シリーズ「こどものミライ」お風呂・歯磨き・連絡帳の記入も2人分!「双子の育児」喜びも悩みも共有したい 起業家の奮闘 福岡
7月2日、福岡市でスタートアップ企業の支援イベントが開かれました。プレゼンテーションに臨んだのは、社会課題の解決に取り組む10人の起業家です。ふるさと納税の仕組みを活用してスタートアップ企業を支援する、福岡市の新たなプロジェクトに公募で選ばれました。
■牛島智絵さん(39)
「多胎児とは双子、三つ子、四つ子のことをいいます。日本では毎年9000組が生まれていて、全出産の1%です。」
支援を受けることになった起業家の一人、牛島智絵さん(39)は、もうすぐ3歳になる双子の男の子を育てています。牛島さんが開発しようとしているのは「双子・三つ子の妊娠育児アプリ」です。妊娠週ごとの胎児の状況や母親の体の状況、体験談などを共有するアプリです。
■牛島さん
「(既存のアプリは)ほとんどが単胎育児に特化したもので、同時授乳や、1人でお風呂に2人を入れる方法など、多胎育児に必要なノウハウはほとんど載っていません。」
双子や三つ子は、妊娠糖尿病や早産など妊娠中からリスクが高いと言われています。開発中のアプリでは、多胎妊婦の注意点や、早産の赤ちゃんの成長に合わせた情報を提供することにしています。親同士が悩みを相談できる機能も備える予定です。
■牛島さん
「欲しい情報にたどり着くのがすごく難しいと経験して思っていました。自宅にいながら、通知として受けられたらと思って開発しています。」
牛島さんはSNSの活用をコンサルティングする事業を手がけています。帰宅後は、休む間もなく台所に立ちます。
■牛島さん
「ストップ。待って。下りてください。」
双子に注意を払いながら、手際よく食事を作ります。
■牛島さん
「いったん、子どものができた。」
並んで仲良く食べていましたが。
■牛島さん
「だーめ。だめ。取らない。」
おかずやお茶の取り合いが始まりました。嫌がる歯磨きも、保育園の連絡帳への記入も、2人分です。
■牛島さん
「動き回るようになった時に、自分の注意力を同じように双方に向けられないので。より危なそうな方をパッと確保して、もう片方に走って行く。」
牛島さんは1年前、多胎育児を支援する団体「tatamama(タタママ)」を立ち上げました。当事者同士で相談し合える交流会を開いたり、行政と組んでワークショップを企画したり。どんな支援が必要なのか話し合ってきました。双子や三つ子がいる家庭の「喜び」だけでなく、抱えきれない「つらさ」が、痛いほど分かるからです。
■牛島さん
「(生後)3か月くらいがピークだったと思います。自分一人で朝から晩まで見なきゃいけないとなった時に、2人がずっと泣きやまない。抱っこもしてる、揺れもした。全然眠れない。まいっていたんでしょうね。すべてに腹が立つ。朝、行ってきますという夫にも。泣いている子どもにも腹が立つ。」
過度な育児ストレスから双子から離れたいと思い、自分がいつニュースで報じられるようなことになってもおかしくないと感じていました。
多胎育児は1人の子どもを育てるのに比べ、虐待死の発生頻度が2.5倍から4倍との日本多胎支援協会の推計もあります。
「助けて」と言える相手や、すぐにつながる相談窓口の存在に救われる親がいるのではないか。そうした強い思いが牛島さんを突き動かしています。
7月9日、牛島さんの姿が福岡市・天神のホールにありました。20日に開催する「多胎シンポジウム」の準備を進めていました。双子や三つ子をみてくれる専用のシッターを配置するなど、当事者が安心して参加できる環境を整えています。
牛島さんが目指すのは、すべての出産のたった1%でもみんなで手を取りあって、声をあげ理解を広めていくことです。
■牛島さん
「今も同じ思いをしている人が1%、生まれ続けているところ。その人たちと今、何かできるんじゃないか。ここで何かを変えたい。」
牛島さんが代表を務める「tatamama」主催の「多胎シンポジウム」は、20日午後1時から福岡市・天神のFFGホールで開催されます。参加は無料です。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年7月18日午後5時すぎ放送