今、「ラーメン」が大ピンチ!相次ぐラーメン店の倒産、止まらない“4重苦”とは?
日本の国民食「ラーメン」が大ピンチだ。2023年には過去最多となる63件のラーメン店が倒産。物価高騰など、ラーメン屋を取り巻く“4重苦”に迫る。
名古屋市の『中国料理 四川』。お昼時、お客さんが一心不乱に食べていたのは人気メニューの「担々麺」だ。満足げな表情でラーメンを味わう一方、お客さんからは「(ラーメンの値段が)上がってますね最近、増々」「高くなってきているなっていう感じはすごいします。だからこそ行くときは高くてもおいしいなと思えるところに行きたい」など心配の声が。
実はいま、日本の国民食「ラーメン」が大ピンチなのだ。
その理由は「物価高騰」。『中国料理 四川』のマスター・柳田孝視さんは、「豚肉や他の材料も上がってきていますし、ほんとに値上がりばっかりですね材料費は」と話す。柳田さんによると、担々麺に使う具材のほとんどが値上がっており、なかでも切実なのが担々麺には欠かせない「ゴマ」だ。
『中国料理 四川』の担々麺は、南米から取り寄せるゴマをペースト状にして、トウガラシなどを加えてスープに。もともとゴマは、1㎏920円で仕入れており、値段の変動は過去にほとんどなかったという。柳田さん曰く、「去年と比べて1㎏130円上がっていて、また来月ぐらいからもう100円値上がる」というゴマ。
ゴマの仕入れ価格は来月からは1,150円へ。他の材料も値上がったため、人気の「担々麺」は去年冬の時点から140円値上がり、現在は990円だ。「担々麺」の値上げについて、「なるべく(1,000円を)越えたくはないなとは思うんですけど、他の店を見てると1,000円を超えるところも結構多いと思うので、越えざるを得ない時が来るのかなと思っている」と柳田さんは話す。
物価高騰の波は収まる気配がなく、ラーメン店を苦しめている。東京商工リサーチによると、2023年度に倒産したラーメン店は63件と過去最多を記録。原材料費や人件費、光熱費の高騰が著しく、急激なコスト上昇に見舞われているという。
値上げはしたいが、1,000円は超えたくない。人気の担々麺の値段をどうするか。マスターの苦悩は続く。
新紙幣の発行による券売機の改修も影響
値上げは、名古屋市民にお馴染みのラーメン屋にも影響が。1978年創業の『ラーメン福』だ。看板メニューは、もやしがたっぷり乗った「ラーメン」。そんな自慢の味は、2年前に600円から650円に値上げ。来月からさらに値上げし、700円になるという。材料費はチャーシューも麺も野菜も、“上がっていない物はない”と言うほど。しかし、値上げの理由は「物価高騰」だけではない。
『ラーメン福 土古店』店長は、現状について「もうトリプルパンチですね」と話す。物価高騰のほか、値上げをしなければならない理由があと2つもあるというのだ。
2つ目の理由は「人件費の高騰」。人手不足が深刻な日本。時給を上げても人が集まらず、アルバイトの時給を去年秋に思い切って150円アップ。なんと1,250円に変更した。
時給アップについて店長は、「高いなとは思うんですけど、なかなかまだ来てもらえない。(働き始めた頃は)時給950円とかだったので、今の時給を見ると羨ましいなとは思いますよね」と心境を明かした。
さらに、意外なところにもお金がかかっていた。新紙幣の発行による、券売機の改修だ。同店では、7月から発行が始まる新紙幣対応のために、券売機を新調。1万円札の肖像画が渋沢栄一になるなど、20年ぶりに一新されるデザインに対応するため、券売機のパーツを新しくしなければいけないのだ。改修費は、1台あたり25万円ほど。物価と人件費の高騰と合わせて、設備投資の費用も重くのしかかっていたのだ。
やむなく踏み切る値上げ。新価格の700円についてお客さんは、「まだ安いんじゃないです?味が変わらなければ来る」と答える。
地元の人々に長く親しまれてきたラーメンの味。『ラーメン福 土古店』店長は、「そうやって答えてくれる人がいる限りは頑張っていきたいと思いますよね。コツコツやっていくしかないのかな」と今後への思いを語った。
ラーメン店の倒産が相次いでいる現状には、物価高と人件費の高騰、設備投資などがある。しかし、“ラーメン”に関しては、もうひとつ苦悩がある。
それは、「1,000円の壁」だ。東京商工リサーチによると、ラーメンは競合店舗が多く、近場で価格を比較されやすいジャンル。そのため、“1,000円以上の値段にしにくい”面も持ち合わせいるのだ。値上げがしにくい状況から、店の利益が減少。物価高と人件費の高騰、設備投資とともに、“4重苦”となって店にのしかかってくるのだ。
日本の国民食、ラーメン。その存在は、“4重苦”に立ち向かう店主たちの強い心意気によって支えられていた。