創業100年の老舗菓子店 伝統のお菓子に丸いたい焼きなど新たなチャレンジ 福岡・八女市
福岡県八女市に100周年を迎えた菓子の老舗があります。長年、筑後地方のお菓子文化を支えてきた菓子店の、次の100年に向けた新たな取り組みについて取材しました。
九州のお茶所、福岡県八女市にある菓子店「隆勝堂」です。1924年(大正13年)に創業し、去年11月に100周年を迎えました。
■中村安里アナウンサー
「イチゴのショートケーキやチョコレートケーキなど、生クリームをふんだんに使った商品がショーケースに並んでいます。」
昭和40年代、今ではケーキに欠かせない生クリームを八女市で初めて取り入れたのが「隆勝堂」です。
八女の人たちに新しい食文化を知ってほしいという思いから、当時、仕入れ自体が難しかった生クリームを取り寄せ、ショートケーキを作ったのが始まりでした。
八女市出身の中村アナウンサーが生まれて初めて食べたケーキも隆勝堂のケーキです。1歳の誕生日でした。
時代ごとの「新しさ」を大切にしてきた隆勝堂ですが、戦後からずっと変わらず愛されてきた商品があります。
■隆勝堂・鬼頭麦社長
「看板商品が『蹴洞(けほぎ)』になります。」
当時の日本では貴重だったバターをまんじゅうに練り込んだ『蹴洞』は、バターとピーナッツバターをたっぷり使ったサクサクの生地の中に、口どけのいい黄身あんが入っています。
■熊本から(70代)
「蹴洞まんじゅうはすごく有名で、小さいときから食べていました。私はもう熊本の人間ですけど、こっちに来たときに故郷を思い出します。」
地元の人に親しまれる菓子の老舗を受け継ぐのは鬼頭麦さん(41)です。千葉県出身で、大学卒業後は東京の証券会社で働いていましたが、前の社長の娘と結婚したことがきっかけで、約10年前に隆勝堂に就職し、おととし4代目社長に就任しました。
しかし、菓子店を取り巻く環境は、原材料の値上げや人口の減少など、厳しさを増しています。
■鬼頭社長
「どうしても筑後地区もそうですけど、田舎の方は人口が減っていってしまう。なかなか難しいことがある。地元に隆勝堂や代表の銘菓の『蹴洞』を残すためにどうするかっていう考えで私は活動している。」
地元で愛される菓子『蹴洞』と老舗を地元に残すため、おととし社長に就任して福岡市内に新しくオープンさせたのが、たい焼き店『鯛と餡』です。
手軽に味わってもらえるたい焼きをきっかけに、老舗の味を知ってもらおうというものです。
■鬼頭社長
「和菓子がすぐに買いに行きづらい商品になっているのかなと思いまして、あんこを楽しんでいただける場所を提供したいと思って作りました。」
味は、定番の小豆や八女抹茶など4種類です。自慢のあんこをたっぷり味わってもらうため、たい焼きの形も工夫しました。
■中村アナウンサー
「形が丸くて特徴的ですね。いただきます。生地は薄めでぱりぱりなんですけど、中にぎっしりとあんが入っています。八女抹茶の香りがふわっと広がって、ほっくほくのあんがおいしいです。」
形を丸くすることですみずみまであんを味わえるだけでなく、ひび割れなどにより販売できなくなる商品を減らし食品ロスを防いでいます。
また、ほかにはない形のたい焼きは”映える”とインスタなどで投稿されるなど、若い世代にも徐々に広まりつつあります。
八女から福岡、全国へ、老舗の若き社長の今後の目標を聞きました。
■鬼頭社長
「お土産屋さんとかにはチャレンジしてこなかったので、そういったところにチャレンジしていきたい。」
大正生まれの八女の老舗を受け継いだ社長の、次の100年に向けた挑戦は続きます。