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賃上げで“世代間格差”ナゼ?……氷河期世代から「新人さんご飯おごって」の声 初任給“大幅アップ”も【#みんなのギモン】

2025年1月23日 11:12
賃上げで“世代間格差”ナゼ?……氷河期世代から「新人さんご飯おごって」の声 初任給“大幅アップ”も【#みんなのギモン】
いわゆる春闘が22日、事実上スタートしました。物価高が止まらない中、中小企業で働く人の賃金をどう上げられるかが注目されます。大手企業の中には初任給を大幅に引き上げる動きもありますが、賃上げをめぐっては若年層と中年層の格差も見え始めています。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「世代間で差も 賃上げどうなる?」をテーマに解説します。

■最大の焦点は…中小企業への波及

猪子華・日本テレビ社会部記者
「22日から賃上げ交渉、いわゆる春闘が事実上スタートを切りました。基本給の底上げが広がる中、初任給を大幅に引き上げる企業もあり、40代や50代との世代間での格差も出てきています」

「22日、企業側である経団連と労働者側である連合のトップによる会談が行われました。最大の焦点は、賃上げの流れを定着させ、大手だけでなく中小企業にも波及させることです」

「中小企業の賃上げは大企業に比べて低い水準にあるため、適切に価格転嫁をすることで、賃上げを中小企業まで波及させることができるように取り組むことを確認しました」

鈴江奈々アナウンサー
「皆さん物価高が身に染みて生活している中で、物価高を上回る給料(の伸び)が皆さんに浸透することが本当に大事ですよね」

桐谷美玲キャスター
「日本の大部分は中小企業ですから、そこから賃上げになっていかないと、生活はなかなか楽にはならないですよね」

■全世代の平均を上回る初任給も

猪子記者
「大手企業では既に、来年度以降の新卒採用の初任給を大幅にアップする動きが出ています」

「ユニクロを展開するファーストリテイリングは、『世界水準で働く意欲のある人材の確保』のため、3月に入社する新卒社員の初任給を30万円から1割増額して33万円とします」

「明治安田生命では4月から、転勤の可能性がある採用枠の初任給を今の24万円から27万円に引き上げます。固定残業代を含めると、最大33万2000円になるといいます。若手の給与全体を見直しているので、1年目の社員の給与が2年目を超えることはないそうです」

「さらに、損害保険会社の東京海上日動は、来年4月入社の社員の初任給を、引っ越しを必要とするエリアに赴任する場合、今の28万円から最大で41万円へ大幅にアップさせるとしています。現在、労働組合と協議中で、近々決定する見通しだということです」

「厚生労働省によると、一昨年の一般労働者の全世代の月収の平均は約31万8000円だったため、それを上回る初任給です」

忽滑谷こころアナウンサー
「『本当に初任給?』と思うような思い切った額ですが、会社にとっても1年目(の社員)は宝ですし、人材を確保するためにはここまでの賃上げが必要ということなんですかね」

森圭介アナウンサー
「今は売り手市場とも言われています。転勤や、今住んでいるところから引っ越しをする、そういった仕事をちょっと敬遠する学生さんたちを呼ぶためにはこれくらい出さないと、ということなんでしょうね」

■「就職氷河期」の世代と比べる声

猪子記者
「ネット上では『氷河期世代は40代50代でも月30万円が見えてこない人もいる』『氷河期世代は恵まれなかったから来年度の新人さんご飯おごって』といった声も出ています」

「就職氷河期、つまりバブル崩壊後の景気悪化で新卒採用が減らされていた1990年代~2000年代に就職した世代と比べる声もありました」

「単純な比較はできませんが、厚労省によると2000年の大卒の初任給の平均は19万3700円だったため、こうした声にもつながっているのかもしれないですね」

鈴江アナウンサー
「まさに私たちも氷河期世代で2003年入社。就職活動も大変だったのを覚えています。時代が変わると初任給も随分変わりますね」

森アナウンサー
「私は2001年入社です。人口が全然違いますからね。我々世代は今の大学生の方の倍ぐらいの人数がいたので、(状況が)違うのは理解できます」

■20代はプラス、50代前半はマイナス

猪子記者
「賃上げの流れがあるとはいえ、全ての世代で同じように上がっているわけではないという現状もあります。大卒の人の賃金が前年に比べてどのくらい上がったのか、厚労省の統計で一昨年の数字を見てみます」

「20代前半では2.6%、20代後半では2.8%とそれぞれ上昇していますが、40代の前半では1.0%と微増でした。50代の前半ではマイナス0.3%と、下がってしまっています」

桐谷キャスター
「世代によって人数も違いますから、同じ割合で上げていくというわけにはいかないんですね」

猪子記者
「どうしてこんなに世代間格差が広がっているのか。三井住友信託銀行調査部の大和香織チーフエコノミストに聞きました。やはり人手不足や少子高齢化の中で、若い人を獲得するのが大変だということです」

「中年層はそこまで人手不足でもない中で、企業の中ではもともと賃金水準が高いゾーンなので、上げ幅はどうしても小さくなりやすいといいます」

森アナウンサー
「団塊ジュニアで人が(多く)いるから、ということですか…」

猪子記者
「また高齢者は、働いていない人や辞めていく人に継続して働いてもらいたいという中で、賃金が上がる傾向があるということです」

森アナウンサー
「60代後半は11.4%増です。これは今までは退職していた方に、もうちょっと働いてくださいということで賃金が上がっているんですね」

■若年層と中年層の給料、逆転は?

森アナウンサー
「若い方と中年層の給料が逆転してしまうというようなことは、さすがにないんですね?」

「逆転現象がすぐに起きるかというと、そこまでではないということです。ただ、給料が年齢とともにグンと上がっていく上がり方のカーブが緩やかになっていく、つまり若手と上の世代の差が大きく開かなくなる傾向は既に出てきているそうです」

森アナウンサー
「差が縮まってくるということですね」

鈴江アナウンサー
「いずれにしても私たちの給与を潤沢に払ってもらうためにも、業界全体が潤っていく施策も求められますよね」

猪子記者
「物価の高騰が止まらない中で、生活を守るためにも賃金上昇は必要です。日本の労働者の7割を占める中小企業で働く人たちの賃金をどう上げられるかが、日本全体の安心にもつながると感じました」

(2025年1月22日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

【みんなのギモン】

身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト

最終更新日:2025年1月23日 11:12