賃上げ広がるも人件費上昇分を価格に反映できず…「よそにお願いするからいいよ」価格転嫁の現状は 大分
県が9月公表した賃金についての調査結果によると、大分県内企業548社に聞き取りをしたところ、賃上げを実施済みもしくは今後実施予定とした会社は77%に上りました。
賃上げの動きは広がっていますが、その一方、企業側にとっては人件費の上昇分を価格に反映できるかが大きな課題です。
中小企業の状況を取材しました。
◆板金加工会社の担当者
「ここ数年、材料、金属の(原材料費)がだいぶ上がってきて、それにプラスして世間一般も給料が上がる」
◆食品加工会社の社長
「野菜も扱うので野菜の原材料費もそうだし、人件費の高騰もあるし、さまざまなものが上がってきている」
9月、大分市で開かれた県内の中小企業向けのセミナーです。
テーマは「価格転嫁」。
人件費や原材料費などの上昇分を適切に価格に反映させるため、取引先との交渉術などを企業の担当者たちが学んでいました。
県が2024年5月から7月にかけて県内企業548社に調査した結果、価格転嫁を「実施できた」と回答した企業はおよそ65%だった一方、およそ19%は「実施できていない」と回答しました。
理由としては、「売上の減少や取り引き打ち切りへの不安」が最も多くなっています。
ただ、こうした苦しい状況の企業を支援する制度が設けられています。
玖珠町の運送業「魚返産業運輸」で行われていたのは価格転嫁についての取引先との交渉状況などのヒアリングです。
聞き取りをしたのは中小企業診断士で現状を踏まえたアドバイスも行いました。
こうした機会は国や県の取り組みとして、希望する中小企業には無料で提供されます。
大型トラックなどおよそ30台を保有し、九州を中心に自動車の部品や農産物などを運んでいるこちらの会社では26人のドライバーを抱えています。従業員の待遇改善や人材確保のため、2023年6月に賃上げを実施。
価格転嫁の交渉を取引先と続けていますが、仕事がなくなるリスクもあり、慎重になるといいます。
◆魚返産業運輸 魚返直寿社長
「(取り引き先には)シビアな業界もあるので、業界によっては、よそにお願いするからいいよという声もある」
魚返産業運輸では専門家のサポートを受けながら、提示する資料の作成などを行い、引き続き、取引先との交渉を続けていくということです。
経済の好循環を生み出すためにも、適切な値上げについて、私たち消費者も含め社会全体で理解を深める必要がありそうです。