【SL人吉】“ハチロク” のラストラン 最年長の整備士は「子どもみたいなもの」それぞれのお別れ
ハチロクの愛称で親しまれた現役最古の蒸気機関車「SL人吉」が23日、101年の歴史に幕を下ろしました。駅や沿線には多くの人が詰めかけ、それぞれの思い出とともに別れを惜しみました。
SL人吉が力強く走ります。23日、“涙雨”に打たれながらラストランを迎えました。
■鬼丸ゆりか記者
「JR博多駅のホームにはカメラやスマートフォンを手に多くの人が集まっています。」
現役最古の蒸気機関車、その最後の雄姿を見届けようと、およそ1500人の鉄道ファンが駆けつけました。
■5歳
(Q.何て書いたの?)「SL人吉ありがとう。ラストランだから。」
■50代
「(2009年に)SL人吉が走り始めた頃から乗っていて、最後だから見に来た。すごく胸が締め付けられる。」
JR九州の観光列車・SL人吉、けん引する蒸気機関車は1922年に製造され、“101歳”になります。
2009年にSL人吉として熊本・人吉間で運行を始め、4年前の豪雨被害後は鳥栖と熊本の間を週末を中心に1日1往復していました。
しかし、車両の老朽化が進み、部品の調達や整備する技術者の確保が難しくなったことから、引退することになりました。
去年3月、北九州市にあるJR九州小倉総合車両センターでは、ラストシーズンの運行に向けて整備が行われていました。
担当するのは10人の整備士たちで、ふだんはそれぞれ別の部署にいますが、この期間限定でSL人吉の整備にあたります。
このチームを率いるのが最年長の整備士、玉井明人さん(67)です。36年にわたりSL人吉を担当してきました。
■最年長・JR九州エンジニアリング・玉井明人さん(67)
「自分たちが手掛けてきたSLがお客様を乗せて無事に走ってくれることにやりがいがある。私にとっては子どもみたいなもんですよ。」
例年、観光シーズンを迎える前のこの時期、整備が大詰めを迎えます。
■玉井さん
「SL人吉が工場に“いない”といけない時期なので、これが“いない”というのが非常に寂しい。」
■JR博多駅スタッフ
「SL人吉の切符をお持ちの方は、こちらからご入場いただけます。」
そしてお別れの時を迎えました。
JR博多駅には多くの人たちが駆けつけ、SL人吉との別れを惜しみました。
大分県から訪れた田原英治さん(51)は、SL人吉が製造された月と同じ11月が誕生日で、誕生月にはチケットが取れると記念に乗っていたといいます。
■大分県から・田原英治さん(51)
「SL人吉として2009年に復活し、家族3人で乗った時が一番の思い出。熊本から人吉までGWで満員の中列車に家族に乗って。」
■田原さん
「それでは乗車します。」
SL人吉に乗るのはこれが最後です。
停車時間はわずか5分です。
■大勢の鉄道ファン
「ありがとうー!」
ホームには「ありがとう」の声が響き渡っていました。
午後1時48分、発車時刻を迎えました。
■神奈川県から
「引退するのはすごく悲しい。」
■熊本・博多間乗車・千葉県から
「あちこちで自分たちの家の上から手を振ってくれて、いろんな方がいた。愛されていたんだと思った。」
■福岡市内から
「寂しいです。キーホルダーとかグッズも買ったり。SL人吉が大好きで、何回も一緒に乗って、思い出がたくさんある。」
「格好良かった。引退しないでほしい。」
SL人吉と最後の時間を過ごした田原さんは…。
■田原さん
「ハチロクは私の青春そのもの。もし奇跡の復活を遂げたら、必ず家族で乗ります。SL人吉、本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。」
24日、JR八代駅では、SLのかまから移した火を消す「火消し式」が行われ、長い歴史に幕を下ろしました。
様々な世代に愛され、多くの思い出を運びながら101年走り抜いたSL人吉は、今後は熊本県人吉市に無償で譲渡される予定で、ここからまた新たな歴史が刻まれます。