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去年は試練続きの菅外交、今後の課題は…

2011年1月3日 21:41

 菅政権は去年、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件などの対応をはじめ、外交面で多くの課題を残した。今年は日本を取り巻く国際情勢がより複雑化することが予想される。菅政権の外交は真価を問われる年となる。

 就任直後の去年6月、菅首相は所信表明演説で「相手国に受動的に対応するだけでは外交は築かれない」と強調し、「能動的な外交」を標榜(ひょうぼう)した。しかし、実際には、去年9月の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件や去年11月のロシア・メドベージェフ大統領による北方領土訪問など、菅政権の外交は関係国に翻弄(ほんろう)され続け、対応は後手後手に追われた。

 また、北朝鮮が韓国の領土を砲撃したことで朝鮮半島の緊張は新たな段階に入ったと専門家は指摘している。アメリカ・戦略国際問題研究所の韓国部長で、ブッシュ政権時代にアメリカ政府代表として6か国協議に参加した経験のあるビクター・チャ氏は「北東アジアでの新しい冷戦が始まろうとしている。もともとの同盟国(日米韓)が一方にいて、その反対側に中国と北朝鮮がいる」と述べ、今後、朝鮮半島を舞台に深刻な対立が生じる可能性を指摘している。

 このような情勢を受けて、菅首相があらためて外交の最重要事項に掲げたのが「日米同盟の深化」で、今年春には菅首相がアメリカを訪問し、日米共同声明をまとめたい考え。しかし、日米関係のアキレス腱(けん)といえるアメリカ軍普天間基地(沖縄・宜野湾市)の移設問題で、沖縄・名護市辺野古への移設を明記した日米合意について、どのように地元・沖縄の理解を得るか、大きな課題が残されたままだ。

 日本外交がアメリカ頼みの様相をますます濃くする中で、国益につながる「能動的な外交」をどう展開するのか。菅首相自らがはっきりと国民に示すことが求められる。