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“異例”続き? 財政支出の総額39兆円「総合経済対策」決定の舞台裏 “幻の補正予算案”も…

2022年10月28日 20:36
“異例”続き? 財政支出の総額39兆円「総合経済対策」決定の舞台裏 “幻の補正予算案”も…

政府は28日夕方、電気代やガス料金の負担軽減策などを講じた「総合経済対策」を閣議決定した。財政支出の規模は、財政投融資をあわせた総額が約39兆円にのぼる。この決定に至るまでには2つの“異例”とも言える事態があったが、その舞台裏とは。

■異例(1)公明党代表が週2回も岸田首相と…

「公明党が強く要望してまいりました、物価高を要する電気代、ガス代、この負担の軽減策。ガス代も含めてきめ細かく配慮されたと思います」

政府・与党が28日朝に「総合経済対策」をとりまとめた後、公明党の山口代表は記者団に対して、誇らし気に語った。

「総合経済対策」の中で、物価高対策としては、電気やガス、ガソリン代などの高騰に対し、標準的な家庭で来年1月から9月までの総額で一世帯あたり4万5000円程度の負担軽減策を導入。“平均的な使用量の世帯”では電気料金は1か月あたり2000円から3000円程度、ガスは900円程度安くなる見通しだ。

山口代表は今月7日、国会の代表質問で、政府の経済対策に電気料金だけでなく、ガス料金についても負担軽減策を盛り込むように岸田首相に求めたが、首相周辺は当時、「公明党がどこまで本気で言ってるかわからないので、現状は突っぱねる」と話していた。

その翌週の11日、岸田首相と山口代表は月1回の定例ランチ会を行い、その場でも山口代表から岸田首相に対して「わかりやすい形で国民に方向を示していただきたい」と念を押した。公明党幹部は「岸田首相は山口代表の話を聞いて『ガス、電気の対策をやります』と言っていたそうだ」と話し、都市ガスも支援の対象になると自信を見せていた。

しかし、官邸内にはガス料金は電気料金と比べて価格の安定性が高いため「様子をみたい」という慎重論が漂っていた。その雰囲気を感じとった公明党は急きょ、同じ週の14日に再び山口代表が官邸を訪問。党首会談後に岸田首相は記者団に対し、電気料金だけでなく、都市ガスやガソリンについても負担軽減策を講じる考えを明らかにした。

今回の「総合経済対策」について、公明党関係者は「うちにとって満額解答だ。電気代対策に加えてガス代対策も入ったし、子育て支援として妊娠届と出生届の提出時に計10万円相当の支給も入った。高く評価している」と語った。

■異例(2)“幻の補正予算案”  数時間で4兆円増えたワケ

「今、政調全体会議中で、金額は決まってもないし聞いてない」

「総合経済対策」のとりまとめに向けて大詰めを迎えた26日午後、自民党の萩生田政調会長は会議の挨拶の中で、財務省に対して怒りをあらわにした。この直前、岸田首相は官邸で鈴木財務相と総合経済対策の総額について調整をしていて、萩生田会長に電話で確認をしてきたという。

財務省が示した当初案は補正予算の一般会計が23兆円だったが、自民党幹部から「けしからん」という声が出たことで、25兆円という案が浮上。自民党内では、30兆円を超えた去年の補正予算規模を念頭に、萩生田政調会長が「30兆円を超える規模が必要」、世耕参院幹事長が「30兆円が発射台だ」などと発言していただけに、25兆円という数字に自民党の会議が紛糾した。

首相周辺によると、岸田首相は与党からの声を踏まえて金額を引き上げようとしたが、その時点では財務省から慎重論があり、いったんは首相が引き取る形になった。その後、岸田首相が茂木幹事長や萩生田政調会長と電話で協議して、夜9時過ぎに鈴木財務相らに「29兆円を超えるように、もうひと頑張りできないか」と指示した。

財務省が最終的に示したのは、予備費を中心に4兆円増やした29.1兆円だった。

■与党に対し「聞く力」を発揮?  首相の胸の内は…

岸田首相は周辺に対して「財務省が持ってきた数字をそのままのむと、やらなければならない経済対策が全然できないし、周りにも納得してもらえなかった」と話した。

ある官邸幹部は「もっと金額を増やせという意見もあれば、多すぎるという意見もある」と話し、どういう数字に決めたとしても批判が出ることに諦めの雰囲気が漂っていた。

一方で、ある政府関係者は「今の岸田首相は、与党からの要望が国民にとってプラスだったらなんでもやる。支持率や国民世論をとても気にしていて、完全なポピュリズムだ」と懸念する。

“財政再建”を旗印に掲げていた岸田首相が、いわば“与党のいいなり”で増額したことに自民党の森山選対委員長は派閥の会合で、経済政策が失敗し、市場の混乱を招いたイギリスを念頭に「財政規律をしっかり考えて予算編成をしておかないと、外国を見ても教訓になるような国がある。そうならないことが大事ではないかと思う」と公然と苦言を呈した。

さらに、今回の調整をめぐっては、「総合経済対策」をとりまとめる直前に担当大臣だった山際氏がいわゆる統一教会の問題で辞任したこともあり、与党内からは「官邸と与党がこれまで以上に“ぎくしゃく”していて、官邸のコントロールが効いていない」と指摘する声もあがる。

「国民の皆様の手元にしっかり届け、生活を支えていることを実感していただくため、全力を尽くしたい」

「総合経済対策」のとりまとめにあたり、こう語った岸田首相が、リーダーシップを発揮し、対策をどう実行していくのか、引き続き難しいかじ取りが続く。