)の 4 人家族です。
店は、初代である一博さんの父が 42 年前にオープン。看板メニューは長ネギがたっぷりの「みそねぎラーメン」(950 円)。豚骨ベースのスープと中細麺が相性抜群です。地元で人気の1杯なんだそう。
ジョイフル本田で購入していたコンセントのカバーは業者さんにお願いし、客席の壁や厨房の中など約9か所に取り付け。ピカピカの状態に様変わりしました。さらに、テーブルや床、壁紙などを自分たちの手で手直し。約2か月かけ、店内を一新しました。
一博さんは両親と共に店を切り盛りしていましたが、3年前に父・寿一(としかず)さんが病気で他界。厨房の仕事を1人で担う中、支えてくれていた母も体調を崩してしまったといいます。そんな中、身体に異変が起きました。
一博さん
「本当に身体が全く動かなくなっちゃって、歩けないし、服すら着替えられなくなっちゃって。(自分が)もう終わっちゃったなという感じでした」
当時店を手伝っていた志保さんは「私から見ると、もう本当に目が死んでいて…」と振り返ります。一時は閉店も考えたそうですが、志保さんは新たにパートを始め、さらに子どもたちとの時間を増やすなど、家族で一博さんを支えました。
ある日、子どもたちからこんな言葉があったそうです。
一博さん
「急に『お店やってほしい』って言いだして、あ、そうなんだなっていうので、少し気持ちが…」
地元のお客さんからの声もあり、店を再開する決心をしました。「どんなに自分がダメそうでも、みんなが期待してくれているというか、お店に対する声がすごく大きいので、やっぱりなくしちゃダメなのかな」と一博さんは語ります。
そして迎えた、再オープン当日の3月6日。志保さん、一博さんも気合を入れ、準備万全です。心機一転、リニューアルしたお店で再スタートを切ります。
午前10時45分。「開けま~す!」という一博さんの声で、いよいよオープンです。のれんをかけ、「どうぞいらっしゃいませ」。開店と同時に続々とお客さんが入ってきました。約1年3か月ぶりに提供するラーメンを、心を込めて作っていきます。
10年以上通う常連さんは「懐かしいなぁ。そうそう、こういう味だよ、ネギたっぷりがいい」と嚙みしめました。「苦労しているのも見ているので、今日復活してくれて本当に嬉しくて、だからすぐ来ました」
再開を待ち望んでいた別のお客さんは「私は小さい頃から行っていて。(ずっとシャッターが閉まっていたので)このまま閉店しちゃうのかなと思っていたんですけど、また来られてうれしいです」と笑顔を見せました。
そして、午後3時。最後のお客さんを見送り、再オープン初日が終了しました。
志保さん
「いやぁ、うれしい…。よかったっていう、本当それだけですね。来てくださって」
一博さん
「いつまでたってもお店のことをみんな忘れないでいてくれるので、それが気持ちを前向きにさせてくれる原因かなって」
リニューアルしたお店で、新たなスタートを切ったご夫婦。身体に気をつけて、これからもお父さんの味をつないでいってくださいね!
(4月25日『news every.』より)