【解説】「広がる有機農業 白山市をモデルに」野口さんの目からウロコ
市川 栞 キャスター:
北國新聞論説委員の野口強さんとお伝えします。よろしくお願いします。きょうはどんな話題でしょうか。
まだまだ春は遠しという感じですが、3月になれば、そろそろ農業の準備も始まります。環境に優しい有機農業を先進的に進める国のモデル地区に、白山市の松任・鶴来地域が、石川県内で初めて選ばれました。持続可能な農業を進める中で、子どもたちの食育などに力を入れるそうです。
市川:
地域のクリーンなイメージにもつながりますよね。
野口さん:
白山市をきっかけに、県内でも積極的に取り組むところが増えそうですね。
野口さん:
そこで、きょうのテーマはこちら「広がる有機農業 白山市をモデルに」。
この有機農業でとれる農産物ですが、国の定義では、
▼化学肥料や農薬を原則使用しない
▼遺伝子組換え技術を利用しない
▼農作物をつくる際に環境への負荷を低くする… といった条件が求められます。
野口さん:
スーパーで、パッケージに有機農産物を示すJASの文字が入った緑のマークを見かけますが、市川さんは、買い物をするときに、有機農業とか減農薬で作られた野菜などを優先的に買うほうですか?
市川:
健康のためにできれば買いたいですが、高いイメージがありますね。いま野菜自体が高いので、値段を見て安いほうを買ってしまいます。
野口さん:
国では2050年までに耕地面積に占める有機栽培の農地の面積を、全体の25%(約100万ヘクタール)にする目標を掲げています。現状では、農薬を使わないので除草や害虫対策に手間がかかり、人件費などもかさむので、0.7%程度にとどまっています。
野口さん:
そこで環境負荷を下げる農業をするモデル地区を選んで、手厚い補助をすることで、有機農業のエリアを広げることにしました。
市川:
現在まで全国で53区域、北陸では白山市のほか、すでに富山市や富山県の南砺市、福井県の越前市も、この中に選ばれているんですね。
野口さん:
白山市では、国からの補助を活用し、市内の小中学校で新年度から給食に有機栽培でとれた米や野菜を提供する予定です。有機農業に取り組む農家を支援しながら、市民生活に有機農作物を浸透させていくということなんですね。ドローンなどの先端技術を導入して、環境に配慮したスマート農業を推進し、有機栽培の弱点でもある農作業の負担を軽くする取り組みに力を入れるそうです。
野口さん:
そこで1つ目の、目からウロコです。「広がる健康志向海外の販路開拓も」
有機農業を巡っては、栽培に手間は掛かるものの、環境や健康意識の高まりから人気は高く、農林水産省の調べでは、市場規模で言えば、2009年に1900億円だったものが、2030年には約2.5倍の3280億円が見込まれるそうです。
市川:
世代別で見ると、主に30代の人と60代以上の購入が多いんですね。
野口さん:
子供の成長を願う子育て世代と、熟年になって健康を気遣う世代に関心が高いことが分かります。
野口さん:
諸外国でも、欧米や中国で需要は伸びる傾向が顕著で、石川県内でも、加賀市の「かが有機農法研究会」が農薬を使わない特別栽培米を開発し、台湾や香港で実施された石川の特産フェアに出品され、好評を得て輸出にも希望が見えてきました。
野口さん:
そこで2つ目の、目からウロコです。「ジオパークに磨きトキも舞い降りる」
野口さん:
白山市の場合、忘れてはならないのは、モデル地区に選ばれた松任・鶴来地域は、白山手取川世界ジオパークのエリア内にある、石川を代表する穀倉地帯だということですね。
野口さん:
環境に優しい農業を追求することは、手取川の水の旅を軸にして、自然との共生をコンセプトにするジオパークの理念にも通じます。
市川:
むしろジオパークにこそ、有機農業はふさわしいと言えそうですね。
野口さん:
環境に優しい有機農業は、さまざまな動植物が生きやすい環境を作ります。来年にも、トキの放鳥をめざす能登の候補地では、トキが住みやすい環境にも注意を払いながら、地震からの農地や里山の復旧を本格化させます。
市川:
石川県ではさらにモデル地区を拡充して、減農薬のコメ作りなど、トキの生息環境を整える取り組みを行うエリアを増やすとしていますね。
野口さん:
まさに有機農業につながるエリアを広げる、有機農業を浸透させることは、白山手取川ジオパークに磨きを掛け、トキが舞い降りる能登の里山を実現する大きな力になります。県民としても注目度を高めていきたいですね。
市川:
ありがとうございました。野口さんの目からウロコでした。